第5話:転職と新製品開発指令

文字数 1,788文字

 興味あるかと聞かれ、はいと答えた。今晩、うちに、泊まっていけと言われた。清水が、良いのですかと聞くと田舎だからなと言った。是非、品質管理の実験の様子を見たいと言うと、じゃー、見せてあげようと言い、珈琲を入れてくれた。15分後、電話が入り、さー実験だと言われ、一階の実験室に入った。

 そこで、厚い土鍋の破片みたいなものが3つ置いてあった。これは、数種類の化学薬品とアルミニューム粉末と酸化鉄が入っている。つまり成分は、アルミニューム粉末と二酸化鉄と耐熱材と保温材を混合し熱風乾燥した物で鋳造用スリーブと呼ばれる商品だと語った。その後、そこにある溶接で使う手持ち型の溶接用メガネ突き仮面を使えと言った。

 それを装着し、じゃー、いくぞと言い、ガスバーナーに火をつけて、その鋳造用スリーブに火をつけると白煙を上げ激しい勢いで燃え始めた。工場長は、もう片方の手でピストルのような形の温度測定装置をその一番明るい所に向けた。10分足らずで終了し、ピストルのような装置の温度みて数値を書き込んだ。これは、1620℃で合格!

 これが、1600℃以下が、不良品で、その品質管理をしているのだと言い、自分は、品質管理者と工場長を兼務してるいると話した。もう20年近く、毎日、この退屈な仕事をしていると、自嘲気味に笑った。実は、私は、この工場から30分程の理髪店の女性の実家に婿養子として入り、この仕事を続けると語った。

 大学はと聞くと、日本大学理工学部工業化学科と話した。そして、また、工場長室に上がり、どうだ、ここで、働く気になったかと聞かれ、面白そうですねと伝えると、そうか、期限付きの新製品開発で、大変だけれど、やりがいは、あるぞと言われた。工場の奥の庭に3つの長屋形式の8畳和室の1Kの平屋の3部屋ある。

 さらに、来客用、兼、妻帯者用の2LDKの妻帯者用の社宅も1つあると言った。風呂は、外に、従業員と兼用の大きな風呂があった。近くから来てる工場に勤務してる人で希望者は、現場作業が終わる17時過ぎに風呂に入ってから自宅に帰れると語った。工場の人達のほとんどの人は、風呂に入ってから、家に帰ると言い40才以上の男性ばかりだと言った。

 発送と事務に女性が計3人いると言い、それに知恵遅れの2人の男の子も働いてると教えてくれた。この誠実そうな工場長を見てると信用できる感じがした。さらに試製品の商品開発か、実に、やりがいのある仕事だと思い、武者震いがした。こんな経験は、なかなか出来ないと思い、清水は、ここで働きたいと思ってしまった。

 その後、工場内にある大きめな実験室と社宅を見せてくれた。清水が、筆記試験と面接試験はと、聞くとない。君が、働いてくれるかどうかだけだと笑いながら言うので、是非、この仕事に挑戦したいというと、あー良かった。やっと引き受ける若者が来てくれたと本音を吐露した。清水は、技術関係のスタッフは、と聞くと、山内技術課長がいると話した。

 彼は、技術部長として中央大学の夜学部の機械科を卒業。今日は、用事があって、東京の本社に出かけていると告げた。社長も日本のこの業界を代表する科学者だと打ち明けた。そんな話をしていると17時を過ぎ、18時に事務所を閉め鍵をかけ小柄な里村営業課長が、帰ってきて、工場長と清水を乗せて、工場長の住む理髪店に送った。

 そこで、自己紹介すると若い人が入ったのねと喜んでくれた。その晩、夕食後、清水は、多くの質問を受け答えし歓談。楽しい時を過ごし、22時過ぎ眠りについた。翌朝、8時に、昨日の里村さんが迎えに来てくれ、最初に、清水を最寄り駅まで200分位で送ってくれた。その時、入社、決定で良いねと清水に工場長が聞くので結構ですと伝えた。

「これを聞いた里村さんが麻雀できるか聞かれいいえと答えると、これから、じっくりと、教えるからやろうと言った」
 それを聞いて、是非お願いしますと答えた。1976年9月の日曜、今度の会社の発送の以前面会した茨城弁の逆井さんが、早朝、清水の家に4t車でやってきた。

 そして、清水の荷物をトラックの荷台にのせた。その後の16時に工場の社宅に到着し、荷物を部屋の中に運び込んでくれ、18時には、引っ越しが完了。その後、工藤工場長や里村課長、山内技術課長と近所の従業員など総勢20人の会社の皆さんに、清水が、挨拶した。
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