第6話

文字数 1,079文字

僕の名前は、タカシ。長々としゃべりすぎたせいで名前を名乗るのを忘れてた。という訳で、タカシと申します。

さっきも言ったけど僕は悪ガキだった。まぁ今考えるとかわいいもんだけど。そんな大したことはしてないし。とりあえずいたずらが大好きだったんだ、ぼくらは。家の近くの公民館の屋根に登っては屋根の上から通行人にmyエアガンで狙撃したり、爆竹投げたり、カエル投げたり、そんな感じ。ピンポンダッシュもなぜかあの頃はやたら楽しかったなぁ。今やっても、まぁ、おもしろいかもしれないけど。

その他のイタズラは学校で。ほうきでチャンバラ、興味本意で消火器ぶちまけたり。まだある。給食センターの人たちがぼくらの給食を届けてくれるんだけど、ぼくらは給食が運ばれてくる部屋に侵入して給食前に好きなものを片っ端から食べたり、帰りのためにランドセルにぱんぱんになるまでコッペパンを詰めたりしたんだ。全部が楽しかったんだ、ほんと。今思い出してもあの頃の気持ちとか快感とかがよみがえってくるみたいで、そんなとき、あのころが一番幸せだったんじゃないかな?って思ったりするんだ。

先生あのね、あのね、あのね、先生あのね、あのね、あのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのねあのね、今日ははれだった。がっこう楽しかた。

小学校のとき、「あのね帳」ってのがあった。それは簡単に言うと、先生との文通みたいなものだ。とにかく始めに、「先生あのね」って書かないといけない文通だったから、あのね帳っていう名前なんだろうな。今見てもらった、ひたすら「あのね」が書かれていたのが僕の先生への文通の1つだ。

どのページも大体こんな感じで書いてあった。こないだ押入れを整理しているときにたまたま出てきた小4のときのやつ。僕はそれを見てびっくりした。まず残っていると思ってなかったし、なんで実家じゃない一人暮らしのアパートなのにこれがあるのかもわからなかったし。

そしてなにより、その全ページがほぼ「あのね」で埋め尽くされてたから。相当書くのが苦手だったんだな。でももっとびっくりしたのが、そのあのね帳の終わりに行けばいくほど、字が上手くなっていた。特に「あ」と「の」と「ね」が。僕はそれを見て思わずひとりで笑ってしまった。

・・・先生あのね、ぼくはもうぼくではなくて、「僕」になったんだ。僕はもう二十五歳になったんだ・・・。

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