第4話(11)

エピソード文字数 3,131文字

《中継をご覧の皆様お待たせしTA! 本日最後の試合、準決勝第2試合の開け幕でーすYOっ!》

 俺とレミアとフュルは、大人の階段をのぼったと一方的に主張するシズナと一緒に砂浜にいる。
 あの人、ホントにしつこいんだ。もうアイツ、頭でも打って記憶喪失になってくれねーかな。

《準決勝第2試合は、因縁の対決となっておりまSU。なんと魔王使いチームの相手は、個人戦の魔王部門、勇者部門、魔法使い部門、狩人部門、ビーストテイマー部門の準優勝者が組んだムーチDA!》

 俺の視線の先にいるのは、真っ黒いマントが不気味な偉丈夫、金色の鎧を纏い月桂樹の冠を被った美少年、トンガリ帽子とローブ姿の老婆。そしてTHE狩人な緑の服に胸当てを装備した美少女と、毛皮に身を包みライオンのような獣を従えた少女さん。
 もし見た目で勝負したなら、全次元NO1の人達が並んでいる。

「ふ。魔王レミア、久方ぶりだな」

 相手チームの魔王が指をバキッと鳴らし、鋭利な歯を覗かせた。
 さ、さすがは魔の王だ。得も言われぬ迫力がある。

「俺様達は第二位、等しくお前らに敗れた者だ。しかし此度は、そうはいかんぞ」
「僕らは決死の修業を行い、新たな、しかも凄まじい力を手に入れました」
「お嬢ちゃんら。儂らは、以前の儂らとは違うのじゃよ」
「もう、貴方たちには負けません!」
「ふんっ。覚悟しなさいよね!」

 ナンバー2チームの面々は激しく戦意を燃やしており、息もピッタリ。それに隠し玉があるとのことだから、楽勝とはいきそうにないな。

「ゆーせー君、相手はあたしたちをご指名(しめー)してるっ。ごめんなさいだけど、今回はあたしたちにやらせてくださいっ」

 レミアがコソッと俺の背中に、『き』の字を描く。
 このサインの意味は、『危険な相手かもしれない。念のため下がって』。もしかすると、俺の見られ方を変える――なんて、言ってられないかもな……。

(レミア先生シズナ先生、まずはワシが全体攻撃をしてみるき。それで、どのくらいパワーアップしちゅうか確かめようや)
(そうね、そうしましょう。フュルさんお願い)

 さっきまで太腿太腿と連呼してた変人も、真顔で言葉を交わす。
 ちぃっ。準優勝者が桁外れに強くなってるのは、計算外だったな……。

《それでは、いきましょU。準決勝、ターストDA!!
「先制攻撃ぜよっ! 『赤(あか)の暴挙(ぼうきょ)』!」

 誰よりも早くフュルが動き、魔法が発動。大気圏をも穿ちそうな火柱が、敵チームを包んだ。

「にゅむ。これで、どのくらいダメージを与えられるかだねっ」
「このクラスの魔法だと…………今迄は、十秒でノックアウトになっていたわ。同じ時間で止めて、違いを確認してみましょう」
「そうやね。それがいいにゃぁ」

 かなり距離があるのにチリチリと身を焦がす炎が10秒間暴れ、ゆっくりと火が弱まっていく。
 これまでは、ここでKOだった。今回はどうなってるんだ……?

「「「「「…………」」」」」

 五人とも、立っている。
 つまり、全員があの猛火に耐えた。ヤツらは口だけじゃない……!

「にゅむっ、ビックリ! かなりパワフルさんになってるよー!」
「先生らぁ、やるにゃぁ! 見直したがよっ」
「「「「「…………」」」」」

 反撃の機会を、窺っているのだろう。誰一人として返事をしない。

「心配せんでも、この隙に仕掛けんきね。自信が満々だけあって、見違えるようになっちゅうねっ」
「「「「「…………」」」」」
「私も、認識を改めるわ。貴方達は、私達が知っている貴方達ではないわね」
「「「「「…………」」」」」
「あたし、別人さんと戦う感覚で戦いますーっ。正々堂々(せーせーどーどー)やろーね!」
「「「「「…………」」」」」

 賛辞を贈られても、反応しない。彼らは粛々と、こちらを見つめている。

「おいアンタら、レミア達が――ウチの犬どもが、褒めてんだ。ちったぁリアクションを取れよ」
「「「「「…………」」」」」
「喋らねーと、戦は盛り上がらないだろ。なんとか言えよ」
「「「「「…………。う」」」」」

 五人はなんとか言って、バッタリ倒れた。
 ??? これは、なんなんだ?

「お、おーい。お前ら、死んだふり作戦をしてんのか――」
《おや、皆さん気絶されているようでSU。この勝負、魔王使いチームのリーショーDAっ!》

 ビーっとブザーが鳴って、バトルが終わり。準決勝は、1回の攻撃で終了となっちゃったYO。

「にゅむぅっ!? どーなってるのーっ!?
「……皆目見当が付かないわ。フュルさん、あの決勝戦と同じ力で放ったのよね?」
「これは全体攻撃版で若干強いけど、そう変わらないぜよ。本にどうなっちゅうが?」

 3人は戸惑っている、が、俺は皆目見当がついた。あーね、そういうことだったのか。

「ゆーせー君がコクコクしてるっ。何かわかったみたいだよーっ」
「師匠師匠。なんで、相手先生は倒れたが?」
「……人格、回帰。ああやって相手が倒れたのは、対戦相手がアンタらだったからだよ」

 中継、されてますからね。性格を切り替える演技をして、解説をする。

「フュル。キミは、若干威力が増えた技を出したんだよね?」
「んむ。その通りぜよ」

 ぜよ星人は首を前に傾け、その隣にいる変態星人は首を横に傾けた。

「従兄くん? それがなんなの?」
「この子の魔法は、下級ですら辺りを更地にする。つまりアナタ達にとっての『若干』は、あちらにとっては大きな違いなんだよ」

 例えるなら、そうだな。像の一歩と蟻の一歩のようなモノだ。

「本気の数%を出すだけで他を圧倒できるヤツらには、死ぬ気で修行したって勝てるようにはならない。新たに得た力ってのは、耐えられる時間を数秒長くするので精一杯だったんだよ」

 努力しても、才能には勝てない。皆さん、これが現実っス……。

「そういえば二位先生らぁの気配を感じられんかったし、ワシらはそもそも力を抜いてたがやっ。うっかり忘れてたぜよ!」
「あたしもあたしもーっ。普段は下の方(ほー)の技しか使わないから、時々これが全力だと思っちゃうよねー」
「戦闘では、十パーセント台のものすら出した事がないんですもの。そうなるのは仕方ないわ」

 化け物軍団が、無邪気に残酷な御話をしている。
 1位と2位の差、ありすぎだよ……。これ、なにをやっても勝てんわ。

『優星、こんなもんなんだ。世の中には、無駄な努力があるんだよ……』

 そうだね、謎の声。努力は無駄にならないってのは、ウソッぱちだ……。彼らの努力、どう考えても無駄だもん……っ。

「にゅむ? ゆーせー君、どーして泣いてるのー?」
「平等なんてありゃしないって、思ってたの。……試合は済んだんで、スイートルームに行きましょう」

 決勝に進んであのお部屋に入ると、あらゆるサービスを受けられ好きな食べ物を無料で注文できるらしい。このままだと2位チームが可哀想だから、無理を言ってフルーツでも送ってもらおう。それと地球に戻ったら、ゴメンナサイなことをはがきに書いて送る高知県のイベント(南国市には後免(ごめん)というところがあるから誕生しました)にこの件を出してごめんなさいしておこう。

「ベロリンガル。フィールドを出てもいいよね?」
《いいYO! まったり休んで、明日の決勝に備えてダイチョーでSU!》

 この場の責任者のお許しを得た故、拙者達は移動開始。今尚倒れている準優勝者に合掌し、隣にあるホテルに向かったでござる。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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