絶対者の的確な問題発言 2
文字数 1,455文字
絶対これマトモなこと言わないヤツだ。
長い付き合いとは言えないが、それなり密な付き合いをしてきたカインにはわかる。こういう時のケテルは、腹立たしい位に予想を裏切らない。
大広間の解析士たちに視線を戻したケテルが楽しそうに言う。
「何かにぶつかりたいなら、一撃で己を潰せるくらいに力量差がある相手にしろ。勝てるかもしれぬ、なんて程度の相手に勝てそうな条件を揃えた喧嘩しか売れないような覚悟しかないなら、その時間を己の鍛錬に回せ。このオレのすることに不満があるなら、オレに直に来い! どういう理由だろうが、相手をしてやろう」
くっくっくと、完全に悪者側の笑みを浮かべてケテルが両手を広げる。
その演技がかった仕草も、この男がするなら様になるのが不思議だった。
見た目の美しさがそうさせるのか、全身から溢れ出している威厳だかのせいか。ただ、解析士たちには王のように見えているだろうこのセフィラも、カインには魔王のように見えているが。
ここまで言われたってケテルにぶつかる奴なんかいないのは明らかだった。本殿はそういう場所だ。
そう思うカインの目の前で、ケテルは付け加えるように言う。
「オレは、分不相応にもオレに立ち向かう程度に気概のある奴を嫌うことは無いからな」
それは貴様らも、もう理解しているはずだろう。
ケテルの言葉が何を指しているか、分からないほど愚鈍な人間はこの場にいなかった。
毎日のように朝から夕までケテルが本殿で繰り広げていたカインとの応酬を、一度も見たことがない者などいないのだから。
その言葉に、彼らは間違いなくカインの存在を思い浮かべている筈だ。
分不相応にも補佐にされ、セフィラに対して一歩も引かない態度で喧嘩のようなやりとりをしているのにも関わらず、解雇される様子がない解析士未満の新参者を。
「そして、それ故に」
ニヤニヤと、笑いを堪えきれないといった様子でケテルは続ける。
「オレは、貴様らが、現在のオレの補佐に解析で喧嘩を売るのを止める気はないぞ」
ここで初めて大広間に大きなざわめきが起きた。
というか、カイン自身も思わず突っ込んでいた。
「いや止めろや!」
残念ながら拡声されてないカインの声は、ざわめきに飲み込まれて大広間の方には全く届いていないようだったが、一番近い場所……壇上には届いたらしい。
広間の者たちからもはっきり分かるくらいの一瞥を寄越したケテルが、偉そうに腕組みをして鼻で笑う。
「止める必要などない。さっきも言った通り、どうしようもない力量差がある喧嘩は止めぬ。貴様らがいかに解析を組もうが、奴には届かんからな。いくらでも試せばいい」
これだけ人を集めて何を言い出してんだお前。
自分の補佐を守るどころか敵意を扇動するような言動をする上司を、今すぐ殴りに行きたいのをぐっと堪える。
昨日の夜の話し合いもある……アホだけど嘘はつかない奴の発言なのだから、きっと何か思惑があっての言葉のはずだ。
(って、そういや昨日は)
ここにきてやっと、カインは昨日のケテルの言葉を思い出した。
『この名に誓って、貴様の弟たちに、2度と危害は及ばせん』
そういえば昨日ケテルが保証したのはあくまで弟たちの安全である。
カインの身の安全など、最後まで一切言及してない。
「……え、つまりそういうことなのか?」
思わず間抜けに呟いてしまった。さすがにこれは壇上まで届くほどの声ではなかったが、口の動きや表情で何を言ったのかは伝わったのかもしれない。
壇上のケテルが、呆れたように小さな息を吐いた。
長い付き合いとは言えないが、それなり密な付き合いをしてきたカインにはわかる。こういう時のケテルは、腹立たしい位に予想を裏切らない。
大広間の解析士たちに視線を戻したケテルが楽しそうに言う。
「何かにぶつかりたいなら、一撃で己を潰せるくらいに力量差がある相手にしろ。勝てるかもしれぬ、なんて程度の相手に勝てそうな条件を揃えた喧嘩しか売れないような覚悟しかないなら、その時間を己の鍛錬に回せ。このオレのすることに不満があるなら、オレに直に来い! どういう理由だろうが、相手をしてやろう」
くっくっくと、完全に悪者側の笑みを浮かべてケテルが両手を広げる。
その演技がかった仕草も、この男がするなら様になるのが不思議だった。
見た目の美しさがそうさせるのか、全身から溢れ出している威厳だかのせいか。ただ、解析士たちには王のように見えているだろうこのセフィラも、カインには魔王のように見えているが。
ここまで言われたってケテルにぶつかる奴なんかいないのは明らかだった。本殿はそういう場所だ。
そう思うカインの目の前で、ケテルは付け加えるように言う。
「オレは、分不相応にもオレに立ち向かう程度に気概のある奴を嫌うことは無いからな」
それは貴様らも、もう理解しているはずだろう。
ケテルの言葉が何を指しているか、分からないほど愚鈍な人間はこの場にいなかった。
毎日のように朝から夕までケテルが本殿で繰り広げていたカインとの応酬を、一度も見たことがない者などいないのだから。
その言葉に、彼らは間違いなくカインの存在を思い浮かべている筈だ。
分不相応にも補佐にされ、セフィラに対して一歩も引かない態度で喧嘩のようなやりとりをしているのにも関わらず、解雇される様子がない解析士未満の新参者を。
「そして、それ故に」
ニヤニヤと、笑いを堪えきれないといった様子でケテルは続ける。
「オレは、貴様らが、現在のオレの補佐に解析で喧嘩を売るのを止める気はないぞ」
ここで初めて大広間に大きなざわめきが起きた。
というか、カイン自身も思わず突っ込んでいた。
「いや止めろや!」
残念ながら拡声されてないカインの声は、ざわめきに飲み込まれて大広間の方には全く届いていないようだったが、一番近い場所……壇上には届いたらしい。
広間の者たちからもはっきり分かるくらいの一瞥を寄越したケテルが、偉そうに腕組みをして鼻で笑う。
「止める必要などない。さっきも言った通り、どうしようもない力量差がある喧嘩は止めぬ。貴様らがいかに解析を組もうが、奴には届かんからな。いくらでも試せばいい」
これだけ人を集めて何を言い出してんだお前。
自分の補佐を守るどころか敵意を扇動するような言動をする上司を、今すぐ殴りに行きたいのをぐっと堪える。
昨日の夜の話し合いもある……アホだけど嘘はつかない奴の発言なのだから、きっと何か思惑があっての言葉のはずだ。
(って、そういや昨日は)
ここにきてやっと、カインは昨日のケテルの言葉を思い出した。
『この名に誓って、貴様の弟たちに、2度と危害は及ばせん』
そういえば昨日ケテルが保証したのはあくまで弟たちの安全である。
カインの身の安全など、最後まで一切言及してない。
「……え、つまりそういうことなのか?」
思わず間抜けに呟いてしまった。さすがにこれは壇上まで届くほどの声ではなかったが、口の動きや表情で何を言ったのかは伝わったのかもしれない。
壇上のケテルが、呆れたように小さな息を吐いた。