御屁様
文字数 2,308文字
エレベーターの中。
10人ほどが立っている。
みな不安顔である。
エレベーターは止まったままで、ドアも開かない。
男、エレベーター内の緊急連絡ボタンを押す。
中年の男が、人をかき分けて近づく。
エレベーター内を沈黙が支配する。
突然、「プー」と小さい音がする。
乗客たち、それに気が付かないかのようである。
誰も答えない。
どこからか「スー」という音が聞こえる。
すると今度は、「ブリブリブリー」と、かなり大きい音が響く。
誰も気が付かないかのようだ。
会員たち、合掌しながら同じ方向を向いて、尻を突き出す。
エレベーター内に、さまざまな音色の放屁音が鳴り響く。
と同時に、エレベーターのドアが開く。
急いで、しかし整然と、エレベーターから出ていく。
男一人が残される。床に倒れていて動かない。
暗転。