第7話 やる気

文字数 815文字

 今日は11時から太極拳。昨年度から始めた。コロナのせいでスタートは6月。週1回、1時間。
念願のお稽古。ここ数年、先生を探し続けていた。昨年、偶然にも市民講座の増設で見つけた。だからお値段お手頃。尚、宜しい。しかも講師は中国人。4000年の歴史を受け継ぎし者。願ったり、叶ったり。

 太極拳と言えども、まずは気功から。腹式呼吸の深い呼吸。「吸って〜、吐いて〜」……
二胡の曲に合わせて、ゆっくり体を動かす。このゆっくりがクセモノ。先生と同じ早さでやろうものなら、ヨロヨロ、プルプル、呼吸は乱れる。oh! なんという体幹の悪さよ(涙)

 一通り気功の型をやり終えて、次は太極拳。時間は11時40分。
曲がかかる。すでにお馴染みの曲だ。気功と違って、こちらは踊りに近い。手足が左右、上下、斜め横……
あれれ、わからない。どうだったっけ?
手がこっちのとき、足はこっち。顔は前向きで、呼吸は吸うのか、吐くのか? えっと、えっと。
先生の動きを見ながらやっているにも関わらず、同じように出来ない。ましてや一連の動作など論外だ。私はこんなにも鈍いヤツだったのか(涙)
今更ながら自分のことを知る。

 失意に打ちのめされながらも、なんとか終了。今日もポンコツな私。先生に声をかけられる前に、そそくさとその場をあとにした。なぜなら、個人的にご指導を受けた過去があるからだ。受講者さんたちにお疲れさまと声をかけながら通り過ぎようとしたとき、おひとりの方から
「お疲れさま〜、今日の難しかったわよね。私、あなたに助けられてるのよ」と
どうやら私の型を見ながらやっているらしい。
嘘でしょ…… ありえん。
前にいる人の動きをカンニングしている私に、そうおっしゃるのだ。
あー。あー。
想定外の言葉に、もの凄い恥ずかしさが襲ってきた。穴があったら入りたい。
久しぶりにそんな気持ちになった。

 私は誓う。
私を頼りにされている、あの方のために練習をすると。
何が背中を押すか、わからない。
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