第1話:熊坂の女との別れと山里さんとの出会い

文字数 2,097文字

 熊坂俊茂は、横浜の農家の三男として1942年3月に生まれて、実家で野良仕事をしていた。
「しかし、農業だけでは、十分に食べていけなかった」
「1956年、港に入る貨物船の荷物を下ろす仕事や船員の持ち込む酒や免税品を店で働いた」
「アルバイトで日銭を稼いで、貧しい実家に食べ物を買って帰った」

「こうして1957年3月中学卒業後、横浜港の近くの海外製品を売る店に入った」
「そこで習った英語で船員から免税品を安く買う仕事を手伝った」
「ちなみに船員には、一定の数の海外製の商品に対して免税される特権がありそれを利用した」
「数が限られたので大勢の船員にハウマッチと言い船員から極力安く免税品を買い取った」

「例えば50ドルを希望するならアンダー50ドルOKと伝えた」
「その後、為替手数料なし日本円で支払った。これは、厳密に言うと違法である」
「しかし、船員のとっては、好評で、安く免税品を買うことができた」
「取り扱う品物は、コニャック、ブランデー、ワインなど酒」

「その他、ブランド製の紅茶、タバコ、バッグ、サングラスなどであった」
「中には、成人用雑誌も含まれ、それが大量に手に入り店の倉庫の段ボールに隠した」
「そして金持ちそうな日本人に見せると高額で売れ、これが一番儲けになった」
「しかし、完全に違法なので、絶対に買った店を明かすなと言明した」

「そのうち金ができ熊坂俊茂は、飲み屋に出入りするようになった」
「熊坂俊茂は、日本人にしては、体が大きく老け顔だったので成人に見えた」
「飲み屋に入り、店の女、佐藤明美と仲良くなりアパートに転がり込んだ」
「熊坂俊茂は、免税店で外人さんと話をして何とか会話できるようになった」

「そのうち外人さんから教会へ行こうと誘われ出かけるようになった」
「教会では、温かいスープとパンやケーキと紅茶、珈琲をいただいた」
「日常英会話ができるので外人さん達に可愛がられチョコレートやお菓子ももらった」
「金は、身につけず貯まるとしっかり銀行に預ける様にしていた」

「また、教会へ行ってミサの後の食事を目当てに毎週日曜礼拝に参加した」
「そのため、英会話が飛躍的に上手になり1967年になると通訳まがいの仕事を始めた」
「この頃、既に10万円余の預金を持っていた」
「この頃、同棲していた飲み屋の女、佐藤明美が食べたものを吐く様になった」

「あまりひどいので社会保険横浜中央病院について行き受診させた」
「すると胃がんとわかり先生に処置なしと言われた」
「それを聞き明美は、放心状態になり気がふれたようになった」
「そして、病院受診の1週間後の寒い朝、病院のベッドで冷たくなっていた」

「医者を呼ぶと死亡と言われ火葬場を探し横浜港が見えるお寺に埋葬してもらった」
「熊坂俊茂は、蓄えた金の半分を使い世話になった女のためにできるだけのことをした」
「子供たちは、何もわからず、きょとんとしていた」
「しかし、乳が欲しくなるとお母ちゃんは、と聞くので天に召されたと伝えた」

「そして、湯を沸かして森永の人工乳を飲ませ続けた」
「こうして、ごはんを食べられるようになっていった」。
「しかし、お母ちゃんと夜泣きするのには、参った」
「その後、近くのおばさんが、施設に預けた方が良いと言われた」

「そこで頻繁に通っている教会で聞くと本牧の方にキリスト教の施設があると教えられた」
「教え得られた教会の施設に通っている教会の人と共に出かけた」
「そして、教会の人から子供を世話できないので世話して欲しいと頼んでもらった」
「すつと書類を持ってきて連絡先と電話番号を各欄があった」

「しかし、電話は。持ってないので、いい加減な電話番号と住所を書いた」
「その後、何も連絡がないので、その施設に出かけることがなくなった」
「そんな、1969年のある日、40歳位の小柄なおじさんに出会った」
「君は何をしてるのかと呼び止められた」

「そこで、外人相手にの商売で稼いでいると言うと驚いた」
「そして、そのおじさんが、私は、戦争で女房と子供を亡くした」
「自分だけが体が弱かった。そのせいで兵隊にも行けずに行き残ったと打ち明けた」
「家族はと聞くと空襲の下、逃げ惑っている時に女房と娘、息子が爆弾でやられた」

「そう言うと涙を流した。そのおじさんが、山里哲彦と名乗った」
「算盤が上手で主に金融機関で経理の仕事をしていたと述べた」
「山里さん家は、繁華街から徒歩30分の周辺に民家が少ない高台で墓地の近く」
「さらに、公園が近い、1軒家で空襲を免れたと語った」

「特に忙しくもなかったので週に数回、おじさんの家に遊びに行った」
「そこで食事をご馳走になり、おじさんも1人で食べるより2人の方が楽しいと喜んだ」
「山里さんが、君は、何が得意かと聞くと記憶力かなと答えた」
「外人さんと話すうちに英会話を覚えたと言うと英語をしゃべって見ろと言われた」

「こんにちは『ハロー』、さようなら『グッバイ』会えて嬉しい『ナイス、ミュチュー』」
「チョコレートが欲しい『ギブ・ミー・チョコレート』」
「さらに、高すぎるからもう少し安くしてよ」
『「トゥー・エクセペンシブ、プリーズ、ディスカウント、ア、リトル」
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