狂気の好奇心

文字数 1,834文字

――エントランス·受付――

受付までやって来た4人だったが、そこにエルナの姿は見当たらない。
あれ?エルナさんが居ませんね?
みたいだな。すぐ戻ってくるかもしれないし、待ってようぜ
でも……ジが……でもしたら……
ん?
シャロアは声の聞こえた方、受付のカウンター下を覗き込んだ。
!!
そこに居たのはまさしくエルナだった。

気づいたシャロアが声をかけようとするも、声を発するより先にエルナの持つ電流を発する機械が首元に向けられた。

ぁ……あの、私……な、何も見てませんから……
あっ……!大丈夫ですか、シャロアさん!?
大丈夫ですか、ヴェルスさん!?
シャロアは真っ先に一番近くに居たヴェルスに自らの首の無事を確かめさせた。
それ……スタンガンですか?
はい……。本来は支部内でトラブルがあった時や身を守る為に使う物なんですが……すみませんシャロアさん、お怪我はありませんか?
あ、はい。大丈夫みたいです!
それで、呼ばれた訳は……?
そ、そうでした。とある人から皆さんに会いたい、是非とも連れて来てほしいと言われているんですが……
どうかしたんですか……?
いえ、何でもありません。いざという時は私が皆さんを守りますので!
それ、私達の役目ですよね……?
制服の内側に置いていたスタンガンをしまい、カウンターから出てくると、エルナは歩き出した。
それでは案内します、付いてきてください
*  *  *
医療研究区画を奥へと進むと、廊下の隅に扉が見えた。

先頭を歩くエルナはその扉の前で止まり、ノックをした。

ルイスさん、入りますよー
エルナの呼びかけに応じるようにして扉が開く。

部屋の中は無人のような静けさだが、照明は点いている。

ルイスさーん、いらっしゃいますかー?
部屋にエルナの声が響く。

静寂の後、部屋の奥から物音と共に男が軽く猫背になりながら姿を表した。

覇気の無い顔と跳ねた髪、眼鏡の奥に薄く隈が見え、疲れの色が伺える。

何だいエルナ……僕に何か用があるなら手短に済ませてほしいけど……。ん?
男は4人を視界に入れるとズレた眼鏡をかけ直し、ゆっくりと近づいて行く。
もしかして、君達がルブルムかい?
ま、まぁ……
そうか、つまり君達が害物との適合に成功した次世代の兵士という訳だね。アレクトも期待しているよ?スレイヤーを超える力を持っているらしいじゃないか
あのー、エルナさん……。この人は?
この人はルイス·フェディさん。このLUS支部で医療研究班の班長を務めています。元々、害物研究の中核を担っていて、スレイヤー技術を確立させた人でもありますよ
えっ、じゃあ結構偉い人なんですか……?
経歴だけ見ると凄い人だとは思いますが……
これからよろしくお願いするよ
ルイスはヴェルスに握手を求めて手を差し出す。

それに応えようとした瞬間、エルナが動いた。

エ、エルナ……どうしたんだい?随分と顔が怖いけど……?
右手、何か隠してますよね?
エルナはルイスの首元にスタンガンを突き付けながら、鋭い目つきでルイスに確認する。
何の事かな……
しらを切るルイスにエルナはスタンガンで圧をかける。
あ、剃刀が袖の中に……。どうしてこんな所にあるんだろう、ちゃんと戻しておかないとね……あはは……
ぇ、えぇぇ……
ぎこちない笑顔のままルイスは剃刀をデスクに置いた。
そうだ、お茶でも用意するよ。支部の新しい仲間だからね、お互いの事は知っておいて損は無いと思うんだ
それなら私がお話しますので、ルイスさんは研究に集中していてください
冷たいなぁ……人との付き合いの中でコミュニケーションというのは重要なんだよ?
害物より人付き合いの方が上手くなってから言ってください。念の為、今後はルブルムに会う際にはフォルク隊長にもご同行してもらいます。いいですね?
別にいいけど、何だか僕が関わっちゃいけない人みたいな扱いになってないかい?
そうですか?気のせいだと思いますよ
そうか、エルナが言うならそうなんだろうね。あ、ちなみにコーヒーもあるんだけどどっちが良いかな
眠気覚ましであればやっぱりコーヒーの方が良いと思いますよ。さて、長居するのも悪いので私達はこれで失礼しますね
いやいや、心配なら要らないよ。ルブルムと話せるなら僕は何時でも……
ではお邪魔しました。研究頑張ってくださいね
エルナはルイスの話を聞き流しながら4人を外に出すと、事務的な挨拶をして部屋を出た。
って、もう行っちゃったか……
害物の血を取り込んだ兵士、ルブルム……。君達がこの世界にどんな影響を与えるか、楽しみにさせてもらうよ……
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