最終話 聖約(光あれ) 

文字数 1,708文字

死したものが再び別世界に生まれ変わることのできること。
それは異世界転生と呼ばれる。
その死んだものの祈りと願いによってもたらせる転生者の祝福、マギア。

少女はただ人として生き、憧れた勇者になりたいと言う願いによってあらゆる恐怖を打ち砕くマギアの能力を持った。
それは勇気のマギア。

青年は、大切な人を守るため二度と自分が負けない、触れたものが錆びることも朽ちることのない能力を持った。
それは剣聖のマギア。

青年は、国を守る憧れていた父と同じになるためにあらゆる兵器を作り、操ることができた。
それは創造のマギア。

青年は、強くなる願いによってあらゆる武器を使える様になり、空も翼もいらずに飛べることができた。
それは天地のマギア。

少女は、もう二度と家族の温もりから離れたくはないと言う願いで、同じ仲間に魔力を分け与えられる力を手に入れた。
それは同化のマギア。

少女は、病に苦しんだ自分と同じような人から苦しみを取り除きたい言う願いで自身も相手も癒す力を授かった。
それは再生のマギア。

そして最後の少年は、自身のために命を失ったものの心意を知りたいとの願いのために、思考を読み取れる力を授かった。
それは心奥のマギア。

それが転生者の全てだ、そこには天星者はもういない。

✳︎✳︎✳︎

森に囲まれた都市ティルウィング近郊に魔竜と言われる生物と三人は戦っていた。

「ギャパラララッ」

ブンッ

ギィンッ

バギィ

人の数倍はある魔竜の振りかざす斧のような爪をマーニさんは刀剣で受け止めて、逆に叩き切った。

「アスラ、ナギちゃん、頼むわよ」

刀剣を振り終えた彼女が後ろを振り向くと、後ろの二人が何やら準備していた。
ナギさんと呼ばれている人は、自身と同じぐらいの大盾を持ちながら、魔石を握り締め。
アスラは杖を構えて、魔術詠唱を始めようとしていた。

「アスラ、魔石と同化したから魔力供給も充分だからからどんな強力な魔術も思いっきり使うといいっすよ」

「フッ、言われなくても分かってるよ、凍剣〈うがち〉!!!」

ガキィン!!!

「ギャバァァァァ!!!」

やっぱりアスラはいつ見ても凄いな、地面から剣の形をした氷を生やして、硬い鱗を持った魔竜を簡単に突き刺すんだから。

魔竜が倒した後、マーニさんは笑顔になって二人の前まで走って行った。
「ありがとう、二人とも」

「いやいやこちらこそありがとう王女マーニ様。
あの魔竜、攻撃が激しいから遠距離でなかなかこちらから攻撃できないからね」

ナギさんは、イジワルそうにニヤニヤしながら言った。
それにマーニさんは、頬を含まらせながら言った。
「ちょっと、王女マーニって呼ぶのやめなさい、私はマーニでいいの、そっちの方が友達らしいから」

「いやぁこだわるね、アタシとしては、どっちでも変わらないと思うけど」

「マーニ、ナギ、無駄話してないで生き残った魔竜が来たよ」

「ギャバァァァァ!!!」

「じゃあ、また私が足止めするから」

そして、三人は空から急降下で飛んでくる新たな魔竜に挑んで行った。

良かった、アスラやマーニさんも仲良くしている。
これでいいんだよ、もうアスラは俺を助ける為に何度も何度も苦しまないで良いし、マーニさんも本当の自分を皆んなに認めてもらって、これこそハッピーエンドだよ。

さて、俺ももう行かないと、やることもいっぱいあるし。

✳︎✳︎✳︎

「やっと終わったー」

いつもと変わらない世界、空は変わらず、散りばめられた星々が浮かんでいる。

ここは地球やエリシオンなどの星海だけが見える世界、この世界には一つだけしか星がない。
その星の名は、アヴァロン。

誰が目指した理想、ここに存在させることができた。

長い旅だったけど、星海の呪いも全てを平穏のままにこの世界に眠らせることができるようになり、あちらの世界の生き物達により良い進化をもたらす星海の祝福を送れるようになった。

やっぱり、不器用だから思ったより時間がかかったようだけど、でも終えれたからよかった。

「ーーマコト」

今、何処かでマーニさんやアスラの声が聞こえたような、いいや気のせいか。

だけどこの二つの宇宙はいつまでも見守っていよう。

これらを守るのが俺の生きる意味でみんなの幸せなのだから……



異世界マギア天星 ー完ー
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み