第3話

文字数 1,457文字

入院生活は長くて、自分をふりかえるいい訓練だった。ふと大学生活を思うと自分が苦しくてきつい生活を仕方なくしていたことに気づいた。そもそもこの他方の病院にきたのは、偶然だった。あった手の動脈を切ったさい、家にいられず、家族にバレないよう外に出た。要するに門を開けずに横の塀を飛び越えて外へ出たのだ。そこに小さな人影を見た。
「見られた」と思いつつも、ここで走れば怪しい、距離もあったので歩いて小道を通り引き離そうとする。
だがその男は追いつき話しかけてくる。構えて、襲ってくる覚悟をした時、手の包帯をみておもむろに、男も自殺しようとしたことを話す。そのところを父に見つかり、その男は家族に話を持ちかける。
「病院いってみーへんか?」

俺が病院に言った理由の一つがその男の出会いだった。ちょうど、くそ呼ばわりしたおじさんの前で言ったことだ。そのおじさん含め、他の人と何か違う自分の正体のけりをつけたかった。
その病院ではまずおかしな奴らとたくさん出会った。子ども番組を手を踊らせながら見る変態、意味のない言動を言うやつ、何年もいる一言も喋らない歳老いた童顔。俺はその時、意味のない言動をした顔に気持ちがでない、アホ面だったらしい。なまじ、知恵があったせいでショックも大きく、それで治ると思ったらしい、薬の量が間違った処方なのに昔のカルテにそって増えたのだ。それが十年続き、いまさら依存した時にそれをやめろと言う。あなたはてんかんではなく、薬の副作用と不安からのの症状だと、俺はそれで怒ってとり抑えられるほど、踊らされていない。かと言って、
その十年を無駄に過ごした訳もない。人の人生を狂わしておいて、その病院を許せるはずもない。だが任意の入院でなく、社会的信用はどこにもない、強みはおのれの冷徹のみ、それもさして使えない。そこに診察で先生は忙しく、ろくに見てくれない、まるでろくでなし。そこはろくでなしの収容所だった。もちろん普通のひともいる。それゆえに裏切られたことが多い。コミュニケーションの足りなさで発達障害を見抜いてもらえなかったせいで飛んだ損だった。それは心の死とでも言おうか?自分の日頃、人を考察する努力が裏目に出て、感受性が高いくせに表現に幅がない事で、努力は報われることがなかった。顔に表情が出ない病なのだ。つまり自分が泣いた日も笑った日も、母が死んだ日も、怨みも誰にも感情が伝わってなかった。恋人との想いや出会いさえも、それを信じる気持ちさえも。本当になにも信じないものは叩いた石橋しか渡らないことをしっていた。そして、その自分の愛情が叩かれることもなかったのだ。それなのに障害をものともしなかった自分のことの見方が変わって思いも変わり、普通がどれだけ弱く、もろく、はかなく、美しいものかを少しずつ知る毎日は悪くなかった。
心が一部死んで悟る。
「許せない」は「許されない。」
それが人に団結を生むとしても、わたしのようにそれに板挟みになった者にとってはただの戯れの美談だ。やけくそのくそったれは自分が何故生きてこれたか分からせる。平和だからだ。

その恋人のあからさまな思いをこめた絵がこちら



小さい紙に描いた絵は闇雲に描いた恋の偶像だ。だからもういいのだ。汚点など。母や自分の命より大切な運命を作っていくんだからとこころに決めた。
やっと人並みのこころができたのだ。
いまは絵描きを目指している。


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