カラオケ

文字数 1,029文字

あなたが冷たいか、熱いかであってほしい。黙示録 3:15

俺らは2時間の飲み放題のあと、二次会はカラオケにいった。
みんな恋愛の歌を入れ、熱唱していた。俺は俺にとっての讃美歌、ブルーハーツの情熱の薔薇を歌った。
なるべく小さな幸せと
なるべく小さな不幸せ
なるべくいっぱい集めよう
そんな気持ちわかるでしょ
なんていい歌詞なんだろう。俺は歌詞に酔いしれて、女の娘たちは知らない曲のようだった。
女の娘も飲み会でだいぶ慣れたのか、踊りながら歌ったり、明美ちゃんにいたっては、荒木先輩とデュエットをしていた。荒木先輩は自然に腕を組んで、いやらしさも感じさせない絶妙なノリで歌っていた。「ねえ、ねえ、荒木さんって素敵だね」里奈ちゃんが俺の耳でそう囁いた時、里奈ちゃんの胸が俺の腕にあたりそうになって、英子に悪いことをしたと思った。修行僧とかストイックとか言われよが、何があっても、英子を悲しませないように、キスはももちろんのこと、いろんなことをしないようにと、今日心に誓ったばかりだ。英子が俺に対して、愛していると言ってくれた。英子以外の娘たちのキスなんて、俺にとって、全く価値がない。もう帰って、英子とラインで話がしたい、そう思った時、
「修三歌えよ」上田が笑いながらそう言ったと同時に、
「ディーン!!、トゥトゥ トゥトゥトゥトゥ」から始まる、
ブルーハーツのキスしてほしいが流れた。サビは、「キスしてほしい」を何度も繰り返していた。俺の人生はどこまでも、皮肉だ。今日の今日にどうして、、「キスしてほしい」なんだ。キスしてほしい、そりゃ俺だって、キスしてほしい。俺はそう思いながら、キスしてほしいを連呼した。どうして英子がクリスチャンなんだ、これは運命なのか宿命なのか、聖書で言っている通り、忍耐を過ぎればものすごい祝福を体験するために、俺は選ばれているのか。神様かだれかに本気で教えて欲しい、俺は歌いながらそう願った。でも、誰も教えてくれない。間奏中はすっかり忘れていたが、次のサビは「教えて欲しい」だった。俺はもうアドレナリンが出てきたのか、気づけば白目をむいて「教えて欲しい」を連呼した。また、サビが「キスしてほしい」に戻ると、3人の娘たちを次々に指をさして、
「お前ら!!お前ら!!に!!キスしてほしいっ!!」女の娘たちには大ウケだった。俺は魂の叫びを絶叫というか発狂していた。上田を見ると、笑いころげていた。人生で初めて殺意が生まれた。

おしまい
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登場人物紹介

篠崎修三・・・20歳で初めて出来た彼女がクリスチャンだった。

佐藤英子・・・修三の彼女。3年前にクリスチャンになった。ちなみに修三とは保育園の時の同級生

上田基一・・・修三と同じ大学で同級生の友達。両親がクリスチャンで、小学校に入る前から教会に通い14歳の時に洗礼を受けてクリスチャンとなる。高校に入ったころから、高校3年生あたりから教会生活やクリスチャンに疑問を抱くようになり、大学に入学してから間もなく教会を離れる。現在は彼女、飲み会など遊ぶことが楽しく、教会を離れて良かったと思っている。

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