第8話 捜査依頼③
文字数 1,054文字
『温室の中で具合が悪くなった一輝くんは、スマホを持っていても助けを呼ぶことが出来ませんでした。正語くん、どうしてだかわかるかな?』
正思 は小さな目を細めてニヤニヤしている。
こっちが焦れて先を促すのを待っているようだ。
(めんどくせえオヤジだな! 子供になぞなぞ出してるつもりかよ!)
付き合っていられるかと、正語 は大袈裟な動作で腕時計を見て「俺はもう寝る」と、腰を上げかけた。
「電波が届かないだけよ」と、正思の隣で光子がポツリと言った。
正語は浮かせた腰を下ろして、光子を見た。
「一輝くんが亡くなった温室は、とても辺鄙 なところにあって、携帯がつながらないの……近くにパンケーキのお店があるけど、あいにくその日は定休日だったのよ……もしスマホを使って、何か大きな音を出したとしても、お店には誰もいなかったの」
静かに語る光子の横で、何かを思い出したように正思が顔を輝かせた。
「そのパンケーキのお店をやっている人、野々花 さんっていうんだけどね、胸がこんなに大きくってさ」と、正思は手で胸の形を作った。「Gカップはあると思う!」
ヘラヘラ嬉しそうな父親に正語は内心舌打ちした。
(どうでもいい情報、寄こしてくるな!)
「正語くんは女性の胸に興味ないだろうけど、野々花さんからは話を聞いた方がいいよ。彼女、何か後ろめたいことがありそうなんだ」
どういうことかと、正語は眉を寄せる。
「一輝くんのお葬式の時にね、息子が警察官だって話したら、野々花さん途端に顔色を変えたんだ。それからは話しかけても避けられちゃってさ、まあ、この件とは関係ないことで警察と関わりたくないのかもしれないけど、なんか彼女の態度が気になるんだよね」
正語がキレた。
「なんで俺のことを、外でベラベラしゃべってんだ!」
「いいじゃん。君は僕の自慢の息子なんだから」
「医者の息子もいるだろ! そっちを自慢しろよ!」
「うちの息子は医者なんです、とか言ったって、周りを白けさせるだけでしょ。警察官だって言うとほとんどの人が興味を持ってくれるんだよ。若い女の人と話すきっかけに、ちょうどいいんだよ!」
「ふざけんな!」
「とにかく君は、みずほに行ったら、真っ先に野々花さんに聞き込みした方がいいよ」
「行くとは言ってないだろ!」
「行ってちょうだい」と光子がぴしゃりと言った。「秀ちゃんとみずほに行って、誰が何のために一輝くんのスマホを神社に置いたのか調べてきて」
光子はまっすぐに正語を見つめてきた。
秀一によく似た完璧なアーモンドの形。黒目勝ちの美しい目だった。
こっちが焦れて先を促すのを待っているようだ。
(めんどくせえオヤジだな! 子供になぞなぞ出してるつもりかよ!)
付き合っていられるかと、
「電波が届かないだけよ」と、正思の隣で光子がポツリと言った。
正語は浮かせた腰を下ろして、光子を見た。
「一輝くんが亡くなった温室は、とても
静かに語る光子の横で、何かを思い出したように正思が顔を輝かせた。
「そのパンケーキのお店をやっている人、
ヘラヘラ嬉しそうな父親に正語は内心舌打ちした。
(どうでもいい情報、寄こしてくるな!)
「正語くんは女性の胸に興味ないだろうけど、野々花さんからは話を聞いた方がいいよ。彼女、何か後ろめたいことがありそうなんだ」
どういうことかと、正語は眉を寄せる。
「一輝くんのお葬式の時にね、息子が警察官だって話したら、野々花さん途端に顔色を変えたんだ。それからは話しかけても避けられちゃってさ、まあ、この件とは関係ないことで警察と関わりたくないのかもしれないけど、なんか彼女の態度が気になるんだよね」
正語がキレた。
「なんで俺のことを、外でベラベラしゃべってんだ!」
「いいじゃん。君は僕の自慢の息子なんだから」
「医者の息子もいるだろ! そっちを自慢しろよ!」
「うちの息子は医者なんです、とか言ったって、周りを白けさせるだけでしょ。警察官だって言うとほとんどの人が興味を持ってくれるんだよ。若い女の人と話すきっかけに、ちょうどいいんだよ!」
「ふざけんな!」
「とにかく君は、みずほに行ったら、真っ先に野々花さんに聞き込みした方がいいよ」
「行くとは言ってないだろ!」
「行ってちょうだい」と光子がぴしゃりと言った。「秀ちゃんとみずほに行って、誰が何のために一輝くんのスマホを神社に置いたのか調べてきて」
光子はまっすぐに正語を見つめてきた。
秀一によく似た完璧なアーモンドの形。黒目勝ちの美しい目だった。