希望
文字数 1,376文字
二月半ばに回覧板で新しい集会所を維持するための町内役員とボランティアの募集がされた。年に数回の合同作業日のほかに、ボランティアは誰でも自主的に庭の手入れをすることができること、ボランティアになるには事前研修に出席することが必要なことなどが書かれていた。ボランティア希望の登録欄はすでにたくさんの人の名前で埋まっていた。
その中には茜里と茜里のママの名前もあった。
「ママ、マユミさんのお庭のボランティアのことなんだけど。」
夕飯を食べながら美緋絽が切り出した。
「ああ、回覧板来ていたわね。美緋絽も登録するんでしょ?」
葵がドレッシングを取りに席を立ちながら言った。
「うん。私は登録するんだけど・・私、ママにも登録してほしいの。」
声にはならなかったけれど、えっ?という驚いた表情で葵は振り向いた。そしてすぐに笑顔になって
「ママにできるかな?」
と美緋絽に肯定を求めるように言った。
「ママはやろうとしたら、なんでもできるじゃん。」
「それはどうかな?でも、美緋絽がそう言うんだったらやるしかないでしょ!」
うれしそうにそして力強くうなずき、急いで回覧板を取ってくるとドレッシングをほったらかして研修の日を確認し始めた。
そんな葵の様子を見ながら美緋絽はほっとしていた。美緋絽はボランティアのことを知ってから、葵と一緒にできたらとひそかに思っていた。けれど、どんな風に言えばいいのか悩んでいた。一体、葵は庭仕事が好きなのだろうか?よくわからなかった。美緋絽は拒絶されることが怖かった。でもマユミの庭で、もし葵と一緒に花がら摘みができたら、それはきっと楽しいだろうと思った。そして、悩んだ末に、美緋絽は素直にそのままの言葉で伝えることを選んだ。その日の夕食は花の話でいっぱいになった。
その週末、美緋絽は茜里とマユミの庭にいた。最近は気温が少しずつ上がってきて、花壇に植えたパンジーの株もずいぶんしっかりとして花の数も増えてきていたので、花がら摘みも忙しくなってきていた。マユミは花壇を二人にまかせ、門扉の内側の草取りをしていた。そこへ葵が畳半畳ほどの大きな荷物を持ってやってきた。
「こんにちは。これ、頼まれていたカーテン。」
マユミは新しい家にかけるカーテンを葵に注文していた。
「あら、葵さんありがとう。ずいぶん早くできたのね。ふふふ、どんな感じになるか、かけるのが楽しみだわ!」
マユミは葵に気づくと葵の正面に進み出て、優しい微笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「この家が残るように葵さんが市に進言してくれたんですって?」
「私は・・自分が思ったことを市に伝えただけよ。多分他にも私と同じ様に思っていた人がたくさんいたんだと思うわ。」
マユミ目をうるませながら黙って頭を下げた。そして顔を上げると、いつもの笑顔でウィンクをしながら言った。
「そろそろお茶の時間にしようと思っていたところなの。葵さんも一緒にどお?」
「まあ、うれしい!お相伴にあずかろうかしら。」
軍手を外し家に入ろうとして、ふとマユミは花がら摘みの作業をしながらにぎやかに話す二人の様子を見てつぶやいた。
「椿子さんに見せたかったわね。妖精がやって来て、椿子さんの願いをかなえたわよ。」
「椿子さん、てこの家の亡くなった娘さんね。願いをかなえてもらったのは美緋絽だわ。それから・・・私。」
葵が微笑みながら静かに言った。
その中には茜里と茜里のママの名前もあった。
「ママ、マユミさんのお庭のボランティアのことなんだけど。」
夕飯を食べながら美緋絽が切り出した。
「ああ、回覧板来ていたわね。美緋絽も登録するんでしょ?」
葵がドレッシングを取りに席を立ちながら言った。
「うん。私は登録するんだけど・・私、ママにも登録してほしいの。」
声にはならなかったけれど、えっ?という驚いた表情で葵は振り向いた。そしてすぐに笑顔になって
「ママにできるかな?」
と美緋絽に肯定を求めるように言った。
「ママはやろうとしたら、なんでもできるじゃん。」
「それはどうかな?でも、美緋絽がそう言うんだったらやるしかないでしょ!」
うれしそうにそして力強くうなずき、急いで回覧板を取ってくるとドレッシングをほったらかして研修の日を確認し始めた。
そんな葵の様子を見ながら美緋絽はほっとしていた。美緋絽はボランティアのことを知ってから、葵と一緒にできたらとひそかに思っていた。けれど、どんな風に言えばいいのか悩んでいた。一体、葵は庭仕事が好きなのだろうか?よくわからなかった。美緋絽は拒絶されることが怖かった。でもマユミの庭で、もし葵と一緒に花がら摘みができたら、それはきっと楽しいだろうと思った。そして、悩んだ末に、美緋絽は素直にそのままの言葉で伝えることを選んだ。その日の夕食は花の話でいっぱいになった。
その週末、美緋絽は茜里とマユミの庭にいた。最近は気温が少しずつ上がってきて、花壇に植えたパンジーの株もずいぶんしっかりとして花の数も増えてきていたので、花がら摘みも忙しくなってきていた。マユミは花壇を二人にまかせ、門扉の内側の草取りをしていた。そこへ葵が畳半畳ほどの大きな荷物を持ってやってきた。
「こんにちは。これ、頼まれていたカーテン。」
マユミは新しい家にかけるカーテンを葵に注文していた。
「あら、葵さんありがとう。ずいぶん早くできたのね。ふふふ、どんな感じになるか、かけるのが楽しみだわ!」
マユミは葵に気づくと葵の正面に進み出て、優しい微笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「この家が残るように葵さんが市に進言してくれたんですって?」
「私は・・自分が思ったことを市に伝えただけよ。多分他にも私と同じ様に思っていた人がたくさんいたんだと思うわ。」
マユミ目をうるませながら黙って頭を下げた。そして顔を上げると、いつもの笑顔でウィンクをしながら言った。
「そろそろお茶の時間にしようと思っていたところなの。葵さんも一緒にどお?」
「まあ、うれしい!お相伴にあずかろうかしら。」
軍手を外し家に入ろうとして、ふとマユミは花がら摘みの作業をしながらにぎやかに話す二人の様子を見てつぶやいた。
「椿子さんに見せたかったわね。妖精がやって来て、椿子さんの願いをかなえたわよ。」
「椿子さん、てこの家の亡くなった娘さんね。願いをかなえてもらったのは美緋絽だわ。それから・・・私。」
葵が微笑みながら静かに言った。
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