さよなら、ぼくの夏休み

エピソード文字数 439文字

 やった!
 たったいま一匹の兎が罠にかかった。
 それをモニター越しで眺める。
 薄暗い地下室で、
 兎はトラバサミの餌食となった。
 兎は出血していた。
 兎の両脚は骨折していた。
 兎はもがき泣きわめいた。
 ソプラノ、アルト、テノール、バスの調べ。
 興奮のあまり、ぼくのペニスは充血した。
 時が経つにつれ、いい加減もう聞き飽きてしまった。
 数日後、
 ぼくは地下室のドアをあけた。
 ゆっくりと階段を降りた。
 埃まみれの裸電球をつけると、
 兎は死んでいた。
 兎を開放してやろう。
 兎の首根っこをつかまえた。
 兎を焼却炉にぽいっと放りこんだ。
 夏の真夜中に、
 パチパチと音をたてる。
 遠くで(ふくろう)の鳴き声がした。
 煙突から黙々と煙が立ちのぼる。
 ようやく青白い満月をつかまえた。
 夏の大三角形がうらめしかった。
 
 「さよなら、ぼくの夏休み……」冷たい涙が頬をつたった。「さよなら《グッバイ》、ぼくのアニー《マイ・バニーガール》」
 
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