第1話

文字数 25,203文字

1 スワンナブーム国際空港 -タイ- (外・昼)   
 ジェット機が着陸。

2 スワンナブーム空港廊下(内・昼)   
 日本人KATAGI(刑事)が、荷物を持って、鉄道までの連結廊下を歩いている。   
 立ち止まるKATAGI。
KATAGI「鉄道で、スクンビット43まで、来てくれ・・・、  か・・・」   
 KATAGI、廊下内をきょろきょろ見回す。   
 英語の指示板がいくつか見える。
KATAGI「エリア・コードネーム、スクンビット-B・・・」

3 鉄道改札(内・昼)   
 KATAGI、改札に入る。

4 列車内(昼)   
 走る列車。    
 KATAGI、車窓の外をうつろに見ている。

5 スクンビット43周辺(内・昼)   
 「スクンビット」看板がある。   
 KATAGIが列車を降りる。

6 スクンビット43(外・昼)   
 青い空。   
 ステーションの側に庁舎が見える。   
 KATAGI、庁舎を見ている。   
 露店のサティ屋台に、串を売っている兄さんがいる。   
 KATAGI、串を買う。   
 串をかじりながら庁舎を見ているKATAGI。   
 KATAGIに近寄る影。   
 KATAGIの肩をポンとたたく手。   
 振り向くKATAGI。 串をかじりかけの顔。
手の主(ギャルソン)「Mr KATAGI?」
KATAGI「イエス!」   
 ギャルソン、バンコク市警の手帳をKATAGIに見せる。
KATAGI「ギャルソン・ジャーさん?」
ギャルソン「私がバンコク市警ギャルソン刑事だ。東京警視庁からのEメールに君の写真が添付されていた。ようこそ、タイへ」
KATAGI「私は、この街をよく知ってます」
ギャルソン「そうだったな、ミスター・ジョ・・・  ジョサブロウ(序三郎)・KATAGI」
KATAGI「そうです。この街には学生のころ2年住みました。そのころは、ジョンと呼ばれてました」
ギャルソン「ジョサブロウ・・・は難しい。私もジョンと呼んでいいかい?」
KATAGI「OKです」

7 住宅街・ギャルソンの家(外・昼)   
 ギャルソンの車がつく。   
 車からKATAGIとギャルソンが降りる。   
 ギャルソンはKATAGIを家へ招く。
ギャルソン「ジョン、はいってくれ」

8 ギャルソンの家(内・昼)
ギャルソン「コーヒーを作るから、テーブルに着いて雑誌でも見ててくれ」
KATAGI「どうも」
 KATAGI、テーブルに着く。テーブルの上に写真のアルバムが置いてある。
KATAGI「これ、見てていいですか?」
ギャルソン「ああ、アルバムか。いいよ。昨日は思い出にひたってたんだ。そんな歳さ」   
 KATAGI、アルバムを開く。

9 写真1   オリンピック射撃種目の金メダルを受賞するギャルソン。

10 写真2   市長から表彰を受ける、警官制服のギャルソン。

11 ギャルソンの家(内・昼)   
 アルバムをさらにめくるKATAGI。    
 KATAGIの目にひとつの写真が留まる。

12 家族写真(昼)
 チャオプラヤ川公園のガーデン。 
 ギャルソン、その隣に20代後半ぐらいの女性。2人の間に、2歳ぐらいの男の子。

13 ギャルソン邸(内)    
 その写真を見ているKATAGIにコーヒーを出すギャルソン。
ギャルソン「私にも、幸せな家庭を夢見ていた頃があったんだよ。」
KATAGI「この人は、あなたのワイフですか?」
ギャルソン「実は数年前に、子供と出て行った。何年か会ってないよ」
KATAGI「失礼しました」
ギャルソン「いいんだよ。気にしないでくれ。  仕事がひどく忙しかったんだよ・・・で、愛情  を表現するのが下手だった私が悪かった。  君、ワイフは? ジョン」
KATAGI「独身です」
ギャルソン「東京警視庁から来た君の履歴を見た。アマチュア・ボクシングでは、かなりの成績らしいな。そのうち、ムエタイをやってみるか? 君もてるだろう?」   
 KATAGI、苦笑いをする。
KATAGI「実は俺、性格に問題があるんです。  長い間、自分でも気がつかなかったんです。
が、どうもマザコンらしいんです・・・」
ギャルソン「ハハハハハ!!」(大笑い)   
KATAGIもギャルソンの大笑いにつられて、笑う。
ギャルソン「ジョン、君が好きになったぞ。じゃあ、 君は天才かもしれん。
マザコンの天才は多い。ジョン・レノンもマザコンだった。」

14 バンコク市内(外、昼)    
 雑踏。

15 ギャルソンが運転する車の中(昼)    
 助手席のKATAGIがギャルソンに話かける。
 バンコクベイエリアが窓から見えている。
KATAGI「で、いったい、何で俺がよばれたんです?」   
(しばらくためを聞かせて)ギャルソン「理由は二つだ。ジョン。君が以前、この国に留学していたこと。腹を割った意思の疎通ができる。そして・・・」   
 ギャルソンは懐のポケットから写真をとりだし、それをKATAGIに見せる。
ギャルソン「君ならこれが何を意味するか、私に教えてくれるんじゃないかと思ってね」
 KATAGI、写真を覗き込む。
ギャルソン「最初、チャイニーズかと思って、そっち系の刑事に尋ねたんだが、どうもそうじゃないらしい」

16 殺人現場写真   
 現場の様子。死体。壁に朱で漢字が・・・。

17 ギャルソンの車の中   
 写真を見ているKATAGI。   
(しばらくして、)KATAGI「ああ、これはチャイニーズじゃない。 『天誅』『悪人正機』。
   ・・・日本語(ジャパニーズ)だ。」
ギャルソン「(KATAGIの方を振り向き、)で、どんな意味なんだ?」
KATAGI(写真を見つめたまま、)「関連性はない2つの言葉だ。 『天誅』は、罰を下す。
 『悪人正機』は・・・。 しかし変だ。なんでこんなのがBANGKOKに??」
ギャルソン「どういうことだ?」
KATAGI「1192AD、日本に武家政権KAMAKURA幕府が誕生した。だが、時は末法の時代へ。その頃現れた、景教の影響を受けたと見られる日本仏教教派、浄土真宗・親鸞の言葉だ、これは。」
ギャルソン「その意味は?」
KATAGI「悪人こそ救われる」   
ギャルソン、沈黙。
KATAGI「正確には、こういうことのようです。すべてを見通す、小さな悪でも見逃さず、人の  人生全てを知っている仏陀の目からすれば、善人などという者は、1人もいない。全ての人間は悪人である。しかし仏陀は、そんな悪人でしかない全ての人間を絶対的に救い、至福の中に連れて行く、ということを約束している。親鸞は仏教をそう解釈した。 ・・・かつて日本でこれを間違ってとらえた人々が居た。悪を行うと救われる、と勘違いした人々が極悪をつくした。親鸞はそれを嘆いた・・・」
ギャルソン「(かぶりをふり)哲学は苦手なんだ・・。 だが、ときに犯人は独自の哲学を持ってることがある。一体なにが起こっているのか、俺に説明してくれ。BANGKOK市警につとめて30年、変態、ジャンキー、サイコパス、いろいろ 見てきたが、・・・今回ほど異常な事件はなかった。」

18 警察署内(デスクの一角・夜)   
 KATAGIとギャルソン以外に人はいないようだ。
 わきには、車輪移動装置付きのAIコンピューティングロボットがお茶を持ってきている。
ギャルソン「そいつは、署のメカニック、トーマス・シュタインが製作した運用型AIロボだ。ここのネット関連業務などの世話をしている。」
KATAGI「お茶ももってくるのですね」
ギャルソン「そんな時代だ、わたしには、構造はよくわからん」(笑)
 デスクの一角だけライトがついている。   
 ギャルソンはKATAGIに犯行現場の写真を見せながら、
ギャルソン「今、被害者は4人。  犯行現場はそれぞれ、まったく別の場所。 被害者らの職業も関連性ナシ。  同一犯の可能性は低い。 しかし、いつも付近に『悪人正機』『天誅』とメッセージを書き残す。 筆跡はそれぞれ違う」   
 KATAGI、4写真を見入る。

19 写真#1   フードを被った黒人、泡を吹き倒れている。

20 写真#2   スーツ白人。刀傷。自室に横たわっている。

21 写真#3   神父姿の男。不自然な体勢で横たわる。目は見開いている。

22 写真#4   アジア系の太った男。射殺体。

23 ギャルソンのデスク
ギャルソン「#1は毒殺。ドラッグ売人だ。  #2は政治家。刀で斬られた。   #3は神父。絞殺・・。 #4はチャイナタウンのごみ捨て場の射殺体。 すべて同一人物による犯行ではないだろう」
KATAGI「しかし、いつも同じメッセージ・・。」
ギャルソン「そうだ。グループ犯かもしれない。政治的意図があるのか・・・?」
KATAGI「天誅というのは日本のサムライ終焉期、シンセングミというグループが暗殺のとき用いた合言葉。  しかし悪人正機とは全く関連性はないはず。」
ギャルソン「その悪人正機という言葉について、もう一度話してくれないか?」
KATAGI「僕もハイスクール時代にちょっとかじった程度です。鎌倉時代の日本には末法思想というのが、はやっていた。もうすぐ世の終りが来る、それに向かって一生懸命生きなさい、という感じの思想です」
ギャルソン「ふむふむ。私の両親はピューリタンだ。私が聞いたハナシでも、初代教会では、イエスキリストの 昇天後、すぐに世界が終わり、キリストが雲に乗って再臨する、という考えがあったという」
KATAGI「そういった 末法思想時代、浄土真宗が誕生した。開祖は親鸞。キリスト教に似ていると言われる。彼は、中国に渡ったキリスト教ネストリウス派の影響を受けたともいわれてます 」 
ギャルソン「WOW」
KATAGI「親鸞が唱えたのが『悪人正機』、すなわち、悪人こそが、この世で救われるべき存在」
ギャルソン「悪人こそが救われるべき、か。 キリストも罪人を救うためにこの世に来たと言った」
KATAGI「今は、難しく考えるべきではありません・・・このタイプの殺人者は、宗教の教理の好きなところだけを取って曲解し、殺人を正当化する独善家だ。 私たちは、ただ、やつらを逮捕、 ・・・そして刑務所にぶち込めばいいんです」
ギャルソン「シンプルだが、見事なモチベーションだ。 私たちは弁護士ではない。コップはシンプルでいい」
 KATAGI、ギャルソンと互いの目を見合わせる。
ギャルソン「ジョン、君が来てくれて本当によかった。君の知識のおかげで、 とりあえず、いくらか関係がありそうな組織をしぼれる」
 テレるKATAGI。
KATAGI「僕はまだ何もしてないです」
ギャルソン「いやいや、これで犯人像にたどりつける道が見えてきた。君のおかげだ。」
KATAGI「そうですか、うれしいです」
ギャルソン「君の滞在が長くなりそうだから、アパートをさがしてある。今日はもう休んでくれ」   
 とつぜん、ガタガタ!! と物音。廊下の闇に響き渡る。
ギャルソンとKATAGI「なんだ!!」   
 KATAGI、銃を構える。  銃を構えたまま、廊下に出る。

24 警察署・廊下(夜)   
 銃を構えたKATAGI。   闇に人影。   ギャルソン、廊下のライトをつける。
 ライトに照らし出される後ろ姿の、私服の黒人。   
 黒人、後ろ姿のまま、手をあげる。
KATAGI「動くな!」
ギャルソン「・・・マイクか?」
KATAGI「マイク?」   
 手をあげたまま、振り返る黒人。
ギャルソン「やっぱり、マイクじゃないか」   
 マイクのそばに、たおれたゴミ箱。
(黒人)マイク「暗かったから、ゴミ箱に足をぶつけちまった」
ギャルソン「ジョン、銃を下ろしてくれ」   
 銃をおろすKATAGI。
ギャルソン「この男はマイク、同僚だ」
マイク「ジョン? はじめてだな。驚かせて悪かった」
ギャルソン「あの事件の捜査のために日本から来てもらった」
マイク「ああ、君が。」
KATAGI「はじめまして。ジョンです。ジョン・KATAGI。」   
 マイク、KATAGIの側に歩み寄る。
マイク「マイクだ。よろしく。君が東京から来るのは聞いていた」
ギャルソン「だが、マイク。 なんで今ごろ、ここに居るんだ? 今日は休暇だろ」
マイク「わすれものを取りにきたんだ。」
ギャルソン「そうか」
マイク「じゃあ、また勤務の時に会おう」   
 マイク、去る。

25 警察署内のジム(翌日・昼)
 リング、サンドバック、ヘッドギア、ワークアウト用の 器具等が完備されている。
 数人の署員がワークアウト、縄跳びなどをしている。
 そこへ、Tシャツとジャージ・パンツのKATAGIが入ってくる。
 居場所を確保し、ストレッチを始めるKATAGI。
 KATAGI、パンチングボールに向かう。
 KATAGI、軽やかにリズミカルにパンチングボールを打つ。
署員達「ほう! いいうごきだ」
  サンドバッグに向かうKATAGI。リズミカルにパンチのコンビネーションをサンドバックに叩き込む。
 その動きに見とれる署員達。
署員A「あのジャパニーズ、凄い動きしやがる」
署員B「ありゃ、素人じゃねえ」
 マイクも観ている。
 マイク、腕組みしながらKATAGIを見つめる。
 KATAGI、サンドバックの前でステップを踏み変えながら、 強いパンチを叩き込む。
 マイク、Yシャツを緩めながら、KATAGIに近づいていく。
マイク「よおジョン。まるでセサ-ル・チャべスみたいだな」
 KATAGI、動きを止め、肩で息をする。
KATAGI「俺の理想のスタイルはメキシカンボクサーさ」
マイク「日本ではいい成績残したらしいじゃないか?  ギャルソンから聞いている」
KATAGI「プロに誘われたことはある。アンタ、たしかマイクさん、でしたっけ?」
 マイク、グラブをはめながら、
マイク「俺もアマチュアじゃあ、ちったあ鳴らした。リングへあがりな。LET'S PLAY.」
 ざわつく署員達。
署員A「おいマイク、そいつとお前じゃ体格差がある。」
(KATAGIを振り向き、) マイク「怖いならやめてもいいぜ、キッド?」
KATAGI(クラブを着けはじめ、)「後悔するぜマイク。」
署員達「ヒュー!」
マイク「明日は出勤できないぜ、こい!」
 リングで向かい会う二人。
 ステップを踏みながらサークリングするKATAGI。
 あきらかに体格差がある。
 KATAGI、距離を置くも、マイクが長いジャブを伸ばす。
 KATAGI、舌打ちし、距離を詰めて、ジャブ出す。マイクの顔を弾く。
署員達「おお!」
マイク「くそ!」   
 KATAGI、ステップインとアウトを繰り返しながらマイクの顔にジャブを当て続ける。
マイク「くそっ!くそっ!」   
署員B「ジョン・KATAGIだっけ、あいつ凄えぜ! マイクだって署のボクシング大会じゃいつも 優勝してるっていうのによ」
署員C「ジョンの動き、まるでブルースリーだ!」
マイク「くそ!生意気な動きしやがって!」
 マイク、KATAGIに身体を覆いかぶす。手が出ないKATAGI。
 マイクそこからボディをドンドン打つ。
署員達「あれはやべぇ!」
 そこにギャルソンが入って くる。
ギャルソン「やけにさわがしいな、 ん、・・・あれはジョンとマイク・・・!」
署員C「本番真っ最中だぜ」
署員B「なぜか知らんが、マイクのやつ、ジョンに 絡み始めてさ」
ギャルソン「?」   
 マイク、KATAGIをつかみながら、ボディ、 顔面へとパンチを打ち続ける。
マイク「言っただろう! 明日は出勤できない ってな!」
 KATAGI、一気にマイクを振りほどく。
マイク「・・! この野郎! おとなしくしないか!」   
 マイク、もう一度KATAGIに覆いかぶさる。そのTシャツを掴む。   
 KATAGI、もの凄いスピードで身体をひねる。
マイク「うわっ!」   
 吹っ飛ばされるマイク。 その手にKATAGIのTシャツの切れ端。
 Tシャツが破れ、上半身剥き出しのKATAGI。 彫刻の様に鍛えられた後背筋。
署員C「見ろよ、あの背中。どうやって鍛えたら あんなになるんだ?」
 マイクを無表情で見下ろすKATAGI。
 マイク、立ち上がる。
マイク「まだ終わってないぞ、ジョン・KATAGI!」
 マイク、KATAGIに向かう。 構えるKATAGI。
 突然ゴングが鳴る。 KATAGIとマイクが振り向く。
 ゴングの前に立つギャルソン。
ギャルソン「いい加減しろ二人とも!」

26 ロッカールーム
 着替えているマイク。ギャルソンが側によってくる。
ギャルソン「どういうつもりだ? マイク。 あんな喧嘩まがいの事をやりやがって」
 マイク、無視して着替える。
(ロッカーを軽く叩き、)ギャルソン「おい!聞いているのか、マイク?!」
 マイク、さっさと通り過ぎていく。

27 ロッカールームの出口   
 マイク、震える右手を見つめる。
マイク「KATAGIの奴、あの身体のどっから、あんな力を・・・!」

28 チャオプラヤ公園麓(夕方)  
 メガネをかけたビジネスマンがうつむきながら、タバコを吸っている。
(しばらくして、) 声「ZANZE!」
 ビジネスマン、振り向く。
 フルフードの大男が近づいてくる。顔は影になって見えない・・。
大男「どうだ調子は?」
ビジネスマン(ZANZE)「まあまあ、ってとこかな。 そっちはどうだ、KONG」
大男(KONG)「裏町も全く暇だよ。 近頃のバーやクラブときたら、気取ったカップルどもばかり。実にお上品さ。トラブルを 起こす金玉野郎はいねえ」
ZANZE「例の衝動が、うずいているな」
KONG「お前こそ、ここ何日も眠ってねえ、って面だ。」
ZANZE「俺は今の人生に満足。 妻もいる、仕事も順調。」
KONG「ふふ、次のリストがきた」
ZANZE「見せてくれ」
 プリントアウトを受け取るZANZE。
KONG「だがな、2人のデカが俺らの事件の調査を開始した」
ZANZE「無駄だ。証拠なんてあるはずがない」
KONG「ところがどっこい日本から来たデカが、 悪人正機と天誅の意味を、バンコク警察のデカに教えた。 足がつくかも」
ZANZE「俺たちに辿りつけはしないさ」
KONG「まあ、念には念を入れないとな」
ZANZE「ところで、・・・ DAITOは?」
(いらついた表情をうかべながら、)KONG「あのガキ、あの人の処に毎日、入り浸ってやがる」 ZANZE「だれも、あの人の魅力に勝てないさ、  きみもそうなんだろう?」

29 ポリス・ステーション(室内・夜)   
 机にうつぶせになっていたKATAGIが、がばっと顔をあげ、目覚める。
KATAGI「ううああ!!」   
 KATAGIが居眠りする前に見ていた殺人事件資料の上に、よだれが垂れている。   
 となりのデスクで、パソコン作業しているギャルソン。
ギャルソン「ジョン、おめざめかい? ふふふ」
KATAGI「すみません。居眠りしてました・・・、  悪い夢で目が覚めました・・・」

30 ポリス・ステーション(外観・夜)   
 ポリス・ステーションの上の空に流れ星が流れる。
ギャルソン(声のみ)「ジョン、君はつかれてるよ。 バンコクベイエリアに来てすぐ、殺人事件のはなしだ・・・、 ムリもない。今夜はもう、かえりなさい」
ジョン・KATAGI(声のみ)「そうします・・・」
ギャルソン(声のみ)「落ち込むな、ジョン。あたりまえの事なんだ。ジェット・ラグを治す時間さえ、 与えなかった。ふつうなら、もう倒れてるよ。 今夜はよく寝ろ」
KATAGI(声のみ)「あしたには回復します・・・ さよなら」
ギャルソン(声のみ)「おやすみ」   
 ステーション前で、猫がゴミ箱をあさっている。 ステーションの建物から出てくるタカギ。

31 インド料理店(外観・夜)   
 KATAGI、店の前で立ち止まる。
KATAGI「食ってくか」   
 店に入るKATAGI。

32 インド料理店(室内・夜)   
 店主が振り向く。KATAGIがテーブルに座る。   
(テーブルの上のスタンド・メニューを、ちらと見て、)KATAGI「チキンカレーとナンお願い」
店主「かしこまりました」   
 テーブルに座りながら壁を見回すKATAGI。 壁にはインド古代宗教の神々、 そして仏陀の座像図やマンダラが 貼られている。
KATAGI「おお・・・・」
店主(料理しながら)「めずらしいか?」
KATAGI「そうですね・・・、警官になる前にアートの勉強してたんです。そっちには才能なかったんですけど。 だけど、クリエイティブな絵だなあ」
 店主、カレーを持ってくる。
店主「はいよ」   
 KATAGI、食べる。

33 チャオプラヤ麓のストリート(夜)   
 KATAGI、1人で帰路を急ぐ。 あたりは人の気配がない。   
 KATAGI、何度かくしゃみ。
KATAGI「疲れか、ちょっと風邪ひいた」   
 KATAGIの頭に、赤いレーザー光が照準を捉える。  KATAGI、気づかない。   
 KATAGI、くしゃみする。
KATAGI「ハアクシュ!!」   
 大きいくしゃみで、思い切り前かがみになるKATAGI。
銃声「ドキュー!」   
 前かがみになったKATAGIを越えて、KATAGIの後ろにあった電柱に弾が当たる。火花ちる。         
 KATAGI、後ろの電柱に振り向き、もう一度、前を見る。 KATAGIの額にまた赤レーザー光が。     
 KATAGI、とっさに側の道ばたに駐車してあった車の陰に身をかくす。

34 車のかげ(外・夜)
銃声「ドキュー!」   
 弾が、車にあたり火花が!  車のかげで、うろたえるKATAGI。
KATAGI「くそっ!! だれだ!!」
 KATAGIが車の陰から出ようとすると、
銃声「ドキュー」   
 あわてて、車のかげにもどるKATAGI。  いきおいでKATAGI、転ぶ。
KATAGI「いってー」   
 闇の中で、コートから銃を出すKATAGI。  
 銃で何発か発砲し、応戦するKATAGI。  暗闇に銃声が響き渡る。   
 車の陰に隠れながら、銃声のする方を、うかがうKATAGI。  
 その肩に、誰かがポンと手を置く。 びくっとして振り返るKATAGI。  
 肩をたたいたのはギャルソン。
ギャルソン「やばい状況だな」
KATAGI「やばいんです、まじで。」
ギャルソン「角で銃声を聞いて、来たぜ。 ジョン、君は命拾いをしたぞ!」
KATAGI「は?」
ギャルソン「私が来たからさ」
(さらに)銃声「ドキュー」
KATAGIとギャルソンの側で火花!
KATAGI「つきあってられません。やばすぎです」   
 KATAGI、さらに銃声の方向に何発か打つ。   
 相手はさらに撃ってくる。火花散る。
ギャルソン「君の銃の腕前は、はっきり言って最悪」 (ギャルソン、そう言いながらコートから自分の銃を出す。)   
 ギャルソン、一瞬、車のかげから身を外へ出すと、一発打つ。ドン!
とおくのしげみで叫び声 「アアア!!!」   
 あぜんとするKATAGI。
KATAGI「そうでしたね、あなたはオリンピック射撃代表だった・・・!」
ギャルソン「・・・だが、やはり、腕が落ちた。  やつを逃がした。弾は、やつのどこかに当たったが・・・」

35 ストリート(夜)   
 KATAGIとギャルソン、車の陰を出て、・・・  銃声がしていた、しげみに近づく。   
 しげみの辺りを見回すKATAGI。
KATAGI「ここに血が落ちてます」
ギャルソン「やはり逃げられたか」
KATAGI「ギャルソン、あんたを、すこし尊敬しました。  ただの中年じゃない」  

36 車の中(昼)
 助手席にKATAGI。ハンドルを握るギャルソン。
KATAGI「ベイエリアには、日本仏教のテンプルは見当たりませんでした」
ギャルソン「むう、・・・そうか」
KATAGI「だが、あやしいカルト集落が広域市内の人口密度が低いゾーンに存在しているのを、ネットで見つけました。B区555です。カルトヒッピーの現代版かもしれません。宗教の好きな箇所だけを取り込んでドラッグアディクト集落をつくっているような雰囲気です。自給自足の コミュニティです」
ギャルソン「ほう!」
KATAGI「日本経済のバブル期に、多くの日系企業が海外に入り込んでた。同時にジャパニーズ仏教イデアも入り込んだんですが、 バブル崩壊後、多くの日系企業が撤退、 実際は仏教といえない、へんてこなイデアを置き土産にした。これはそのひとつ。さっそくコミュニティに向かいましょう」

37 ビッグ・ブリッジ(外観・昼)
 KATAGIたちの車がブリッジを越え、コミュニティ・ZONEへ。

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38 小道(外)  
 林を抜け、KATAGIとギャルソンを乗せた車が坂を下っていく。

39 コミュニティー・ゾーン(入口・昼)   
 大看板。   ( アルファベット: BODISAVA-COM )   
 2人、車から出る。   
 中年女性が2人に近づく。
女性「なにか御用?」
ギャルソン「ええ、ちょっと」
 中年女性の案内を受けコミュニティーの紹介を受けるKATAGIとギャルソン。

40 コミュニティのフィールド(外・昼)
 おもにKATAGIが女性と会話し、ギャルソンはあとに続く。
 海水パンツ1枚のみで、ランニングしている 男たちが居る・・・。
女性「このように当コミュニティーのメンバーは昼夜、 規則ただしい生活をおくっています。 毎朝5時に起床して 座禅から一日がスタートします」
海水パンツの男ら「おいちに、おいちに!」(ギャルソン、奇異の目で見ている)
女性「当コミュニティーは様々な依存症にかかった人々が立ち直るのを支援しているんですの」
(女性の方に振り向き)ギャルソン「コミュニティのメンバーリスト をわたしてほしい」
(驚いた顔で、) 女性「個人情報は一切、提供できません」
ギャルソン「ダイレクトに言うが、今、広域市で連続して起こっている 異常殺人事件にここのメンバーが関わっているかもしれないんです」
女性「まあ、そんなことは一切ございません!」

41 コミューン・ハウス(内部)
 KATAGIとギャルソンが絨毯に座っている。
 さっきの中年女性が茶をもってくる。はなしを切り出すギャルソン。
ギャルソン「これが殺人事件が起きた日時。 鑑定から割り出した。ここのコミュニティー・ メンバーのアリバイをはっきりさせる必要がある」
 中年女性は、ギャルソンの渡した資料を持って、ROOMを出る。
 座っているKATAGIとギャルソン、顔を見合わせ、
KATAGI「どうですかね? 彼女キチンとメンバーの アリバイを調べてくれていますかね?」
ギャルソン「はっきりとはいえないが、彼女はこの件には関係ないだろう。ただコミュニティ にたいしてよっぽど執着しているらしく、 おいそれとはメンバーの情報はわたしてくれ そうもないな。かといって令状が取れるほどの 物証もないし・・・」
 なにかに気がついたようにギャルソンが振り向く、それにつられてKATAGIも振り向く。
 近くのドアの隙間から髪を振りみだした 若い女性がのぞいている。
KATAGI「誰だ?!」
若い女性「みんな死んで救われる・・・、BODISAVAが 救ってくれる」
KATAGI「何を言ってるんだ!? 待て!」
 ケラケラと笑いながら女性は走り去る。
KATAGI「いったいなんだありゃ?!」
 正面ドアが開き中年女性が戻る。
中年女性「お待たせしました。全メンバー大まかなスケジュールをチェックしてみました。問題は全くありませんでした。 ただ、・・・」
ギャルソン「ただ?」
中年女性「一人の方がここ2週間ほど、この施設の部屋にもどってないんです」
ギャルソン「何」
(自分の言ったことを打ち消すように、)中年女性「凄く良い方で、絶対こんな事件には関わっていません!」
ギャルソン「われわれはいかなる情報も知る必要がある。 いいですか、これは連続殺人事件なんです。ほうっておくと又あらたな犠牲者が増える可能性がある。」
(しばらく悩んだようすで、)中年女性「分かりました・・。彼は、このコミューンから 職場に通勤していたんです。彼の職場を当たってみてはどうでしょう。」
ギャルソン「コップンカー」
KATAGI「あの、さっき髪を振り乱した若い女性を見たんですけど」
中年女性「ローラさんね。彼女ちょっと精神面に問題があって・・・ でもここに来て良くなってきたのよ。ここではメディケイションもおこなっていますし。 ただあの件以来、おかしなことを口走るようになって」
KATAGI「あの件?」
( はっと我に返ったように、)中年女性「用が済んだらお引取り下さい。我々忙しいですから」
 KATAGI、中年女性を睨む。
ギャルソン「もういい。今日のところは引き上げだ」
 しばらく思い悩んだ様子で、KATAGI、たたずむ。
KATAGI「そうか、彼女、メディケイションを受けているのか・・」
ギャルソン「おい、行くぞ」
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42 オフィス(ハイパーBK社カンパニーBLDG.)
 ギャルソンが社内の責任者に質問している。となりにKATAGI。
男「困ったな。イアン君の住所を教えてくれなんて。 彼は、ここにはもう通ってないんだ。 彼なにやったの?」
ギャルソン「ここのところ、市内で連続して 起こっている殺人事件について、なにか情報を提供してもらえるかとおもいましてね」
男「やだー! 彼が犯人だったの?  全然そんな風には見えないのに。 すっごいまじめで、おとなしくて 、・・・ふふ、いい男よー」
 男、KATAGIに流し目を送る。 焦り、向こうを向くKATAGI。

43 B区の安アパートの外(昼)
 キーっと云う音と共に、急いで来た車が止まる。
ギャルソンの声「ここにイアンの持ち部屋があるのか。あの男、ジョン君のことを、気に入って、けっこう喋ってくれた」
 パーキングに車を止めて、 KATAGIとギャルソンが出る。
KATAGI「しかし、まいったな、僕とデートしたいなんていうから。僕はストレートなんですよ」
ギャルソン「ふむ」
 KATAGIとギャルソンが、 イアンの帰りを待っている。
 KATAGI、コーヒー片手に。
 ギャルソン、タバコをふかし続ける。

 強い風が吹き続ける。
(いらついたように、)KATAGI「もうこないですよ!」
ギャルソン「まあ待て。イアンがここに帰ってこないとしたら、 どこにいくんだ。辛抱が大切だ」 KATAGI「俺はじっとしてたら頭が狂いそうになってくる」
ギャルソン「どうしたんだ。落ち着け」
 しばらく沈黙が続く。

KATAGI「あの娘見ましたよね」
ギャルソン「え?」
KATAGI「コミュミティで俺達に話しかけた子、あの娘、変なことを口走っていたけど。 俺には、あの目に見覚えがあるんです」
ギャルソン「・・・」
KATAGI「俺のガールフレンドも精神に問題があってメディケイションを受けていた。 いつも世界が狂っているなんて口走っていた。俺は彼女を救ってやれなかった」
ギャルソン「・・・」
KATAGI「この世界は狂ってる、そう感じるときがあるんです」
ギャルソン「例え、世界が狂っていようとも、俺達は俺達のやるべきことやるだけだ。たしかに人間はみな罪の芽を宿している、だが、罪を耕しちゃ駄目だ。われわれは社会の番犬なんだ。」
KATAGI「ふん。あなたは日和見主義者だ。」
ギャルソン「君は、つかれているよ。今日はもう帰りなさい」   

 KATAGI、うつむき、去る。   

 しばし時がながれる。

 ふと、長身の白人がアパート玄関に手をかけている。
 ギャルソン、急いで近寄る。   
 長身の白人の男がまさに玄関ノブに手を掛け動かそうとする。
ギャルソン「イアンさん?」   
 振り向くイアン。
ギャルソン「ベイエリアポリスです。 ちょっとお尋ねしたい ことがあるのですが、お時間いただけないでしょうか?」   
イアン「警察の方が私になんの御用でしょう?」
ギャルソン「市内で起こっている事件に 関して、お聞かせ願いたいことがあるのですが。」   
イアン「・・警察の方の手助けになることは何も話せないと思うのですが。」
ギャルソン「私はBODISAVA COMMUNE、BODI.COMの紹介で、きたんです」   
 イアンの表情がわずかに変わる。
ギャルソン「これは正式な捜査ではありません。ただ、この件に 関してあなたから貴重な話が聞けるのではないかとおもいましてね」   
 イアン、しばらく黙り込み、
イアン「・・・おいしい酒を飲みたくありませんか?」
ギャルソン「は?」   
イアン「お互い疲れているようだ。私はいい場所を知ってるんです。刑事さん、どうです一杯?」      
 透き通るようなイアンの目。
ギャルソン「いいでしょう。」

44 チャイナ・タウン ネオン街(夜)   
 夜のネオンがキラキラ・・・。
イアン「どうです、刑事さん? この辺の雰囲気は?」
ギャルソン「若いころを思い出すよ。そうだな、20代の初めごろかな・・・、遠い記憶の彼方だ。  刑事になる前さ。あの頃は、オリンピック選手で大学も奨学金をくれた。パートの稼ぎは、この辺  での遊び代に消えたさ」
イアン「ふふふ、警官の過去ですね・・・」
ギャルソン「はじめは、警官になる気はなかった。  FBIが、オリンピックでの私を見て、引き  抜きに来たのさ。射撃種目の金メダリストになっちゃったんだよ・・・」
イアン「すごいですね。」
ギャルソン「私の射撃の才能は天分だった。 ほとんど努力せずに金メダル」
イアン「へえ」
ギャルソン「だが、女でしくじった。独身だった からな。あるFBIの作戦に参加してたんだが、 酒場で知り合った女に、FBI内部情報を漏らしちまった。その女、実はある麻薬密輸組織が差し向けた女スパイだった」
イアン「で?」
ギャルソン「作戦は大失敗。私はFBIからは追放。なんとか、今のセクションに再就職。
それからは、おれも頑張ったさ。天分に頼れるのは銃さばきだけ。犯罪捜査を基本から勉強しなおした。そして7年後には、市長から功労賞ももらった。だが・・・」
イアン「だが?」
ギャルソン「妻には去られる始末さ。仕事で 頭がいっぱいだった」
イアン「じゃ、いまは・・・」
ギャルソン「1人ぐらし」   
 話しながら、2人は夜道を歩いていく。

45 ボディサバ・カフェ(外観・夜)   
 BODISAVA CAFE「ボディサバ・カフェ」の看板。
イアン「ここです」
ギャルソン「BODISAVA・・・、また、 ボディサバか・・・」
イアン「ボディサバは、古代インドでの人間を越えた超越的存在です、中に入りましょう。しゃれたバーですよ」

46 ボディサバ・カフェ(室内・夜)   
 カフェ内には、インド風のアートがたくさんある。2人がカフェ内へ入ってくる。
イアン「あれですよ。あれがボディサバ!」   
 壁にかかった大きな絵を指すイアン。   
 絵には、雲に乗って空に浮かんでいる金色の肌の女性が描かれている。
ギャルソン「ファンタジー・・・か?」  
イアン「ふふふ」
女の声「あら! イアンじゃない!」   
 2人の方へ歩いてくる、セクシー・ドレス女。
イアン「マダム・ボディサバ・・・」
ギャルソン「マダム・ボディサバ?」
イアン「そうです。ここのオーナー経営者のマダム・ボディサバです」
ギャルソン「はじめまして」
マダム・ボディサバ「こちらこそ、はじめまして」
マダム・ボ(略称)「イアン、こちらの方、あなたのお友達?」
イアン「ちがいますよ。この人、実は刑事なんです」
マダム・ボ「えっ?」
イアン「この頃ベイエリアでヘンな殺人事件起きてるでしょ、時々NEWSで見ない、マダム?」 マダム「ああ、そういえば・・・」
イアン「で、この人、ぼくのことを疑ってるみたい」
ギャルソン「いや、ただ、聞きたいことがあるだけさ」
イアン「でさあ、話するなら、この店での方が楽しいじゃん? で、つれてきたんだあ」
マダム「ふうん。じゃ、奥の個室に入ったら? 」

47 個室
 ギャルソンとイアンが入ってくる。 ソファに2人座り込む。
ギャルソン「さっそくだけど。イアン、君はボディサバ・コミューンに所属してるね?」
イアン「ええ」
ギャルソン「ベイエリア連続異常殺人の件だが、犯人が特殊用語を犯行現場の壁に書き残して いることからコミューンを当た ってみた。」
イアン「そうですか」
ギャルソン「いろいろ調べさせてもらった。 君はコミューンにこのところ帰ってない。 その点が、われわれが、君に目を付けた理由だ。 なぜだ?」
イアン「コミューンに、私は合わ なかったんです」
ギャルソン「それだけか」
イアン「それだけです。ぼくは、そんなに疑わし いですか?」
ギャルソン「・・・・・。 実行犯は4人居ると我々は考えて いる。」   
 そこへ、マダム・ボが入ってくる。
マダム・ボ「2人とも元気してた?ハナシ弾んでる?ファーストドリンク、奢りにしとくわ!」   
 マダム・ボは、2人のソファの前のテーブルにレッド・ワインのグラスを3つ置く。
マダム・ボ「あたしも参加していい?」   
 マダム・ボ、ギャルソンの顔を意味ありげに見つめる。
ギャルソン「私は、イアンの事情聴取をしている。 イアンしだいだ。私はかれを犯人だと思ってはいない。私はかまわん」
イアン「知ってる ことはなんでも言うよ。マダムもここに居ていいよ。ぼくは気にしないからさ」  
 ギャルソン、イアンの腕の時計をみて、
ギャルソン「君、腕時計が趣味かい?」
イアン「うん、分かる?」   
 イアンの腕に赤い腕時計。
ギャルソン「同じものを私も持ってる。 今日はしてこなかったがな。いい品だ」
 マダム・ボ、ギャルソンのとなりに腰をおろし、
マダム・ボ「時計のハナシなんか楽しくないわ!他のハナシしてギャルソン、あなたワイフは?」
 マダム・ボ、そう言いながらギャルソンの太ももに手を置く。
ギャルソン「ワイフには去られたんだ」
マダム・ボ「じゃ、さびしいでしょ・・・?」
イアン「なんか、今日は、あなたの事情聴取みたいです、ムッシュー・ギャルソン?」   
 マダム・ボは、ギャルソンの目をじっと見つめる。
マダム・ボ「あたしも、結婚はしてないわ」
イアン「マダム、ひょっとしてギャルソンさんのこと気に入った? 僕はじゃまだね。出て行くよ」     
 イアン、去る。
ギャルソン「お、おい」
マダム・ボ「いいじゃない、2人になれたんだし」
ギャルソン「むむむ・・・」
マダム・ボ「今夜、私のアパートで飲みなおさない?」
ギャルソン「・・・・」
マダム・ボ「家に帰っても、一人でしょ?」
ギャルソン「そーだな・・・、okだよ」

48 タクシー内(夜)   
 マダム・ボとギャルソンが後部座席に乗っている。

49 マダム・ボのアパート前(外・夜)   
 タクシー停車。   
 マダム・ボとギャルソンが降りる。
マダム・ボ「ここよ」
ギャルソン「今日はじめて会ったばかりの女性の家に あがっていいのかな・・・」
マダム・ボ「ふふ」
 アパートに入ってゆく2人。

50 アパート内(夜)   
 ライトがつき、2人が入る。   
 マダム・ボ、冷蔵庫を開け、ビールを出す。
マダム・ボ「ハイネケンでいい?」
ギャルソン、飲む。
マダム・ボ「シャワーあびるわ」
 ギャルソン、TVをつける。 アニメ放送。 しばし、見ているマグレガー。
音「ガチャ」(ドアの開く音)   
 振り返るギャルソン。   
 シャワー室から全裸で出てくるマダム・ボ。
 ギャルソンのそばに歩み寄る。  
マダム・ボ「私はボディサバ・・・、私はボディサバ! あなたを至福世界へつれていく・・・」   
 全裸のマダム・ボの肌が、金色に変化する。   
 そして、マダム・ボ、宙に浮く。
ギャルソン「えっ! なんだ? さっきのビールのせいか・・・?」   
 マダム・ボの背中から、無数の手が生えてくる。
ギャルソン「うつくしい・・・・」
マダム・ボ「うふふふふふ・・・・」   
 マダム・ボの無数の手の中に包まれるギャルソン。
 至福の表情。

51 警察署(内・朝)
 ギャルソン出勤。ニコニコ顔。
 署内廊下を歩いている。
 マイクとKATAGI(ジョン)が正面から歩いてくる。   
 マイクの足に包帯が巻いてある。
ギャルソン「おはよう、マイク、ジョン」  
 しばし、マイクの足を見るギャルソン。
ギャルソン「マイク、どうしたんだ、その足?」
KATAGI「サーフィンで、ケガしたんだって」
ギャルソン「マイク・・・、気をつけてくれよ。  君は重要な戦力なんだから」   
 マイク苦笑い。
マイク「そうですね・・・」
ギャルソン「では、・・今日もがんばろう!!」 (マイクの肩をたたき去る)
KATAGIとマイク、ややぼーぜん。
KATAGI「ギャルソンさん、今朝は上機嫌ですね。新しいガールフレンドかな?」
マイク「ほんと、めずらしくニコニコ。 ヤクでも始めたのかな? なんてね」
 KATAGI、大声で、(ギャルソンに向かって、)
KATAGI「僕ら今、ウェイクアップ・コーヒーを 買いに行くとこなんです。ギャルソンさんは、 何か要ります?」
ギャルソン「じゃ、エスプレッソ!」   

52 警察署(外観)   
 タイムラプス(早送り効果)で一気に夕方になる。

53 スクンビット地区(夕)
 並木道を車で流すKATAGI。
 一人車を運転している。 非番と見え、私服の装い。
 何かを考えている風に窓ガラスから顔を出している。
 不意に何かに気づいたように、身を乗り出す。
KATAGI「なんだありゃ!?」
 その視線の先。 長髪で長身のアジア人青年が住宅の外で木刀を振っている。
 その顔は真剣そのもの。
 車を青年(TETSUO)の側につけるKATAGI。


 車を降りると、KATAGI、青年のそばに寄る。  
 青年、振り向きもせず、木刀を振り続ける。
KATAGI「君、日本人だろう?」  
 青年、木刀を振るのを止める。  

54 車の中  
 KATAGI、車を運転し、青年が助手席に座っている。  
 青年、シートベルトもせずに、コークをガブガブ飲んでいる。
KATAGI「シートベルトしろよ! 名前、なんだっけ?」
青年「TETSUO。ありふれた名前だよ。掃いてすてるほどいる。」
KATAGI「ははは! そりゃ正しい。」
TETSUO「ははは!」 屈託無く笑う。

55 KATAGIの短期滞在アパート(夜)  
 部屋にビールの缶が散らばる。  
よっぱらいながらKATAGI「俺もさ、留学してたころはお前みたいだったよ、一人で突っ張ってさ」
TETSUO「社会は本当にくそばっかりだ。」
 そのときTETSUOの携帯が鳴る。
 TETSUO、電話に出る。
TETSUO「ちょっと、ベランダではなす」(ベランダへ)
 しばらくしてベランダから帰ってくるTETSUO。
KATAGI「女か」
急に真剣な顔になり、TETSUO「・・・・・この人は本当に本当に大事な人なんだ。」
 それを無言で見つめるKATAGI、ビールをくぃっと飲み干す。

56 KATAGIのアパートの外(夜)
KATAGI「・・・・・今日はおもしろかったぜ。」
TETSUO「俺もだよ。アンタと俺は似ているところがある。また会えるよね。」

57 ボディサバのバー
 TETSUO、店内に入ってくる。
 バーカウンターで作業をしていたマダム・ボディサバは顔をぱっと輝かせる。
マダム「おそかったじゃない!!」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 TETSUO, 隠し部屋へ。
 ROOM OF THE FIVE KINGS 、と札が掛けられている。
 五人がそろう。
 BODISAVA 、 
 KONG(黒人の大男・・・ フルフードを取ると、マイク!)、
 ZANZE(ビジネスマン)、
 NDALI(メカ乗り。ブレーンでもある。レースもしているようだ。なんと、手元のスイッチを押すと、それまでの顔が消え、イアンの顔が・・・。ハイテクホログラムで変装していたのだ。)、
 DAITO(刀使い)・・・・TETSUOは、そう呼ばれるのだった。
NDALI「すわれよ、TETSUO、いや、DAITO。」
DAITO「ふん」
NDALI「くさってるな。まあ、そういう時もあるさ。」
DAITO「あんたはメカいじりにあけくれていいだろうさ。レースでうっぷんはらしてるしな。」
KONG「(NDALIを見て)NDALIは、一応おれらのブレーンさ。気取ってやがる。だが、ビョーキさ、コントロールフリークってやつさ」
 BODISAVA、はなしはじめる。
BODISAVA「なかよくしな。おまえらは、私の4人の使い魔だよ」

58 スクレイパーの陰
 路地。
 やや肥満気味の中年男が、煌びやかなビルから出て、歩いて帰路へ。
男「今日も仕事がんばった、がんばった~。」
 歩いて居ると、脇にフルフードのホームレスが・・・。
 ボロ椅子に座っている。手にはカップ。
ホームレス「・・だんな、だんな、小銭をめぐんでくだせえ」
 男、無視して歩き続けていく。
 ホームレスの男のアップ。フードをかぶっており、 顔が見えない。

59 パーキング車場(夜)
 真っ暗だが、ところどころ電気がついている。
 かすかな光に照らされている車。
 入り口から、さっきの中年男が口笛を吹きながら歩いてくる。
 自分の車の前に来、ドアを開ける。
 車内に入ろうとしながら、ふいと脇を見やる。
 あのホームレスがすぐそばに! 中年男、驚きの表情。
ホームレス「だんな、、だんな、、めぐんでくだせえ、、」
 驚きながらも、気を取り直し、男「・・・・・いくらだ・・・・・?」
 ホームレス、にやりと笑う・・・。
ホームレス「$2million ほどくだせぇ。」
男「な! ふざけるな!」
 男、無視、荒々しくホームレスの目の前で、ドアをしめる。

60 車内
男「とんでもない野郎だ。」
 とつ然、どでかい手が窓ガラスをぶち破る。

61 パーキングロット
 男、声をあげる間も無く、窓ガラスから引きずり出される。
 目の前にあのホームレス。
 中年男、地面を這う。
 ホームレス、たちあがると、見上げるような大男。
 ホームレス、フードを上げる。 マイク!(KONG)
 男、立ち上がろうとする。
 KONG、その襟首をむんずとつかみあげ、 自分の目の高さにまで持ってくる。
 男の足が宙に浮いている。
 そして、KONG、中年の男を投げる。
 男、十メートルほど吹っ飛ぶ。
男「ああッ!!」
 KONG、近づいてくる。
 KONG、男の身体を片手だけで、宙に持ち上げる。
 逆さになる男。
男「やめろ、、やめてくれ、、」
 KONG、そのまま地面に叩きつける。 男「ぐはっ!!」
 しばらくすると、男は動かなくなる。
 狂気の笑いを浮かべるKONG。
 血文字を男の側の地面に書く。 “天誅、悪人正気” 、書き終えて、立ち上がる。
KONG(マイク)「さて、一仕事終えた」 (去っていく)

62 コミューンエリア側のストリート(夜)   
 KATAGIとギャルソンが歩いている。
KATAGI「やはり、もう一度、あのコミューンを徹底的に調べるために、礼状を取りましょう」
ギャルソン「そうだな、あそこには表面に見えない何か魔物がいるな」
音(SOUND)「からん、からん、からん・・・・」 2人の後方、すぐ側で何か落ちてくる音。           
 ギャルソンが後ろを見る。
ギャルソン「やばいぞ」   
 後方に落ちてきたのは、手りゅう弾。 安全ピンが外れている。
ギャルソン「全速力で走れ!」   
 KATAGIとギャルソン、全速力で前へ!  
 後方で大爆発。 ふっとぶ路上駐車していた車2台。 地面にたおれる2人。   
 おきあがる2人。   
 銃声。(SOUND) そして、ギャルソンの目前に火花。
ギャルソン「やつだ。あのときの!  どこから撃ってる?」   
KATAGI、きょろきょろ見回す。
KATAGI「あそこだ」   
 ブリッジの端に人影。   
 ギャルソン、銃を構える。 ギャルソン、発砲。
悲鳴「あああ・・・!!」   
 人影がブリッジから落ちる。
ギャルソン「あの下は大渦。すぐには確認不可能だろう。しかし、これで実行犯4人の うち、1人は消えた・・・」   
 パトカーがサイレンをならし、来る。   
(警官、車を出て、) 警官「なにがあったんだ?」
ギャルソン「我々はコップだ。しっかり、質問には応じる。  だが、あしたにしてくれないか。今は、いろいろ整理出来ずにいる。まともなハナシができそうにない」   

63 警察署(エクステリア・朝)
ギャルソン「・・・だから、我々は2度の襲撃を受けたんだ。これは我われが、あの事件の捜査に関わって いるからだ。2度ともKATAGIを狙われた。 彼の存在を恐れている者の犯行だ」
質問者の声「では、ミスター・KATAGIを日本へ帰すべきだと・・・?」

64 警察署内質問室(インテリア)
ギャルソン「いや殺人事件の捜査には彼が必要だ。  彼もすじがね入りの男だ。途中で帰ることはしないタイプだ。  だが、この事件は、なにかやばい。私も自信が持てない。  もし、KATAGIから、何か要請があったら、可能な限り協力してやってくれ」   
 そこへ、別の警官が入ってくる。
警官「ギャルソン刑事! また異常殺人が!  やはり現場に天誅、悪人正機と・・・」  
ギャルソン「なんだって! おい、そうだ・・・、増員だ・・。 マイク、マイクを呼べ」 
警官「今日、マイクは無断欠勤をしてるんです」
ギャルソン「なんだと! まったく警官の仕事をなんだとおもってる!」

65 KATAGIの一時滞在用の部屋(室内・朝)   
 ベッドに寝ているKATAGI。 寝相が悪い。   
 ベッド脇の電話のベルが鳴る。 寝ぼけながら受話器を取る。
ギャルソンの声(電話を通し、)「ジョン、まずい。  まずすぎるぞ。まただ。また例の異常殺人だ。  犯人を捕まえないかぎり、終わらない」
KATAGI「すぐ、署に行きます」
ギャルソン「いや、今日は、外で会おう。  スクンビットのスターバックス・カフェで。 捜査の基本は聞き込みだ。それらをつなぎ合わせれば  結果が出るものだ。今日はとにかく、ちょっとでも手がかりが得られそうなら、どんな店でも、聞き込みを実行するんだ」   

66 カフェ@スクンビット  
ギャルソンとKATAGIが対面して席に着いている。
ギャルソン「この街は、君も知ってるように数々のオーバーシー・カルチャーが、重層構造のネットワークでリンクしてる・・・、そういう街だ。私は、こういった、異文化が リンクしている、この街が気に入っている。だが、そういったリンクを 犯罪の温床にしようとするやつらもいる」
KATAGI「あげなければなりませんね、・・・なんとしても」
ギャルソン「今日は、別行動をとり、くまなく聞き込みだ」
KATAGI「OKです」

67 カフェ(外・朝)
 2人、店を出、互いに手を振り、 別方向に分かれる。

68 チャイナタウンの正門(外・朝)   
 聞き込みリストのメモを見ているKATAGI。   
 膨大なリスト。
KATAGI「そうだ、警官の仕事は、こういう地道な捜査が大切なんだ・・・」   

69 KATAGIの聞き込み映像(朝から昼) (ここから、ロック・ミュージックのBGM)   
 KATAGI、様々な店などを聞き込む。(カットの連続)    
 中華料理店。インド物産店。 タイ・マッサージ店。すし屋。    
 ベトナム・スーパーマーケット。カラオケ・パブ。 パキスタン料理店。
 アジアン・カルチャーのブックストア。 ・・KATAGIは、聞き込みに集中している。   

70 マサラ・ショップ(昼)   
 一方ギャルソンはマサラ風タペストリー屋のインド系オヤジに何か質問している。   
 古代インド風装飾の内装、中にはボディサバのポスターも。   
 ギャルソンのセル・フォンが鳴る。   
 ギャルソン、セル・フォンに返事。
ギャルソン「はい。ギャルソン刑事だが」
マダム・ボディサバ(相手)「わたしよ・・・」
ギャルソン「今は、仕事中だ・・・、あとにして欲しい」
マダム・ボ「いいじゃない。この前の私を忘れられないんじゃない、ギャルソン?」  
 ギャルソン、店内にある想像上のボディサバの絵の美しい ポスターを見て、頭をかかえる。

71 マダム・ボのアパート前(昼過ぎ)
 ギャルソン、現る。
 ギャルソン「うう・・・、彼女のアパートに来ちまった。 おれはボディサバのとりこだ・・・、独身が 長いせいか、やきがまわったのか・・・?」   
 ギャルソンのセルフォンが、そのとき鳴る。
ギャルソン「SHIT!」
 セルフォンのスイッチをOFFにするギャルソン。

72 ストリート
 KATAGIのセルフォンが鳴る。出る。
KATAGI「なんだって!? マイクの死体がチャオプラヤ川で見つかった!? 
・・・ってことは、あの襲撃犯がマイク? マイクははじめから敵だったのか?
そして、いつだったか、私とギャルソンが遅くまで署で資料調査していた日、マイクが忘れ物を取りに来たなどと言って夜遅く署にいた日。  あのときマイクは、部屋から去ろうとして、後ろ向きだった。  あの状態は不自然だった。  あれは、私たち二人の様子を覗き見していて、  去っていくところだったんだ・・・。  それに気づかなかった・・・ フシアナのような目だ、俺の目は! (フラッシュバック『くらがりでバケツに引っ掛かるマイク』)
あのとき、手をあげたマイクが後ろ姿だったのは変だったんだ!  後ろ姿だったということは、デスクのある部屋の前から去っていく途中だったことを意味していた。そうだろう? 俺は馬鹿だ!
マイクは僕らを盗み聞きをしていたことになるじゃないか!」

73 マダム・ボの部屋   
 ドアをノックするギャルソン。   
 ドアが開く。   
 そこに、全裸のマダム・ボ。
マダム・ボ「あら、ギャルソン刑事、今日のあなたの赤い時計、イアンがこの前してたのと同じね・・・、どうでもいいけど・・・」   
 マダム・ボ、ドアを閉める。   
 マダムのキス。   
 再びマダム・ボの無数の手がギャルソンを抱く。   
 ギャルソン、うっとり。
マダム・ボ「ミスターギャルソン・・・、私の使い魔が1人、昨夜、居なくなってしまったわ。 あなたが代わりになって くれる・・・? うふふふ」
ギャルソン「私を君にささげるつもりさ・・・」  
マダム・ボ「もう、あなたは、私の思いのまま。 私の意のままに動く・・・」   

74 トリップ映像

75 マダム・ボのアパートの前   
 ギャルソンが出てくる。
ギャルソン「くそ、おれは、どうなっちまったんだ?!  こんなにセルフコントロールをなくすコトは今までなかったのに・・・うう・・・」
 フラッシュバック・・・変化したマダム・ボディサバ。
マダム・ボ(声)「もう、あなたは、私の思いのまま。 私の意のままに動く」

76 警察署(夜)   
 KATAGIが、机で、ぼーっとしている。 たちあがるKATAGI。
KATAGI「ギャルソンときたら、どこいったんだ?  しかたない、仮眠だ・・・」     
 署のソファで、毛布をかぶるKATAGI。

77 プールバー
 ビリアードの音がこだまする。
 ギャルソンとKATAGIが、8ボールをしながら話している。
KATAGI「ギャルソン、・・・BODISAVAについて知ってるか?」
(あわてて)ギャルソン「え、うん、まあ。あの界隈じゃ、聞くな・・。」

78 ボディサバのアパート前
 ギャルソンとKATAGI、張り込み中。
 2人は、駐車している車の中。(私服刑事用車両の中)
ギャルソン「あの窓、あの赤いカーテンの窓・・・。  あれが、ボディサバの部屋だ。しかし、やはり、ボディサバと名乗る女が重要参考人なのか、そうなのか」
KATAGI「聞き込みをした中から、わたしの空想かもしれませんが、事件像が浮かんできました。菩薩、つまりボディサバを自称するアジア系の女性、独善的な性格でバー系同業者から知られてました、・・・この女は、どうやら、なにかしらのドラッグと魔術に精通しているようですが、彼女が配下に置いて居るらしい4人の男をマインド コントロールして、殺人を執行させている・・・そういう事件かと。」
ギャルソン「(あわてて)な、なんだって・・・! そういう事件の構造だというのか」
KATAGI「あくまでも推理ですが」
ギャルソン「今日は動きはないよ、ひとまず、解散だ」

79 スクンビット路地(夜)   
(このシーンは、P.O.V. - 観客の視点が、犯人の視点)   
 赤い腕時計をつけた手が、銃を持ち、犠牲者を追いかける。   
 振り向きながら、あわてて逃げる犠牲者。   
 犯人の発砲。   
 ころぶ犠牲者。   
犠牲者「おい、たすけてくれよ、なぜ、おれを撃つ?  たしかに、おれは、役立たずのダイエット・マシーンで  もうけまくったさ。だが、なんだって、おまえが、  おれを撃つんだ?!」  

80 路地(夜)から岬へ   
(犯人の視点)   
 画面には、銃を犠牲者に向ける、赤い腕時計の手。
 岬。
  犠牲者(犯人に向かって)「エ・・?! 何だって?!  お前は、人間を救済する、ボディサバの遣いだっての?  おれみたいな悪党が、これ以上、悪さしないように、  あの世へ送るってか? それが、おれの魂の救済に なるってか? お前に、おれを裁く権利はないだろ、 お前の主人のボディサバって、いかれてるぜ」   
 犯人発砲。   
 犠牲者、あわてながら足をすべらせ、岬から水面に落ちる。  

81 黒画面
声A「し、市長! わざわざ、なんで、ここまで?」
市長の声「例の異常殺人の犠牲者が、また出たそうだ! 市長として、もう、見ていられない。  東京警視庁からのエキスパートも手伝ってるのに、  なぜ、犯人はつかまらない? どいつが、その東京の エキスパートだ?!」   

黒画面から、署内の画面に。   
(頭にかけていた毛布をとるKATAGI。)

82 ポリスステーション 署内(朝)
KATAGI「私です。本当に申し訳ありません、市長。  ですが、かなりの情報も仕入れました」   市長(KATAGIに歩み寄り、) 「言ってみたまえ」
タカギ「マリン・カウンティの方に、一見、日本仏教の教えを  よそおい、共同生活しているコミューンがあります。  聞き込みの結果、分かってきたのですが、そこには、もはや、  釈迦の哲学など存在していません。ドラッグを使い、乱交パーティーを開き、 人をだまし、薬づけにする集団でした! ドラッグのオーバーユーズから、自分の中に異なった人格を見出すようになる。 つまり、あそこにいると、統一感のある人間ではなくなり、 別人格のモンスター的な人格と ふつうの人格を行き来する人物になっていくんです。 異常者を作っている組織だ」
市長「どうしたらいい?」
KATAGI「あなたの全権を持って、作戦にOKを出して下さい」
市長「何だ」
KATAGI「今日、警官隊と、突入します」
 そのとき、署の電話が鳴る。
 部下Aが、電話を取る。
部下A「・・・ええ、はあ、そうですか、いま、ちょっと取り込み中で・・・」

83 
ギャルソンが出勤してくる。
赤い時計をつけている。
KATAGI、その時計に気付き、見る。
ギャルソン「なんだかさわがしいな」
KATAGI「いまから、突入します!」
ギャルソン「わかった」

84 悪のコミューン(外観・昼)
 フィールドに、大きな赤いテントがある。
 そこへ、パトカーが、サイレンをならしながら、 現れる。
 後について来る、重トラック。
 パトカーがコミューンの前で停車。
 KATAGIがパトカーから出てくる。 トランシーバーを口に近づけ、言う
KATAGI「このテントに、行方不明少女らが捕らわれている。では、進行開始!」
 警官隊が重トラックから出てくる。
 警官隊がテントの中に入る。 KATAGIは外に居る。
(トランシーバーを手に、)KATAGI「どうだ?」  
警官「居ました。20人居ます。みな、行方不明で捜索中の少女たちのようです。犯人は・・・、 見当たりません。とにかく、少女たちを解放します」   
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