第03章(2)

文字数 599文字

「ミツル、それは本当か? アニタさんが……、ここに来たって」
「本当だよ」
 リーフィ村の一室。
 ミツルが帰ってきて柚に零したのは、ツツジの首領の妻が来たという事実だ。
 アニタは脅してきたのだ。エレン姫を殺せ。
 さすれば、ツツジの里に帰れるという。
「そんなこと、出来るか。エレン姫はとても良い人だ。俺にでさえも、笑顔を向けてくれたじゃないか」
 ツツジの里ではいつも肩身の狭い思いをしていた柚にとって、エレンの笑顔は眩しいものだった。
「じゃあ、姉さんは、ツツジの里を裏切るの?」
「ツツジの里は何をしてくれた。親や俺達を蔑ろにしてたじゃないか。裏切るも何も、あの場所に俺達の居場所はもう無いよ」
 それを聞いて、ミツルはそんな柚に憤りを感じた。
 自分はツツジの里に帰って、暮らしたい。それなのに。
「姉さんは裏切るんだ」
「ミツル、エレン姫を殺すのは止めろよ。そんなこと俺が許さないぞ」
「ボクは、ツツジの里に帰りたいよ、帰りたいんだよ! 姉さんの分からずや!」
 そう言い、ミツルはその部屋から立ち去った。





 その夜。
 ミツルは、エレンが身を寄せている家へ向かった。
 毒の入った、饅頭を手にして、向かった。
 しかし勿論、そんな容易く、エレン姫を殺される訳がなく。
 ミツルは、その場で捕まり、柚と一緒に、親シュヴァルツ王国派のマクスウェル家の牢屋に収監されたのだった。
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登場人物紹介

エレン・ディル(16)

シュヴァルツ王国第二皇女の少女。

性格はほのぼの穏やかだが、王女としてのプライドはある。

フェイを心の底から信頼している。

亡国となったシュヴァルツ王国を再建する為に、奮闘する。

フェイ・ローレンス(17)

エレン姫に仕える護衛騎士。

クールで一匹狼だが、面倒見が良い。

エレンの事が好き。

エレンの夢の為に、フェイもまた奔走する。

セレナ・エーデル

ニコラが作った機械人形。

通称・仮初めの姫。

たどたどしく喋るのが印象的。

アレックとニコラを親のように感じている。

アレック・リトナー(20)

おちゃらけている謎の剣士。

セレナとニコラを連れて、旅をしている。

昔はセレナ姫の護衛騎士だった。

セレナ姫と瓜二つのセレナに特別な感情を抱いている。

ニコラ・オルセン(19)

腕の立つ技師。

部乱暴なしゃべり方で心は熱い。

アレックとはなんやかんやで仲が良い。

機械人形・セレナの親的存在。

香月七瀬(16)

ツツジの集落に住んでいた香月家の少女。

今は家出して、ダニエルの元にいる。

明るく元気な性格。

ダニエルの事を少々気になっている様子。

ダニエル・フォン・マクスウェル(25)

若き青紫男爵家領主。

シュヴァルツ王国を再建する為に奔走する。

物腰柔らかで爽やかな性格。

七瀬の事をなんやかんやで信頼している。

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