第3話 ニュージーランドはヒッチ天国

文字数 894文字

 さて、ニュージーランド来訪の当初の目的であったラグビー観戦は昨日たっぷりと楽しんだ(本題と関係ないので割愛します)。
 そうなると、いつまでもオークランドに留まる理由もなくなったので、これからが本当の旅の始まりである。

 とは言ったものの、ぼくはまるで旅の予習というものをしてこなかったので、いったいどこにどのようにして行けばいいのだろう、としばし悩んでしまった。
「ま、いっか」
 どうしたら次の街に行けるのかさえも分からないまま、歩き出す。

 ニュージーランド人は親切な人が多く、ただ荷物を背負って歩いているだけで、沢山の人たちが話しかけてきてくれて、道を教えてくれた。あるおじさんなんか、わざわざ家に帰って地図を持ってきて、ぼくにくれた。

「いいか、この大きな道路まで出たら、腕をこういう風に上げるんだ。親指を一本立ててな。やってみろ」
「こう?」
「そうそう」
 わけが分からぬまま言われた通りにした。目の前で車が止まった。
「どこまで行くの?」
 助手席から顔を出したきれいなブロンド髪のお姉さんが、ニコニコしながらそう言った。こ、これは、つまり……、ヒッチハイクじゃないか。

 えっと、次のユースホステルがある町は、と……、あった。
「ハミルトン」
「エッ?」
「ハミルトン」
「…………?」

 ダメだ、通じない。ぼくは仕方なく、貰ったばかりの地図を指で示した。
「オーケー、HAMIRTONね。じゃあハントリーとの分かれ道まで乗せてあげよう」
 運転をしていたお姉さんの彼氏らしいお兄ちゃんが言った。
 途中彼女たちはいろいろな話をしてくれたのだが、ちーっとも分からなかった。「センキュー」と言って車を降りる。あー疲れた。トボトボと歩いていると、今度は手も挙げていないのに一台の車が止まった。
「どこまで行くんだい?」
「ハモルトン」
「オレもだ。乗りな」

 おお、イントネーションを変えたら通じた。そしてなんとさっきまで移動の仕方さえも分からなかったぼくが、こんなにも簡単に、しかもただで! オークランドの南二十六キロの街、ハミルトンにたどり着いてしまったのだ。
 ニュージーランド、バンザイ!
 ホント、いい国だよなぁ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み