◆7 朱鷺の夢──生まれ変わったら……

文字数 497文字

  頭がぼやけている。水の流れる音が、どこからともなく聞こえてくる。
 誰かが歌っている。
 ──子守唄か?
 瞼が重い。
 ──このまま眠ってしまったら、どんなに気持ちがいいだろう……
 夢を見ていた。目の前で、次から次へと場面が変わる。
 薄目を開けてみる。
 ──青い。
 ──青い空か?
 前にも見たことがある景色だ。
 ──まだ夢の続きかもしれねえ。
 ──疲れた……
 ──もう少し眠ろう。
 ──夢の中でも夢を見るのだろうか?
 そんな他愛のない考えが浮かんだ。自ずと瞼は閉じた。
 ──青い、青い空、青い……
 頭の中で念仏みたいに唱え続けた。
 『港のヨーコさん』の歌が聞こえる。
 ──いい歌声だ!
 ──昔、聞き覚えのある声だ……ハテ?
 寝入り端に、こんなにも心地いい声を聞けば、誰だって熟睡できるだろう。水の流れと歌声とが奏でるハーモニーにウットリと聴き入った。
 いつしか、イビキをかいている。眠りながらも、ちゃんと分かっている、自分のイビキだと。それは次第にケダモノの雄叫びに似た呻き声に変わっていった。
 ──生まれ変わったら、人間になろう!
 朱鷺は決心した。
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