第27話 side.亜希
文字数 333文字
私は保健室へ行くと嘘をついて、
学校を出た。
九時少し前の道は人が少なかった。
私は嗚咽をこぼしながら泣いていた。通りかかった人が、驚いたように私を見つめて、足早に去っていく。
ぽつっ、と、雨が降ってくる。雨はどんどん勢いを増して、傘も何も持っていない私に、容赦なく降りかかった。
惨めだった。
雨に打たれて、寒くて、一人で歩いている自分が、どうしようもなくかっこ悪くて、恥ずかしかった。
……あ……亜希ちゃん?
誰かの声が聞こえたけど、幻聴かと思って顔を上げなかった。
私なんかに声をかけるやつが、どこにいるっていうの?
亜希ちゃんってば!
腕を掴まれて、
仕方なく顔を上げたら。
そこには、惨めな私が振った、
あの男が立っていたんだ。