第1話

文字数 372文字


 空を飛ぶ。
 羽ばたいて家に帰る。

 森の中、山の中腹、洞窟の前、
 大きな木が1本あるところ。

 大樹をくりぬいて中は人が住めるように作ってみた。
 増築した家屋が大樹に寄り添うようにある。
 まだまだ完璧にはほど遠い。

 ゆっくりと下降して地面に降りる。
 すぐに大樹の扉が開いて、スゥハが出てきた。

「おかえりなさい」

 スゥハが僕を見上げて言う。
 返事は自然と口から出た。

「ただいま」

 僕のただいまにスゥハはにっこりと笑う。
 スゥハは嬉しそうだ。
 スゥハの笑顔を見ると僕は妙な気分になる。
 少し、落ち着かない。
 だけど、悪い気はしない。

『おかえりなさい』に『ただいま』
 僕は何をやってるんだろうね?

 スゥハは人の娘で、
 僕はドラゴンなのに、

 これじゃまるで、
 夫婦みたいじゃないか。

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登場人物紹介

ユノン

白鱗銀角のユノン。ドラゴンの中では珍しい一本角。独自の魔法を活かす方法を探る内に、工作好きに。人間とは感覚、習慣、羞恥心が違う。スウハと出会うことで胸の中がモヤンモヤン。

スゥハ

山に下りたドラゴンを鎮める為に、村から出された生け贄の少女。後にドラゴンの聖女と崇められる。過去の経歴から男性には警戒しがち? ユノンの無自覚セクハラに悩まされる日々。

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