第八話 勇者、ここに眠る

エピソード文字数 1,090文字

まさか本当に勇者が武器屋経営をはじめるとはな。ちゃんと会計とか帳簿付けとかできるのか不安しかないぞ。
アタシらも少しは手伝ってやったほうがいいんじゃないのか?
もともと勇者はアタシらの将来のためと思って武器屋『ドリームアームズ』を買ったわけだろ。まぁ大方誤解だったわけだし、将来が心配なのは実は勇者だけだったって明らかになったわけだが……アイツの気持ちには報いてやりたいじゃないか。
何を甘チャンなこと言ってんのよ。こっちは手持ちのお金がほとんどなくなって、装備の新調もできないわ。見なさい、私のこの法衣。吹き込まれてる魔力がはげ落ちてきて、属性防御力が落ちてきてること、魔法使いだってわかるでしょ。だけど魔界を安心して探索できるレベルの法衣を買おうとすれば、やっぱり10万Gは軽く超えるわよね。どうしてくれるの。
パーティーの荷物持ちが役目の俺から言わせてもらうが、僧侶にとっちゃ法衣なんて飾りだろ。強すぎていつも敵を寄せ付けないじゃないか。
荷物持ちは黙ってなさい。パーティーで一番かよわい私は、いつ敵に倒されるかわからないものなの。無双呼ばわりするのはやめてくれる?
そういう脳内設定ですね、わかります。
とにかく、カネよ、カネ。今は目先の宿代や装備代を確保しないと。まったく勇者の猪突猛進な思考にはいつも辟易させられるわ。
仕方ない。だったら勇者はしばらく放っておいて、魔王の行方を探しながら、ダンジョンに潜って金策に勤しもうじゃないか。といっても、そこらのダンジョンはもう冒険者たちに刈り尽くされているからなぁ……。よほど遠方の、敵も強いダンジョンに潜らないと。
古代のアーティファクトでも探すつもりか? 何のアテもないっていうのに。しかも実質的な戦力は僧侶と魔法使いの2人だけだぞ。
あの純情娘がいねーと戦闘が結構しんどいんだよな。負けるわけじゃないにしても、大軍に襲いかかられでもしたら難儀だよ。
いよいよもって僧侶の戦闘力だけが頼りになってくるな。俺は岩場の陰に隠れて観戦してるよ。
じゃあ方針は決まりね。魔王の情報を各地で収集しつつ、ついでに奥地のダンジョンに潜って金策。勇者には軽く挨拶だけして、私たちは出発しましょう。
一向は宿屋を出て、武器屋ドリームアームズへと赴いた。
そこで3人が見たものは、まるで野党に荒らされたような無惨な店の姿。
乱雑に書きなぐった壁紙が貼り付けられている。その文字は、「金返せ!」「インチキ武器屋!」「金をだまし取るエセ勇者!」など、罵詈雑言の嵐だった。
なんだぁ、この張り紙は?
おいおい、何か良からぬ事態になったんじゃないか。
……どういうことなの、コレ……。
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登場人物紹介

勇者

剣技・魔力ともに秀でた有数の戦闘技術の持ち主。幼いころからその力は有名で、王国政府から懇願されて魔王討伐の旅に出た。
心優しく、単純な性格。誰に対しても丁寧で、魔王にすら謙虚な姿勢で臨む。

魔法使い

まだ年若いにもかかわらず、王国魔法協会で最高の魔力の持ち主。勇者を護衛するメンバーとして王国魔法協会から派遣され、最も早くからパーティーに参加した。ギャンブル好きで、大都市にくるとカジノに入り浸る。

僧侶

教皇庁の特殊工作員。教皇庁の思惑から勇者パーティーに派遣され、魔王軍攻略に参加している。
ゾンビ30体を同時召還し使役することができるほどの驚くべき魔法力を秘め、その実力は魔法使いを上回る。タイマン勝負でも、愛用の聖鉄製大型ジャッジガベルを振り回し、戦士を圧倒する実力をみせる。表向きは清楚な女性に見えるが、パーティー内での戦闘力は、実のところ僧侶が最も高い。

戦士

ツワモノ揃いのパーティーメンバーのなかで、唯一の庶民的能力。
苦学生で、生活費を稼ぐために、冒険者ギルドに所属して時々バイト活動をしていた。あるときダンジョンに挑む勇者パーティーにポーター(鞄持ち)として雇われる。最後に加わったメンバー。
正式には今でも冒険者バイトだが、数字や法律に強く、パーティーの知能を担っている。すでに古株になってしまっており、最後まで同行しそうな雰囲気である。

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