1_ご近所トラブル
文字数 1,752文字
私は天乃川ナナ。
今年の春、進学私立校に通うため田舎から都会へ単身越してきた。
女子高生が一人暮らしなんて物騒?
大丈夫。
住んでるとこは行き遅れの……失敬、花嫁修業中の叔母が管理人を務めるアパートなのだ。
こっちで暮らしてる間、保護者代理もしてもらっている。
憧れていた都会での一人暮らし。
不満はあまりないのだが、どうしても一つ許せないことがある。
それはご近所トラブルについてだ。
またお隣さんの話?
日本に慣れてないんだから仕方ないでしょ。
多少の行き違いは広い心で許して上げなさい。
そんなことじゃいつまで経ってもペチャパイのままよ。
色々と訳ありなのよ。
引き継ぎ前の住人も変わった人だったし……。
……えーっと、思春期特有のアレかしら?
早く大人になりなさい。
アパートの203号室。
殺風景な部屋の中央に若い男女が並んで正座している。
彼らが見つめる先にはカップ焼きそばが湯気を立てて畳の上に鎮座していた。
未確認飛行物体の名を冠し、CMで宇宙人も食しているアレだ。
青年の横で正座していた女性がゆっくり立ち上がると、突如部屋が海のど真ん中へと変わった。
同時に女性も水着姿へと変わると、どこからともなく現れたボードに乗ってサーフィンを始めた。
隣の青年は正座したまま海の上に浮いている。
まるでVRのようなカオスな光景が広がっていた。
青年の右腕が機械仕掛けの装甲に覆われ、その掌がカップ焼きそばへと向けられる。
みるみるうちに容器の中の水分が失われていき、最終的にパサパサに乾燥した粉だけが残った。
突如カオス空間に乱入してきたナナのドロップキックが青年の後頭部に炸裂する。
ヒステリックに暴言を吐き捨て、海の上に出来た扉から飛び出していくナナ。