(二)-18

文字数 321文字

「きちんとプロポーズして欲しいの」
「今のじゃ、ダメ?」
「ダメ。……実はね、私が生まれ育った地方に伝わる、プロポーズの方法があるの」
「どんな方法?」
「冬の凍った湖に入りながらプロポーズするの」
 滝沢は、あり得ないといった苦笑いで「バカ言うなよ」と言った。
「本気よ」
 実の父がまだ生きていた頃、私はこの地方に住んでいた。物心ついたときからここの近くの村で暮らしていたのだ。この地方には大きな山の東側にあり、冬季でも比較的雪は少なめであったが、真冬には気温は昼間でも氷点下のままだった。そのような中、村では真冬にお祭りをしていた。規模は大きくなく、観光客が来ることもないため、世間一般には全く知られていないが、奇祭といってもよい祭りだった。

(続く)
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