繋がれた魔女
文字数 1,828文字
ひときわ大きい馬車があるな。
「雄牛の皮」像、これに積まれてるんじゃないかな。
起きたか。とりあえず、作業員のふりして中の荷物を漁るぞ。
何してるんだっけ……。ああ、「はしご」探しに来てるんだっけ。
しかし「はしご」にウシの皮なんてものあったかな。
なんで縛られてんだ? 体、ハムみたいに括られてんじゃねえか。
おいルイズ、手伝ってくれよ……
って、おわっ! なんだこいつは!
こいつは魔女だ。奴らに捕まって、荷物と一緒に輸送中ってところか。
いや、この亀甲縛り。既に拷問中なのかな……。
これは亀甲縛りじゃなく、菱縛りだな。まあ、亀甲縛りに含めることもあるけど。
まあ、同族だけど……。友達じゃないし、別に助ける義理はねえよ。
マダム・ボゲ、念のため奴らからは目を離さない方が……。
あなたも用心深いですわねぇ。
それとも、あなたの「荷物」が心配なのかしら。
ほら、よく働いているわ。風紀正しき者に悪人はいないのです。
えっさか、ほいさ。ミニスカで荷物抱えるとめくれて運びづれぇな。
膝上何センチありますの!!?
ま、まさか……私の兵たちを誘惑するおつもり!? ふしだら! ふしだらですわ!
な、何言ってんだあんた?? うわ、ちょ、押さないでっ……
これは……。
ウイスキー類、貴金属のアクセサリー、香辛料。比較的換金しやすい商品ばかり。
……これらは別々の売り場へ運ぶべき荷のはずだ。なぜ一つに固められている?
おい、これをどこに運ぼうとしていた?
あー、これは、その。
お、お中元フェアのご提案でして……
んなこた、どーでもいいですわ!!
スカートだけじゃありません、この胸元もどんだけ開けてらっしゃいますの!?? 脱ぎなさい、こらっ!
これは、雑費の支払いに充てるための金貨だ。やはり貴様……。
「雄牛の皮」像……あった。たぶんこれだ。
でかいな……。
ってか、「皮」じゃないじゃん。普通にウシじゃん。これであってんの?
ウシっぽい荷物はこれだけだな。さて、どうやって運ぶか……。
……こりゃ、ジャンヌ達がバレたっぽいな。
しょうがねえ、撤退だ。
逃げよう。馬車のドアのところで様子を伺って、いいタイミングでバーッと……。
荷物はどうすんだよ。この像を持って帰らなきゃ……!
残念だが、そいつは諦めだ。次の機会を待つしかあるまい。
……次があるかは分からんが、ここで捕まったら可能性もゼロだろ。今、こんなでかい像を抱えて逃げる力はおれらには無いよ。
時間もない。馬車の中にいるとバレたら袋のネズミだ。
さ、行くぞ。
その「力」が、あたしは今欲しいんだ!!
あたしには力が必要なんだ。手に入れるべき力が「はしご」なんだ! 絶対に退かねえぞ!
くそ、大騒ぎになっちまった。増援とかが来る前に逃げ出さねぇと。
チビちゃんなら見てねえ! まだピカールと馬車の方にいるんじゃねぇか。
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