第19話 楽園追放・ミッション
文字数 1,319文字
「これで大体、最低限必要なことは伝えたつもりだけど、あなたの方はいい?」
イブキさんに生理の対処方法を聞いたボク。
「ボクの方は……」
何か伝えることがあったっけ?
この一週間、特に問題なく過ごせてきたので何とかなるような気もするけど。
「あっ、電話番号! スマホの番号をメモっておかないと」
スマホの電話番号を表示させるのに悪戦苦闘しているあいだ、イブキさんはボクが持ってきた荷物から手帳を取り出し中身を書き写した。
「寮の電話番号と、佐藤さんの番号を控えたから。
緊急の用事があったらそこへ電話するわ」
「佐藤さんって、佐藤夜羽 さん?
寮ではケータイ・スマホは所持禁止じゃなかったの?」
「佐藤さんはコッソリ持ってるの。もちろん、先生に言ったらダメよ」
「分かった」
また寮に戻ってスマホもネットも無い生活に入るのか。
テレビも一台しかなく深夜アニメなどは見れるはずもなく。
そう考えると元の自分の生活はまるで楽園だったな。
サタンのせいで楽園を追放されてしまうのか……。
「あっ、アニメの録画!」
ボクが居ないあいだの録画予約をちゃんと確認しておかなくて。
レコーダーの電源を入れ週間予約を確認する。
これでしばらくは部屋を離れていてもいいな。
「あっ、動画!」
お気に入りのユーチューバーの配信が行われているはず。
ノートパソコンを立ち上げて更新をチェックする。
やっぱり新しいのが来ていた。
イブキさんをほったらかしにしつつ動画を見た。
「あら? この子……」
「ボクのお気に入りのユーチューバー『ミダラなマリア』だよ。
ひょっとして知っている子」
『ミダラなマリア』は羽仮面をつけた女性で素性は明かしていない。
露出の多いコスチュームをしており、普段は長い髪に隠れているが左の首のところに吸血鬼に噛まれたかのような二つのホクロがたまに見え隠れする。
エッチな喋りが特徴で、その思わせぶりな発言に男性ファンが多い。
「ごめんなさい。勘違いみたい。あの子がこんなイカガワシイこと言うはずないし」
そうだよね、ミッションスクールの通う子がこんなエッチな配信をしていたら問題だ。
動画を見終わるとイブキさんが軽蔑の眼差しを送っている。
「うっ、ゴメンナサイ。健全な男子はこういうのを見るんです。見逃してください」
「……まぁいいわ。でも、元の身体に戻って町でぼくを見つけても声をかけないでね」
「はい……」
一通りの用事が済み、ボクは寮へ戻ることにした。
「じゃあ、ボクは寮へ帰るね」
「はい」
「ボクの身体、大切にしてね」
「ぼくの身体もね」
「さよならオレ」
「ごきげんよう」
「イヤイヤイヤ、違うでしょ」
「何が違うの?」
「『さよならオレ』って言われたら、『さよならワタシ』って返してくれないと」
「何なの? そのやり取り?」
「大林亘彦監督の『転校生』だよ。知らないの尾道三部作?」
「知らない! 一人でやってて!」
バタン!
ドアを閉められてしまった。
ロマンがないなぁ。
こうして居心地のいい楽園を追われたボクは規律厳しい女学園へと戻ることになった。
イブキさんに生理の対処方法を聞いたボク。
「ボクの方は……」
何か伝えることがあったっけ?
この一週間、特に問題なく過ごせてきたので何とかなるような気もするけど。
「あっ、電話番号! スマホの番号をメモっておかないと」
スマホの電話番号を表示させるのに悪戦苦闘しているあいだ、イブキさんはボクが持ってきた荷物から手帳を取り出し中身を書き写した。
「寮の電話番号と、佐藤さんの番号を控えたから。
緊急の用事があったらそこへ電話するわ」
「佐藤さんって、佐藤
寮ではケータイ・スマホは所持禁止じゃなかったの?」
「佐藤さんはコッソリ持ってるの。もちろん、先生に言ったらダメよ」
「分かった」
また寮に戻ってスマホもネットも無い生活に入るのか。
テレビも一台しかなく深夜アニメなどは見れるはずもなく。
そう考えると元の自分の生活はまるで楽園だったな。
サタンのせいで楽園を追放されてしまうのか……。
「あっ、アニメの録画!」
ボクが居ないあいだの録画予約をちゃんと確認しておかなくて。
レコーダーの電源を入れ週間予約を確認する。
これでしばらくは部屋を離れていてもいいな。
「あっ、動画!」
お気に入りのユーチューバーの配信が行われているはず。
ノートパソコンを立ち上げて更新をチェックする。
やっぱり新しいのが来ていた。
イブキさんをほったらかしにしつつ動画を見た。
「あら? この子……」
「ボクのお気に入りのユーチューバー『ミダラなマリア』だよ。
ひょっとして知っている子」
『ミダラなマリア』は羽仮面をつけた女性で素性は明かしていない。
露出の多いコスチュームをしており、普段は長い髪に隠れているが左の首のところに吸血鬼に噛まれたかのような二つのホクロがたまに見え隠れする。
エッチな喋りが特徴で、その思わせぶりな発言に男性ファンが多い。
「ごめんなさい。勘違いみたい。あの子がこんなイカガワシイこと言うはずないし」
そうだよね、ミッションスクールの通う子がこんなエッチな配信をしていたら問題だ。
動画を見終わるとイブキさんが軽蔑の眼差しを送っている。
「うっ、ゴメンナサイ。健全な男子はこういうのを見るんです。見逃してください」
「……まぁいいわ。でも、元の身体に戻って町でぼくを見つけても声をかけないでね」
「はい……」
一通りの用事が済み、ボクは寮へ戻ることにした。
「じゃあ、ボクは寮へ帰るね」
「はい」
「ボクの身体、大切にしてね」
「ぼくの身体もね」
「さよならオレ」
「ごきげんよう」
「イヤイヤイヤ、違うでしょ」
「何が違うの?」
「『さよならオレ』って言われたら、『さよならワタシ』って返してくれないと」
「何なの? そのやり取り?」
「大林亘彦監督の『転校生』だよ。知らないの尾道三部作?」
「知らない! 一人でやってて!」
バタン!
ドアを閉められてしまった。
ロマンがないなぁ。
こうして居心地のいい楽園を追われたボクは規律厳しい女学園へと戻ることになった。