プロローグ
文字数 340文字
どぼん、と水中に放り込まれた感覚に近い。
感覚も、意識も沈んでいく。
父は行方不明。母は他界してかなりの年月が立っていた。彼女を知る者は少なく、世界の為と大義名分を理由に、少女は騙され永劫目覚めぬ封印を施されたのだ。
(これだから……人間は……嫌いなん……だ)
少女はかつて共に暮らしていた父と母の思い出を胸に眠り続けた。
(父様……母様……もう一度、一緒に……)
遠くで雷鳴が轟き、龍の咆哮が彼女の耳に入る。
「────よ、起きなさい。……母を探しに行きますよ」
それは懐かしい父の声だった。水底にいた少女の記憶が浮かび上がる──