一刀両断(2)
文字数 601文字
「最近、仕事が減っている気がするな。私の力不足なら、颯斗に謝りたいところだ」
いつものように事務所に出社してきた日毬は、俺と相対するなり殊勝に謝罪の言葉を口にした。
実際、仕事が急激に干上がったので、ここ数日は日毬と出かけることがない。それを日毬は自分のせいだと思い込んでいるのだ。
「日毬のせいじゃない。俺の力量が足りないだけだ。今が飛躍のチャンスなのに、ここ一番で日毬をプッシュできない自分の力のなさを情けなく思ってるよ」
「颯斗が謝る必要などないのだ。私にできることなど、一人で街頭演説するのが関の山だったのに……颯斗が私を救い出してくれたのだからな。私にとって颯斗は、なくてはならない人なのだ」
自分の言葉に日毬はハッとしたようで、目を伏せる。
「……颯斗が必要なのは……その……せ、政治活動のためにだぞ……」
自分に言い聞かせるように、上気しながら日毬は言った。
俺はプレッシャーを感じた。もともと日毬を売り出そうと提案したのは俺であって、オヤジに打ち勝ってやろうとする自分の目的にも添ったものだった。それがフタを開けてみれば、業界大手に吞み込まれる寸前で、日毬のプロデュースに暗雲がたちこめている。
もちろん今も営業努力を続けているし、アステッドとの関係さえ修復できれば、すぐにでも前の仕事に復帰できるはずだった。
なんとか逸れた軌道を修正して、日毬を安心させてやりたかった。
いつものように事務所に出社してきた日毬は、俺と相対するなり殊勝に謝罪の言葉を口にした。
実際、仕事が急激に干上がったので、ここ数日は日毬と出かけることがない。それを日毬は自分のせいだと思い込んでいるのだ。
「日毬のせいじゃない。俺の力量が足りないだけだ。今が飛躍のチャンスなのに、ここ一番で日毬をプッシュできない自分の力のなさを情けなく思ってるよ」
「颯斗が謝る必要などないのだ。私にできることなど、一人で街頭演説するのが関の山だったのに……颯斗が私を救い出してくれたのだからな。私にとって颯斗は、なくてはならない人なのだ」
自分の言葉に日毬はハッとしたようで、目を伏せる。
「……颯斗が必要なのは……その……せ、政治活動のためにだぞ……」
自分に言い聞かせるように、上気しながら日毬は言った。
俺はプレッシャーを感じた。もともと日毬を売り出そうと提案したのは俺であって、オヤジに打ち勝ってやろうとする自分の目的にも添ったものだった。それがフタを開けてみれば、業界大手に吞み込まれる寸前で、日毬のプロデュースに暗雲がたちこめている。
もちろん今も営業努力を続けているし、アステッドとの関係さえ修復できれば、すぐにでも前の仕事に復帰できるはずだった。
なんとか逸れた軌道を修正して、日毬を安心させてやりたかった。
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