愛されたり憎まれたりする人ダビデ

文字数 1,674文字

 ダビデがサウルと語り終えたとき、サウルの息子ヨナタンの心はダビデの心に結びついた。ヨナタンは、自分と同じほどにダビデを愛した。(サムエル記Ⅰ/18章1節に補足)

「エッサイの子ダビデよ、君があのゴリアテを墜とした戦士か。私はサウル王の子にしてイスラエル王国第一王子、ヨナタンという。どうか私の友となってくれ」

「王子よ、なぜ服を脱ぐのですか」

「契約のためです」

 サウルはその日、ダビデを召し抱え、父の家に帰らせなかった



 ヨナタンは、自分と同じほどにダビデを愛したので、ダビデと契約を結んだ。



 ヨナタンは来ていた上着を脱いで、それをダビデに与え、自分の鎧兜、さらに剣、弓、帯までも彼に与えた。  (サムエル記Ⅰ/18章2-3節原文まま。本当にまんま)

「……なかなか情熱的なご子息をお持ちで」

「うむ、あれはまさしく戦士なのだ」

「ところで我が王、その後ろにいる方はどなたでしょう」

「後ろ?」

 サウル王の後ろには女が控えていた。ダビデはその女が若く美しくさらに将来有望そうな身体であるのを見た。

「ミカルではないか。けして来てはいけないと命じたはずのお前が、なぜここにいる」

「陣中見舞いでございます、我が父、我が王よ」

「神に感謝をささげます。王女ミカルのお目にかかれるとは」

 ミカルはサウルの娘、王女メラブの妹である。また、恋した相手には一途なタイプであった。

「私の兄弟ヨナタンが貴方と契約を結んだと告げるものがありました。彼は道具持ちとたったふたりでペリシテの艦隊に殴り込みをかけ、大混乱に陥れ壊滅させた知将にして猛将。彼が認めた貴方は神に愛された戦士なのでしょう」 (サムエル記Ⅰ/14章を要約)

「ミカルよ、父の家、貴方の帰るべき場所へ帰りなさい。ここは戦場なのだ」

「我が父よ、どうかその前に、神に選ばれた方に祝福を授けることをお許し下さい」

 ミカルはダビデに口づけすると、供を連れて都エルサレムへと帰っていった。

「……きさ、ダビデよ」

「ファーストでした」
「その情報はいらぬ」
「ラベンダーみたいな香りがしました」

「どうやらミカルは貴様に惚れているらしい。かくなる上はあの娘を嫁にやろう」

「王よ、私は何者なのでしょう。私の家は身分も低く財産もないですから私が王の婿になるなどありえませんが、やっぱりもらえるのならいただきたい」

「心配することはない、友よ。私は貴様に花嫁料※を求めはしない。ただペリシテ人の陽の皮百枚を持ち帰れば、我が娘ミカルを嫁にやろう」 (サムエル記Ⅰ/18章を要約)

※婿が嫁の家に納める金品。結納金のようなもので王家ともなれば莫大な額になる

「……ペリシテ人の陽の皮ですと!?」

 陽の皮とは男のナニが被っている皮のことである。イスラエル人すなわちユダヤ人には『割礼(かつれい)』の風習があり、男児は生まれて八日目におち●ち●の皮を切除される。ユダヤ人に包茎はいないのだ。



 ゆえに陽の皮を持ち帰ることは外敵を討ち取った証となる……のだがそれは地球人の話。ペリシテ星人は

なので陽の皮などあるはずもなく達成は不可能。サウルは外道であった。

「百枚だ。ビタ一文まけん。集めきるまで戦場から帰ってこなくてよい」

「は?」
「ああ??」

「謹んで行ってまいります!」

 娘を奪われた父の眼力は神の祝福を授かったエイリアンバスターのそれを凌駕していた。



 こうしてダビデは戦場を駆けずり回るはめになったが、どこでもサウルが遣わすところに出ていって勝利を収めたので、サウルは仕方なく彼を戦士たちの長とした。



 



 エルサレムに向かっていたミカルが消息を絶ったと報せが入ったのは、ちょうどその日の夜のことであった。


<割礼について>

日本では馴染みが薄い割礼ですがアメリカなどでは今も広く行われています。宗教的な意味合いだけでなく、ナニが清潔に保たれるため性病のリスクが下がるほか、性不能にもなりにくくなるからです。立派な医療行為でもあるわけですね。


「俺、包茎治療受けるんだ」と「俺、割礼受けるんだ」のどっちが周りに言いやすいかは個人の判断に任せます。

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登場人物紹介

ダビデ


 後にイスラエルの栄華を築く羊飼いの少年。凶暴な生体兵器へと改造された王女ミカルを捕獲し、元に戻せば嫁にやると言われて旅立つ。特技は投石。好きな食べ物は羊の煮込み。女好きで外道

ミカル


 イスラエル王女。ヒロイン兼馬代わり。

 元は美少女だったが生体兵器へ改造されてしまった。口から放つ音響縮退砲エリコバスターは射程内のあらゆるものを粉砕する。

 腹をがばっと開くことができ、人間だった頃の体はそのスペースに収まっている。もうひとりくらいなら潜り込んで添い寝が可能。


 左は人間だった頃の姿である。改造後はカマドウマとナマコを足して割らなかったようなヌメヌメ六本足の身体となった。

サウル


 イスラエル初代国王。聡明だが臆病で短気なところもある、ダビデの主君でミカルの父。

 ペリシテの侵略に悩まされていたところにダビデが現れて喜ぶも、ミカルがダビデに惚れたことで手のひらを返した。が、そのミカルを改造されてしまったことでまたも手のひらを返し、ミカルを人間に戻せば嫁にやろうとダビデを焚き付ける。

ヨナタン


 イスラエル第一王子。ミカルの兄でダビデの大親友。

 シスコンをこじらせている。

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