第12話 船
文字数 637文字
遊覧船のチケットを買って、中へと入る。船は、ぐるりと辺りをまわって、また同じ場所に戻ってくるみたいだった。
「陸が遠ざかってくよ」
「ねー」
しぶきを上げて、船が護岸からどんどん離れていく。力強い動きだ。
「せいちゃん、甲板にでてみよっか」
「行こ行こ!」
客席から階段を上がって、外へと出る。ぶわっと風が吹いて、ちょっとよろめく。思わず、せいちゃんの手を握った。
「ありがと、聖良」
「ううん」
せいちゃんは、身軽だから心配だ。さすがに、とばされるなんてこと、ないと思うけど、一応ぎゅっと結ぶ。
甲板まで出ると、一気に視界が開けた。水が、空が、どこまでも広がる。強い風も止んで、そよそよと吹く風に変わった。
さんさんと太陽が、遮るものなしに降りそそぐ。お日様のシャワーって感じだ。やわらかい日差しが、私を綺麗に洗ってくれてるみたいな、そんな感じ。
「お日様浴びてると、気持ちいいね」
「ねー、なんか落ち着くよね」
セロトニン、さまさまだ。
こうして、何もせずにまったりして、横には、楽しそうなせいちゃんがいて。ただ船が動くにまかせて、水の流れを眺める。ぼーっとする時間に幸せを感じるなんて、少し前の自分には無理だったな、なんて思う。
今は、せいちゃんがいてくれるから、楽しい考え事ができるようになった。この後、何を見ようとか、何食べよう、とか。どんなことしたら、喜んでくれるかな、とか。
「せいちゃん、船を降りたら、お昼にしよっか」
「うん!」
「近くに商店街があるみたいだから、行ってみよ」
「陸が遠ざかってくよ」
「ねー」
しぶきを上げて、船が護岸からどんどん離れていく。力強い動きだ。
「せいちゃん、甲板にでてみよっか」
「行こ行こ!」
客席から階段を上がって、外へと出る。ぶわっと風が吹いて、ちょっとよろめく。思わず、せいちゃんの手を握った。
「ありがと、聖良」
「ううん」
せいちゃんは、身軽だから心配だ。さすがに、とばされるなんてこと、ないと思うけど、一応ぎゅっと結ぶ。
甲板まで出ると、一気に視界が開けた。水が、空が、どこまでも広がる。強い風も止んで、そよそよと吹く風に変わった。
さんさんと太陽が、遮るものなしに降りそそぐ。お日様のシャワーって感じだ。やわらかい日差しが、私を綺麗に洗ってくれてるみたいな、そんな感じ。
「お日様浴びてると、気持ちいいね」
「ねー、なんか落ち着くよね」
セロトニン、さまさまだ。
こうして、何もせずにまったりして、横には、楽しそうなせいちゃんがいて。ただ船が動くにまかせて、水の流れを眺める。ぼーっとする時間に幸せを感じるなんて、少し前の自分には無理だったな、なんて思う。
今は、せいちゃんがいてくれるから、楽しい考え事ができるようになった。この後、何を見ようとか、何食べよう、とか。どんなことしたら、喜んでくれるかな、とか。
「せいちゃん、船を降りたら、お昼にしよっか」
「うん!」
「近くに商店街があるみたいだから、行ってみよ」