第28話 改めて、発達障害ってなあに?②

文字数 2,023文字

 続いて、ASD(自閉症スペクトラム)の特徴。

 僕の場合は感覚過敏、そしてアスペルガー障害もあるように思います。言葉の裏を読めず、字義通りに受け止めてしまい、非言語的コミュニケーションが苦手で、皮肉や意図が読み取れない等々。

 けれど感覚過敏については、本当にピンと来ませんでした。なにせ生まれてこの方こんな感じなので、他の方より感覚が過敏だとか思ったことがないのです。

 なのでリワーク仲間であり発達障害の先輩(?)である藤本さんに相談してみました。

「そうですね……例えばノートの話がありましたけど、白地のノートが苦手な話は視覚過敏と言えるかもです」
「なるほど確かに」
「車のクラクションとかも苦手だったりしません?」
「あっ苦手ですね。道ゆずった時のお礼のクラクションとか、ビクッとなるので本当にやめて欲しいです」
「わかります、それ。あと僕は電車や人込みが苦手ですね」

 ふむ。人込みは分かるけれど……電車?

「人の会話とか咳払いとか、耳に入ってきて意識しちゃうんですよね。音楽でも聞かないと辛い。なんだったらサングラスも掛けたいくらいです」
「うわ、凄く分かります。ていうか通勤のときにイヤホン忘れてると泣きそうになります」
「ですよね~」

 そんな会話から、徐々にですが自身の特徴を自覚していきました。

 というのも、僕から見た藤本さんは実に感覚が過敏で、視覚・聴覚・嗅覚ともに凄く鋭いなと感じていたのです。そんな彼との共通点がまぁ色々とあるわけで、という事はつまり自分も過敏。そういったプロセスを経ないと、僕は僕を理解できなかったのだと思います。

 あと『衝動性』というキーワードも二人の共通点で。

 考える前に行動してしまう。やり始めると止まらない。お酒が入った時などは最たるものです。ある日、飲みに行った時に二人ともスイッチが入っちゃって朝までガンガン飲んじゃいました。とても楽しいひと時ではあったのだけれど、先生や療法士さんに散々『もうちょっとやりたいな、程度で抑える訓練も必要ですよ』と言われていた時期です。

 もう衝動性に任せて弾けてしまって……宵越しの金は持たねぇ、どころか明日の元気を前借りする勢いでした。

 以降、飲みに行く時は、
 ・解散する時間
 ・帰りに乗る電車のダイヤ
 ・帰ることが出来た僕たちはエライ
 そんな約束をしてから行くことにしました。

 総じて疲労が溜まりやすく、しかも疲労を無視して行動してしまうという僕らのクセ。というよりか、疲労が溜まる程にブレーキが壊れやすいのだと思います。

 元気で余裕があるから遊ぶんじゃない。
 疲れて余裕がないから弾けてしまう。
 そして潰れる。

 これはもう本当に、肝に銘じ続けるべき発見でした。

 ◇

 そしてもう一つ重要な共通点。発達障害の方は、かなりの割り合いで日中の眠気が強いそうです。

 僕も例にもれず、社会人生活は眠気との闘いと言っても過言ではありませんでした。

 新卒として入社した新人研修では、昼過ぎに必ずウトウトしちゃう。偉い人が参加する会議でも首がカックンカックン。もう身体が熱くなって汗だくになって、凄まじく抗い難い猛烈な眠気に襲われるのです。

 もちろん怒られたり叱られたりするわけで、自分なりに対策も頑張りました。ていうか本当に寝たくないんです。でも周囲から見ればやる気がない、モチベーションが低い、真面目にやれと怒られてしまうわけで、あの眠気はもはや恐怖とさえ呼べるものです。

 コーヒーを飲んでミンテ●アを貪り、エナジードリンクをガブガブ流し込み……ですが効果は発揮されず。
 ある時に『暴君ハバ●ロ』という激辛スナックを食べると眠気がふっ飛ぶことを発見し、これで人生変わるんじゃないかと期待しましたが、5日目にして胃がメチャクチャ痛くなりました。

 血糖値の上昇が関係していると考え、昼食を抜くことも多々ありました。確かに効果ではあったけれどお腹が空いて仕事が進みません。低GI食品も試したものの、まぁ気休め程度の効果で。

 最終的には仮眠が最も有効で、朝の通勤電車では必ず目を瞑る。お昼になると15分で昼食を済ませて30分ほど仮眠を取る。

 僕のオススメはマシン室や倉庫といった、会社内で人があまり来ない場所です。そこのロッカーにAmazonで購入した仮眠用枕を忍ばせておき、お昼にふらっと入るのです。でもお昼に予定が入ったり出張や外出が入るともう最悪。

「頼むから眠くならないでくれっ……!」

 そんな祈りを幾つ奉げたでしょうか。寝るけど。
 ある時、会社の先輩に『カバネは昼寝が好きだなぁ』と言われたことがあり、

「あぁ? 好きで寝とるんちゃうわっ!」

 とガチギレしてしまいました。あの頃は担当プロジェクトも佳境に入り、僕も気が立っていたのだと思います。誠にごめんなさいでした。

 そんな風にして理解を深めた僕の特性、特徴。
 ここに来て少しずつ、僕がダウンした本当の理由が見えたような気がしてきました。
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