scene-4 妖雪の老幼女
文字数 1,497文字
目を覚ますと、
甘酒は
雪深い山中を何時間も
狸汁と呼ばれてはいるが、実際は狸に似たムジナとも呼ばれるアナグマの肉だ。狸の肉は匂いがきつく、臭みを消さねばならずあまり好まれていない。
双子の老婆から狸汁を渡されて食べ始め、その美味しさと温かさに気分が安らぐと同時に、脳裏に浮かぶのはプロトラクターの最後の笑顔だ。
いつも高慢ちきでプライドが高く、人を見下したように喋り、やたらと絡んでくるめんどくさい金髪ドリル女だった。
そんな奴が敵の攻撃から自分を
業火に包まれる瞬間、これまでに一度も見せた事が無い笑顔で笑って礼を言っていた。
「ありがとう……」と。
礼を言うのはこちらだろうと思ったが、すでに言葉をかけるべき相手はこの世にはいない。
その時勢いよく勝手口の引き戸が開けられ、
「お姉ちゃん、この家に居てはだめよ。恐ろしい事が起こるよ」
幼女は冬の凍てついた空気に響き渡る、氷の欠片の音色のような声で言った。
「「お嬢ちゃん、この娘は見た目は可愛いらしいが、嘘をついて村人を惑わせるこの辺りに住む魔物じゃ。耳を貸してはならんぞ」」
双子の老婆は一斉に同じ言葉を言い放つ。
「「嘘だと思うならば、お嬢ちゃんの持つその宝剣を抜いてみれば良い」」
彼女は自分の
これは海底迷宮の神殿で、人魚の巫女から
「きっとお役に立つでしょう」と言われたが、抜いてみると刃の欠けたボロボロに腐食した銅剣だった。こんな物がなんの役に立つのかと思ったが、言われるがままに持ってきた物だ。
なぜ双子の老婆はこの包みの中身が宝剣だと知っていたのかが気に掛かったが、自分が寝ている間に包みの中を覗いたのかも知れないと思い、試しに剣を抜き放つ。
目も
「あああっお姉ちゃん、その剣を抜いてはだめだよ! それはそういう風に使うものじゃない!」
幼女は苦し気に身をよじりながら叫ぶ。その身体からは白い水蒸気が立ち昇っている。
二人の老婆の口元が、
【『あ、痛ててててっ、腹がまたっ』】
【『馬鹿ねっ、調子に乗ってホットドッグを三つも食べるからよ』】
【『だって朝からなんにも食ってないし、出すもん全部出したら調子良くなって腹減ったんだもん』】
【『バツ君また行くんでしょ?』】
【『うん、行ってくる』】
【『はい、行ってらっしゃい』】