第17話 ママチャリ300kmの旅 その11
文字数 1,203文字
静岡の地に辿り着いた私。愛知県はもう隣である。(ただし、距離にして170km以上も先である)
私は最短ルートを捨て、高原地帯を下降した。
これが功を奏し、雪による苦難を脱することができた。道には障害らしきものはなく通常で、白線の外側のスペースもあれば歩道もある。なんならときおり歩道が広い。
まさか歩道の広さに心動かされるとは。
道のりの具合としては、海側の道路をおおむねまっすぐ走るコースとなる。
東海道新幹線の南側を沿って走るような感じだ。
道としてはとくに複雑なものはない。
……道としては。
私は自転車を漕ぐ。東から西に向かって。
漕いで漕いで漕ぎまくるのだが、ぜんぜん進まない。理由は、一つ。
今度は、『風』が立ちはだかった。
雪の次は、風か。またしても自然が私に喧嘩を売ってくる。
話はそれるが、そのとき走っている道は大通りで、恒例となった大型トラックだけでなく、ほかにも多種の車が走っている。何が言いたいかというと、この場所を目的とする人もいるということだ。実際、大通りにはいろんな店が立ち並んでおり、それが一か所だけに固まっているのではなく、店と店との隙間はあるものの、大通りに沿うように多くの建物が点在している。
しかしそれは大通りに面した場所に限った話であり、建物の合間から奥をのぞけば、そこには山を背景にした枯れ色の田畑が一面に広がっている。くわえてビルのような高い建物はない。
話を戻して。
私が何を言いたいのかというと。
非常に風通しのよい土地となっている。
しかも海側もあってか、季節もあってか、それとも偏西風のせいなのか、風が異様に強い。そしてさきほど説明した通り、私は東から西へ向かっている。
それらすべてをひっくるめた『追い風』を食らいながら、走らなければならなかった。
そりゃ進むわけがない。
皆様はこんな経験をしたことがあるだろうか。
自転車で立ち漕ぎしているのにバックしてしまう経験を。
私は、このときに経験した。
道を急ぐために立ち漕ぎしようとしたらタイミングよく強風に吹かれ、まるで船の帆のように風を全身で浴びてしまい、立ち漕ぎをしているにもかかわらず自転車の車輪は完全に停止。そのとき私は道の都合もあって右側の歩道を走っていた。自転車に立ち漕ぎしながら停車している私の横を、大型トラックが走り抜けた。
数cmほど、視界が下がった。
自転車を立ち漕ぎして後退したのは、後にも先にもこのときだけだ。
私は立ち漕ぎをやめ、風の強いところでは座って漕いだほうが進めることを知った。
ただ座っても風の抵抗がなくなったわけではなく進行には時間を要した。すると前日よりも早く脚が音をあげだす。それもそうだ。前準備もなく自転車で100kmを走破した脚の筋肉痛や疲労が、一晩で抜けるわけがない。しかし進行具合も芳しくない。
ここからは、忍耐力が肝となる。
つづく
私は最短ルートを捨て、高原地帯を下降した。
これが功を奏し、雪による苦難を脱することができた。道には障害らしきものはなく通常で、白線の外側のスペースもあれば歩道もある。なんならときおり歩道が広い。
まさか歩道の広さに心動かされるとは。
道のりの具合としては、海側の道路をおおむねまっすぐ走るコースとなる。
東海道新幹線の南側を沿って走るような感じだ。
道としてはとくに複雑なものはない。
……道としては。
私は自転車を漕ぐ。東から西に向かって。
漕いで漕いで漕ぎまくるのだが、ぜんぜん進まない。理由は、一つ。
今度は、『風』が立ちはだかった。
雪の次は、風か。またしても自然が私に喧嘩を売ってくる。
話はそれるが、そのとき走っている道は大通りで、恒例となった大型トラックだけでなく、ほかにも多種の車が走っている。何が言いたいかというと、この場所を目的とする人もいるということだ。実際、大通りにはいろんな店が立ち並んでおり、それが一か所だけに固まっているのではなく、店と店との隙間はあるものの、大通りに沿うように多くの建物が点在している。
しかしそれは大通りに面した場所に限った話であり、建物の合間から奥をのぞけば、そこには山を背景にした枯れ色の田畑が一面に広がっている。くわえてビルのような高い建物はない。
話を戻して。
私が何を言いたいのかというと。
非常に風通しのよい土地となっている。
しかも海側もあってか、季節もあってか、それとも偏西風のせいなのか、風が異様に強い。そしてさきほど説明した通り、私は東から西へ向かっている。
それらすべてをひっくるめた『追い風』を食らいながら、走らなければならなかった。
そりゃ進むわけがない。
皆様はこんな経験をしたことがあるだろうか。
自転車で立ち漕ぎしているのにバックしてしまう経験を。
私は、このときに経験した。
道を急ぐために立ち漕ぎしようとしたらタイミングよく強風に吹かれ、まるで船の帆のように風を全身で浴びてしまい、立ち漕ぎをしているにもかかわらず自転車の車輪は完全に停止。そのとき私は道の都合もあって右側の歩道を走っていた。自転車に立ち漕ぎしながら停車している私の横を、大型トラックが走り抜けた。
数cmほど、視界が下がった。
自転車を立ち漕ぎして後退したのは、後にも先にもこのときだけだ。
私は立ち漕ぎをやめ、風の強いところでは座って漕いだほうが進めることを知った。
ただ座っても風の抵抗がなくなったわけではなく進行には時間を要した。すると前日よりも早く脚が音をあげだす。それもそうだ。前準備もなく自転車で100kmを走破した脚の筋肉痛や疲労が、一晩で抜けるわけがない。しかし進行具合も芳しくない。
ここからは、忍耐力が肝となる。
つづく