第32話 side.夢乃

文字数 802文字

あたしは、学校の帰りに、路地に寄っていた。
理由はほかでもない。「消火器めろん」さんに報告するためだ。
プロフィールと、「消火器めろん」さんの話をつなぎ合わせると、「消火器めろん」さんは、あたしと同じ高校二年生の女の子。


お父さんから、「お前が男だったらよかった」って言われ続けたせいで、男の子っぽくなったって言ってた。

会うのははじめてだけど、きっとかわいい子なんだろうなぁ。
夢乃…ちゃぁん
っ!?
だ…誰!?
目の前には、一人の男が立っていた。


長い前髪の奥から、ぎょろりとした鋭い瞳があたしを見てる。

薄汚れた体からは、変なにおいがした。

あんた…誰よ!あっち行ってよ!
…俺が、「消火器めろん」だよ
うっ、うそ…
まさか、そんなはず…ない…。
嘘ついてたのね…女子高生なんかじゃ、ないじゃない!気持ち悪い!あっち行ってよ!!
そもそも、どうしてあたしの名前を知ってるの?



あたしのSNSアカウント名は「yumerin」のはず。

まさか…調べた?

みんなそうだ…ネット上じゃ仲良くしてくれるのに、前に出たら気持ち悪い、近づくなと暴言を吐く…。


君は俺のことをうそつきだと言ったけど、それなら君だってうそつきじゃないのか?勝手に信頼して、勝手に裏切るなんて…それも立派な嘘だろう?

ちが…
あたしは否定しようとした。なのに、口が動かない。



………………その、通りだったから。

彼の表情が大きくゆがんで、こぶしを握る。


そして、こぶしを大きく振り上げた。

きゃあっ…やめてえ!
あたしは叫んだ。
その瞬間だった。
ふわり、と空気が揺れて。

誰か認識する間もなく、その子は早くあたしの手を掴んで、ぐいっ、と引っ張った。

顔の前で、あいつのこぶしが空気を切る。危なかった。私はお礼を言おうとして、顔を上げた。
……そしたら。
その子、なんて言ったと思う?
ぜったい、あたしのこと嫌いなのに。

社交辞令が上手なんだろう。

亜希とかいう女の子は、言った。

助かって、よかった
ってね。
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登場人物紹介

桜庭 亜紀(さくらば あき)です。私立ボルネーチ学園に通う高校二年生です。周りからはよくツンデレと言われますが、自分ではどこが?って感じです。幼なじみの湊には、よく分からない感情を抱いてます。初恋はまだです。そのほかは、読み進めて私のことを知ってくださいっ‼(喋るのが嫌いなだけ)

佐々木 湊(ささき みなと)です。私立ボルネーチ学園に通う高校二年生です。亜紀は絶対にツンデレですが、自分は多分違います。そもそも、ツンデレの意味が分かりません。それはおいておいて、幼なじみの亜紀は、何やらかすか分からないので目が離せません。読者の皆さんも、亜紀を温かい目で見守ってあげてください。

上条 萌(かみじょう もえ)でーす。亜紀ちゃんや湊くんと同じ学校に通ってる、高二の萌袖大好き女子でぇす。亜紀ちゃんも湊くんも、ツンデレ同士お似合いよねー。早く付き合っちゃえばいいのに、ツンデレも大変ねぇ。ちなみに私には彼氏いまーす。けど、彼氏よりは亜紀ちゃんの方が大切だな。そうそう、湊くんと亜紀ちゃん、友達が少ないんだけど、私はそんな数少ない友達の一人だから大事にしてね☆早く二人の恋が実ることを祈ってまーす。

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