第3話(12)

エピソード文字数 1,473文字

「そこのグループさん。お時間よろしいですか?」

 皆でケーキ屋・フラワーランドに向かっていたら、『試飲会実施中』と書かれたタスキをかけてる中年男性に呼び止められた。
 ちなみに目指しているお店は、わたくしの誕生日ケーキを買ったお店。つまり、《おたんじょうびおめでとお》の正島堅斗くんがいるお店だ。

「現在我が社は、新作『ベロンチョサイダー』を開発中なのです。是非、若い皆様のご感想を伺いたいのですよ」
「べ、ベロと、サイダー……。まさか――いや、それはないか」

 その商品名はベロベロリン王国を彷彿させるのだが、ここはジャポン。ベロベロリン人が、日本国にいるはずがないわな。

「従兄くん、そのまさかよ。この方はベロベロリン王国にある、清涼飲料水会社の社長さんなの」
「爽水(そうすい)ツクルさんってゆー、とっても有名(ゆーめー)な人なんだよーっ。社長(しゃちょー)さんであり書道家(しょどーか)さんでもあり薬剤師さんでもあり、鑑定士(かんてーし)さんでもあり建築家さんでもあるんだってー」

 肩書、脅威の5個。多才にも程があるだろ。

「思った通り、異世界人か。どうしてここにいるんです?」
「ベロベロリン王国は観光客様が多く、幅広い方にウケる商品を作らないと売れないのです。そこでボクら会社の者は、様々な世界で試飲会をしているのですよ」

 へぇ~。ベロリン王国って、観光メインの国だったんだ。あの時、名所巡りをしたらよかったな。

「この新作は社運がかかっていまして、何としても大ヒットさせたいのです。お味見、して頂けますか?」
「ええ、構いませんよ。みんなもいいよね?」
「実は私は丁度、冷たい飲み物が欲しかったのよ。水分を補給して、体温を下げたかったから」

 うん、そうだよね。シズナは夏の暑さにやられて、気を失ったもんね♪

「ウチも、異論なしですわ。持ちつ持たれつですもの」
「あたしも、やりますー。サクちゃんもいーよねー?」
「……。わたくしめの意見が、役立つとは思えないのですが……」

 出ました卑下。一日一善ならぬ、一時間一卑下の発動でございます。

「にゅむむん、サクちゃんも参加するべきだよー。ちゃーんと役立つからっ」
「私達は、親友でしょ? 一人だけ参加しないのは悲しいわ」
「しっ、失礼致しましたっ。不肖黄村サク、飲ませて頂きます!」

 卑下子ちゃんは、やる気になった。ぅーん。扱いやすいのか扱いにくいのか、わからない子ですね。

「皆様、ありがとうございます。それではどうぞ」

 俺、シズナ、レミア、サクの順に炭酸入りの紙コップが渡され、


「わたくしめは最後で構いません! 麗平様どうぞ!」
「あ、ボクは適当にお渡ししただけですよ? 偉い順ではありませんから」


 そんなやり取りがあり、爽水さんは気を遣ってくださったんでしょうね。最後になった麗平さんには、350ミリのビンが手渡された。

「さあどうぞ。お召し上がりください」
「いただきますっス」「社長さん、頂きます」「にゅむー。いただきますー」「遠慮なく、頂戴しますわ」「今回は、最後になれましたね……っ。社長様、有難く飲ませて頂きます」

 全員そろって、ゴクゴクゴク。

『優星。そのサイダー、どうだ?』

 そうだねぇ。すっきりとしていて、ヨダレみたいに若干粘り気があるよ。
 大人な表現をすると、好きな人は好きでしょうな。

「ふふふふっ。飲み、ましたね」

 心の中で渋面を作っている、そんな時だ。爽水さんが、不意に含み笑った。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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