第27話 パプア・ニューギニアからの出国:2023年3月

文字数 915文字

(佐々波三郎が、パプア・ニューギニアから、帰途に就く)

2023年3月。パプア・ニューギニア。ポートモレスビー。ジャクソン国際空港。

車は空港に向かっていた。
コロナウイルスの変異株は、依然として猛威を奮っていた。佐々波は、ワクチン接種が再開出来るか、2週間、様子を見たが、事態は改善しなかった。このため、一旦、日本に帰国することにした。メルボルンに戻る選択もあったが、パプア・ニューギニアの現状を、まずは、東京本社に、報告しておいた方が良いだろうと考えたのである。
「佐々波さん。せっかく、ポートモレスビーまで来てもらったけど、今回は、仕事にならなかったですね」
スミスが言った。
「ときには、思い通りにいかないこともある。仕方がないね」
佐々波が返事をした。
車は、空港の出発ロビーに近づいた。
出発ロビーは、やけに、混んでいる。「何か、あったのかしら」と、佐々波は思った。ポートモレスビーは、首都の空港とはいえ、飛行機の本数は少ない。普段は、人影はまばらだった。
車は、空港の出発ロビーに到着した。
「荷物を降ろす前に、ちょっと、様子を見てきますから、ここで、待っていてください」スミスはそういうと、先に、降りた。ポートモレスビーは、世界の最も住みにくい都市のランキングの上位の常連である。衛生状態があまりよくないことと、治安があまりよくないことが問題だった。大きなスーツケースを抱えての移動は、それだけで、リスクが高いので、手軽な状態で、状況を調査をした方が安全だ。
しばらく、すると、スミスが戻ってきた。
「佐々波さん。だめです。飛行機は飛ばなくなりました。ホテルに戻るしかありません」
「なんだって。どうして、飛ばなくなったんだ」
「コロナウイルスの変異株のせいです。コロナウイルスのワクチンは、T商事が扱っているものの他に、米国と英国で、それぞれ生産している2種類のワクチンがあります。パプア・ニューギア変異株には、その3種類のワクチンが、全く、効果がないことがわかったんです。このため、効果のあるワクチンが開発されるまで、国境閉鎖の措置がとられるそうです」
「とんでもないことになった。これでは、まるで、ロビンソン・クルーソーだ」佐々波は言った。
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