第3話

文字数 1,157文字

 ある日蘭子様から聞かれた。
「コピー」
「何でしょう」
「何でしょうじゃないわ。あんた、和田と仲良いの?」
「え?」
 あまりにも急に話を振られたので、否定できなかったのだ。
「クラスの女子に言われた。昼休みに2人していなくなるって。一緒にいるの見た人もいるみたいよ」
 私は、やはり蘭子様に内緒にしていたのは悪かったと思い直した。
「仲が良いかはわかりませんが、毎日誘われます」
「そう。唯って何?」
「それは、その」
 私は答えられなかった。蘭子様はそれ以上追求しなかったが、
「勝手な行動しないでくれる?」
 と怒った。
「申し訳ございません」
「何で私が断られなきゃいけないのよ」
 私は、蘭子様が何に怒っているのかわからなかった。
「しばらく私が学校行くわ。あんたに行かせるとろくなことにならない」
 やはり樹君と関わるのはまずかったようだ。
 仕方がない。蘭子様の言うとおりにするしかなかった。

 一週間ほどして、蘭子様に聞かれた。
「コピー、和田君に会いたい?」
 特に会いたいわけでもなかったが、私を待っていると思うと少し気の毒になった。
「お元気でしたら構いません」
「そう」
 蘭子様は少し考えて口にした。
「コピーって呼び方あんまりだって言われたけど、あんた嫌だったの? 唯って呼ばれたい?」
「いえ、私は蘭子様のコピーですので、そんな名前は不要です」
 本心で言った。しかし蘭子様は怒った。
「媚び売っちゃって。嫌になる」
 私は何か蘭子様の気に障ることを言っただろうか。
「媚びとは?」
「本当は私に従いたくなんてないんでしょ? 和田君といちゃいちゃしてればいいじゃない」
「いえ、そんなことは。蘭子様は私を見いだしてくれましたから。私は蘭子様のために存在しているのです。いちゃいちゃとは?」
「もういい。あんたなんか役に立たないから、出ていって」
 蘭子様を本気で怒らせてしまった。
「申し訳ございません。蘭子様。役立たずの私は今すぐ出て参ります」
 私が身の回りの支度をしていると、蘭子様は言う。
「ちょっと待って。やっぱり出て行かなくていい。私が出て行く」
「蘭子様、どちらに?」
「ほっといて。じゃなくて、気にしなくていいから。そのうち帰ってくるわよ」

 蘭子様は出て行ってしまわれた。私はどうすればいいのだろう。
 部屋を掃除し、洗濯をし、食事の準備をしたらやることがなくなってしまった。

 蘭子様はどうされたのだろう。やはり私がおかしなことを言ってしまったせいなのだろうか。蘭子様の気持ちがわからない。
 蘭子様は夕飯の時間にも帰って来なかった。一人の食事は味気ないものだった。

 蘭子様は2日後の日曜日の夜、急に帰ってきて、「やっぱりあんたが学校行って」と言った。
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