池の鯉

文字数 1,992文字

以前、とても印象的だったことです。

友人と、公園の池に向かいました。


池には噴水があって、そこの前のベンチに座ってマイナスイオンを受けるのがお気に入りでした。

……
池に到着した私たちの面前に、想像を絶する景色が広がっていました。
……
……
子供たちが数人、池に周囲の砂利(じゃり)を大量に投入していました。
……
……
一言もしゃべらず、一心不乱に自分の足元の石をかき集め、大量に池に入れていました。

それほど大きな池でもないのに、ザクザク、ザザザーという感じでもうなんか小型ブルドーザーが数機で石を投入という感じがしました。

まあ~
ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ
あらあら

あははははは

保護者と思しき女性が数人、近くでしゃべくっていました。

子供らの惨状にまったく気づいていない様子。


否、気づいていても、あえて無視しているようでした。

……
開いた口が塞がりませんでした。

何より、その惨劇を見ている人がたくさんいるのに、誰も何も言わず、素通りして行きました。

注意してくる。
止めとけば?
言ってくる。
そして、パッと見て
ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ
……は

やめておこう。

……
黙々と池に石を投入している、小さな女の子の所へ行きました。
……
とりあえず、座って目線を合わせます。
ねえ
笑顔で話しかけました。
うん?
どうして

こういうことしてるのかな?

笑顔で聞きました。

腹の中は煮えくり返っています。

あのね、

黒いの、悪い子なの。

黒いの?
池の中には、黒く見える鯉がたくさん泳いでいました。
(黒は悪い、白は善いってことか。それで、正義の制裁を加えていたわけか……)
小さい頃は、私もそういう遊びをしていました。

そして、黒は悪、白は善ということは、私にもすんなりとわかりました。

(ブラック企業っていう言葉があるくらいだもん。黒は悪いってベタな印象が付いちゃってるんだな)
ブラック企業は成敗すべき物件ですが、身体の色で善悪を決めるのは問題があります。しかも、鯉に善いも悪いもありません。あっても私にはわからないし、人間が決めた価値に鯉は関係ありません。

黒い子、悪い子じゃないよ。

……
女の子の動作が止まりました。
黒い子も白い子も

両方いい子なんだよ。

黒がいい子なら白が悪い子になるのでそう言いました。
そうなの?
うん。
これでもかというエンジェリック・スマイルにエンジェリック・ボイスで言いました。
だからね、この小さなお池に石がいっぱい入ってくると、苦しいようってなっちゃって、かわいそうなのね。
トーンを下げ、悲しそうに言います。
……
白い子も黒い子も悪い子じゃないから

止めてあげてくれると嬉しいな。

うん。
優しい、いい子だね。

ありがとう。

元々、悪い子を成敗するつもりでやっていた子です。

悪い子ではないはずです。


すると、隣にいて話を聞いていた男の子が、

俺も止める!
よぉし!

善い子だ。

キミも偉いぞっ!

と言っておだてる褒めると、
悪い子じゃないから

石、入れちゃダメだぞ!

と、他の子にも言って止めさせていました。
優しいな、いい子だな

ありがとね。

と、詐欺師張りの笑顔を子供たちに与え、友人のところへ戻りました。
ニヤニヤ
と、嫌な笑みを浮かべていたので
ああいう時は親じゃなくて

子供に言うのが正解なんだよ。

と、言いました。
「誰々さんに叱られるから止めなさい」ってヤツか。
子供の悪いところを教えるんじゃなくて

自分が叱られるから止めろっていう最悪な怒り方しそうな親だったじゃん。

いい印象は持てませんでした。

親を通してよりも、子供に直接言う方が、この場合は良いように思えました。

うちの職場でもたまにいるよ。

そういう親。

靴はいたまま机に乗ってるのに、

「そこのお姉さんに叱られるから降りなさい」って言うの。

それ以前の問題なんだけどね……
お宅のお子さんは自分ちの机にも

靴はいて乗ってるんですかって話なんだけどね。

乗ってたとしても、

皆で使う公共のテーブルに乗るのは止めさせないとね。

そんな大らかではなく、自分の家の机に靴はいて乗ったら激怒するとかかもしれません。
言って聞きわけがない感じだったら

怒鳴り散らそうと思ったけど、

まだそんな感じがしなかったから

とりあえず褒めといたよ。

そか
注意してた男の子は、

あまり言い方が強いと後でいじめにあうかも知らんが後は知らん。

そだね
目立つ子は、いじめのターゲットになりやすいように思います。

でも、それでも敢えて行ったのは、

池の鯉は悪くないもん。
そーだよね
だからです。
(強く生きよ、少年よ)
と、思いながらその場を逃げました。
モンペ(モンスターペアレンツ)の場合

こっちが悪者にされかねません。

言いたいことだけ

(伝えたいことだけ)

言ったら逃げましょう。

子供でも目を見て話せば

だいたいどのタイプかわかります。

まだ他人の話を聞けるか

聞けないか。

聞けない年齢に行っていたら

関わらずに逃げることをお勧めします。

昔は注意してくれる

おばさんとか居たのにね。

私、

おばさんなわけ?

ん?
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登場人物紹介

佳純(かすみ)

天使なクレーマーです。

※アイコンは風知草さんのご厚意で使用させていただいています。

友人Aなど

※風知草さんからお借りしたイラストです

携帯電話会社の店員さん

※風知草さんからお借りしたイラストです。

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