『見誤り』(短編小説/そばえ著)
文字数 606文字
息を潜めて機会を伺っている。
…潜めているはずなのだが標的からの圧力は拭いきれない。恐怖は時間が経つにつれて消えるどころか増している。
殺さなければいけない相手でなければ逃げ出している。足は恐怖に怯え始めているが今の私には関係の無い話。
構えているのはライフル。距離は500メートル。相手からはすぐには届きようのない場所でかつ、私の最も得意な距離だ。
相手がその場に座った。私は運がいい。標準の中心に標的の脳天がドンピシャで来てくれたのだから。
あとは引き金を引くだけ。
引くだけ。
「なん、で」
私は引き金を引けなかった。
標的はスコープに映っている。
このまま引き金を引けば終わる。
終わるはずなのだが、手が動かない。
私の体中に巡ってきた恐怖か、はたまた警戒心や今までの経験によるものか。
息が途端に荒くなる。
何故だ。
何故なんだ…。
おかしい。
そんなはずはない。
私の標準は確かにあの男を捉えている…!
なのに
「なんで伏せてる君の近くに僕の気配がするのかって?」
「嘘、だ…」
首。
恐らく首へと敵の凶刃が突き刺さる。
正確にはギロチン。
斬首されたと言ってもいい。
即死のはずの私は最期に彼の言葉を聞いて絶命した。
ーーーー恐れ(いい)顔で死んでくれてありがとう
(三題噺)
《君・息・嘘》
「君は息を吐くように嘘をつく」とは言わずに描け
by 姫宮未調
…潜めているはずなのだが標的からの圧力は拭いきれない。恐怖は時間が経つにつれて消えるどころか増している。
殺さなければいけない相手でなければ逃げ出している。足は恐怖に怯え始めているが今の私には関係の無い話。
構えているのはライフル。距離は500メートル。相手からはすぐには届きようのない場所でかつ、私の最も得意な距離だ。
相手がその場に座った。私は運がいい。標準の中心に標的の脳天がドンピシャで来てくれたのだから。
あとは引き金を引くだけ。
引くだけ。
「なん、で」
私は引き金を引けなかった。
標的はスコープに映っている。
このまま引き金を引けば終わる。
終わるはずなのだが、手が動かない。
私の体中に巡ってきた恐怖か、はたまた警戒心や今までの経験によるものか。
息が途端に荒くなる。
何故だ。
何故なんだ…。
おかしい。
そんなはずはない。
私の標準は確かにあの男を捉えている…!
なのに
「なんで伏せてる君の近くに僕の気配がするのかって?」
「嘘、だ…」
首。
恐らく首へと敵の凶刃が突き刺さる。
正確にはギロチン。
斬首されたと言ってもいい。
即死のはずの私は最期に彼の言葉を聞いて絶命した。
ーーーー恐れ(いい)顔で死んでくれてありがとう
(三題噺)
《君・息・嘘》
「君は息を吐くように嘘をつく」とは言わずに描け
by 姫宮未調