第9話
文字数 965文字
龍王はその涼しげな眼を、わずかに細めた。
「あたくしは、いつでも本気ですわ」
見つめあった。
「後悔は……しないのだな」
「決して」
「……あなたを、愛している」
唇を奪われた。体の中心に電流が流れたような感覚。一年も一緒に暮らした。毎日顔を合わせ、肩を寄せ合った。ささやきあった。けれど、初めての口づけ。
優しく何度か触れたあと、絡みつくように動く。時に速く、時におそく。体の芯からとけていくような快感にふるえた。舌がしのびこんでくる。動きを合わせた。
ベッドに倒れ込む。粗末なベッドは激しい音を立てた。耳元に感じる息づかい。心臓が高鳴る。唇が首筋の傷に触れたとき、思わず目を閉じた。全身に小さな痺れが走る。
声を漏らしそうになるのを必死にこらえながら、
「あなた様を、お慕いしております」
自然と言葉がもれた。龍王は動きを止めた。切ないまなざしで見つめる。その視線に触れ、体中が熱くなる。
胸にじわりと熱いものがこみ上げた。その冷たい指が胸のふくらみに触れる。
「あ……」
体をよじらせた。首筋の唇がデコルテへと這った。
そのときだった。
だん、と、大きな音がしてドアが開かれた。
「エズメラルダ!」
その声に、エズメラルダの体が凍り付いた。
まさか。
おそるおそる目を開く。そこにいたのは。
一瞬にして体が凍り付く。
「アル……ハンドロ様……」
背が高く引き締まった体に精悍な顔つき。忘れるはずもない。忘れることなどできない。五年前はまだ幼さが残る顔つきだったものが、立派な青年へと変化を遂げていた。
その美しさに息をのんだ。
「そこまでにしていただこう」
怒りに顔をゆがませ、頬をふるわせていた。
大きな後悔と、本当にアルハンドロを失ってしまうという恐怖に、心臓が大きな音を立てた。血の気が引いていく。
なぜ、今になって。
頭の中が真っ白になった。
なぜ、こんなときに限って。
心を決めたところだった。この方を忘れようと。もう、あの頃には戻るまいと。
「なぜ、裏切る」
地獄の底からひびいてくるような声だった。アルハンドロのこんな声を一度も聞いたことがなかった。
「あなただけは……あなただけは決してわたしを裏切らないと思っていたのに!」
龍王が体を起こした。アルハンドロは青ざめた顔で、剣の切っ先を龍王の首先に突きつけた。
「この方なのか……?」
「あたくしは、いつでも本気ですわ」
見つめあった。
「後悔は……しないのだな」
「決して」
「……あなたを、愛している」
唇を奪われた。体の中心に電流が流れたような感覚。一年も一緒に暮らした。毎日顔を合わせ、肩を寄せ合った。ささやきあった。けれど、初めての口づけ。
優しく何度か触れたあと、絡みつくように動く。時に速く、時におそく。体の芯からとけていくような快感にふるえた。舌がしのびこんでくる。動きを合わせた。
ベッドに倒れ込む。粗末なベッドは激しい音を立てた。耳元に感じる息づかい。心臓が高鳴る。唇が首筋の傷に触れたとき、思わず目を閉じた。全身に小さな痺れが走る。
声を漏らしそうになるのを必死にこらえながら、
「あなた様を、お慕いしております」
自然と言葉がもれた。龍王は動きを止めた。切ないまなざしで見つめる。その視線に触れ、体中が熱くなる。
胸にじわりと熱いものがこみ上げた。その冷たい指が胸のふくらみに触れる。
「あ……」
体をよじらせた。首筋の唇がデコルテへと這った。
そのときだった。
だん、と、大きな音がしてドアが開かれた。
「エズメラルダ!」
その声に、エズメラルダの体が凍り付いた。
まさか。
おそるおそる目を開く。そこにいたのは。
一瞬にして体が凍り付く。
「アル……ハンドロ様……」
背が高く引き締まった体に精悍な顔つき。忘れるはずもない。忘れることなどできない。五年前はまだ幼さが残る顔つきだったものが、立派な青年へと変化を遂げていた。
その美しさに息をのんだ。
「そこまでにしていただこう」
怒りに顔をゆがませ、頬をふるわせていた。
大きな後悔と、本当にアルハンドロを失ってしまうという恐怖に、心臓が大きな音を立てた。血の気が引いていく。
なぜ、今になって。
頭の中が真っ白になった。
なぜ、こんなときに限って。
心を決めたところだった。この方を忘れようと。もう、あの頃には戻るまいと。
「なぜ、裏切る」
地獄の底からひびいてくるような声だった。アルハンドロのこんな声を一度も聞いたことがなかった。
「あなただけは……あなただけは決してわたしを裏切らないと思っていたのに!」
龍王が体を起こした。アルハンドロは青ざめた顔で、剣の切っ先を龍王の首先に突きつけた。
「この方なのか……?」