第5話 チート中村の人生相談

文字数 1,173文字

○チート中村、世は彼のことを人生相談の達人と称する。

今日も彼の元には、善男善女が相談に訪れる。

うっほん。

チート中村です。

はじめまして。

すみません、職場の恋愛について悩んでいる女子なんですけど、相談に乗っていただきたいのですが。
職場恋愛に悩むOL幸子(23)。
職場の恋愛?

なんなりと、何せワタシは人生相談の達人と..

ワタシ、職場の上司が好きになってしまったんです。


上司の男性を部下の女性が好きになる。

世間では、ありがちなことですな。

それで?

ワタシ、Mgrのことが好きで好きで堪らなくなって、寝ても醒めても彼のことばかり考えているんですが…

実は、ワタシ..高校は女子校で、大学も女子大だったから、男子にどう想いを伝えたらいいのか、アプローチの仕方が全く分からないんです。

うっほん。

こういうのは、いかがかな。

「今まで、美しい満月が涼しげに照っていたのに。

もう、雲間に隠れて見えなくなってしまった。

月の見えなくなって、宅は寥寥としたものよ」と。

なんですか、それは?

お月見団子なら、コンビニで買ってもう食べちゃいましたけど。

(100円で安かったわ)

アッハハ。

そうではなく、この場合は満月を意中の男性に喩えているのです。すなわち…

「あなたは、ワタシの満月だ。今まで、ここにいたのにもう去って居なくなってしまった。あなたのいない、この自宅は何と寂しいことよ」と、乙女心を切々と歌ったものです。

(このように日本人のDNAにガーンと響くやり方じゃないと)

まあ、何と美しいポエム。

わかりました、ワタシもチャレンジしてみます。

(ワタシにできるかしら)

○翌日、幸子の職場 17:00
リンゴーン♫

従業員の皆さん、早めに帰宅して手洗い、うがいを励行して下さい。

(社内アナウンス)

(Mgr田中)皆さん。早めに帰宅して下さいね。
Mgrさようなら〜
続々と帰宅する従業員。

皆が帰宅するのを見計らって、思い切って告白する幸子。

マネージャー、実は折り入ってお話があります。
ん?このコロナ時短の御時世だからね。

込み入った話は無しだよ。

手短に頼むね。

(もう皆んな帰ったし、二人きりだし)

機は熟したと、意を決する幸子。

昨晩考え抜いた口上を披露する。

ああ、あなたは国産マツタケ、それも極上の。

一歩進んで、マツタケのつゆ。

ああ、松茸汁をたくさん啜りたい。

ジュルジュル。

(ん?何か地方旅館の男子便器の前に貼ってある口上のような??!)

いきなり、何だね?


アナタのゴールデンボールはミラーボール。

クラブでキラキラ光って、

あー、身体が熱い。

500mlのカルピス飲みたい、ごっくん。

(この女、妖怪なんじゃないか)

すまん、時短営業なんでもう失礼する。

背筋に寒気を覚え、足早に退席する田中Mgr。
あー、満月が雲間に隠れてしまう。

寂しい。

今日は、新月だよ。

窓の外を見てごらん。

絶叫しつつ、颯爽とハケル田中Mgr。
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