スカーレット

文字数 2,445文字

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はっけよーい、のこったっ!のこったっ!
僕以外、誰もいない希望崎学園の土俵……。女子相撲は元々、相撲人口が少ない上、魔人になってまで続ける女子はごく少数だ。
それでも僕は一人、今日も稽古を続ける……。あっちゃんのため。今は天国にいるに違いない、あの子に届くために……。この直径4メートル55センチの土俵の上で。
土俵の上では常に孤独……。誰かそう言っていたっけ。今はもう本当にそうだ。取り組みの相手も、行事もいない一人の土俵。僕の姉妹弟子同然だった、あっちゃんも……。
はっけよーい、のこったっ!のこったっ!
ねえねえ。
うさぎさん? いつの間に……?
それ、面白いかい?
え……う、うん……?
ふーん、どこが? さっきから辛そうだけどなあ……。
そうだね。正直、今は辛い……かな。相撲は、相手がいなければ成り立たない競技だからね。僕みたいな体格の小さい子は特に。技を鍛えなければいけないんだけど、こうして一人で稽古を続けてても中々上達しないや。
じゃあ、練習する相手を見つければいいのに。
……いないんだ。もう……。(あれ? おかしいな、僕、なんでこのうさぎに素直に喋っているんだろう?)
いない? 本当に? 君が勝手にそう思ってるだけじゃなく?
……いないんだよ。僕が鈍感なせいで、ずっと空の上に行ってしまったんだ。相撲を続けているのかも、もう分からない。
じゃあ、そこにいる彼女は?
花火ー!
えっ……あっちゃん……?
(……ニヤリ)
うさぎの唇の端が小さく歪んだ気がしたけど、それを気にとめる間もなく、僕の意識はまた少し飛んだ。
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足掛けで……てえいっ!
甘いっ……!
わわっ……!
決まり手……上手投げですね……。
うーん、やっぱりいくら小手先に技をかけても……あっちゃんとは体格が違うからなあ……。小揺るぎもしないや。
でも花火の技の引き出しの多さもどんどん増えてます。このままだと星を五分にされる日も遠くないかもですね。
そうかなあ……3勝12敗ぐらいで負け越してるのに。まだまだ横綱と平幕だよ……。自信なくす。
体格で全てが決まらないのが相撲の面白いところって、私に教えてくれたのは花火でしょう? まだまだ私を倒せる技は生み出せるはずですよ。
そうは言っても、あっちゃんに上手を取られちゃったら……そこからどんな技を出しても……、いや、そうさせない様、もっと立ち合いと技を磨けばいいのか!
その意気! 私もどんな技が来ても潰せるような右上手を極めますので!
よーし、もう一番! 頼むよ! あっちゃん!
君達ぃ……。
あ、あれっ……誰っ……!?
私はただの清掃員のおじさんだよ。それが更衣室に盗難が入ったみたいでねえ。
ええっ!?
ちょっと来てくれないかい?
酷い……僕の服がズダズダだ……。このスポーツウェア、お気に入りだったのに……。
ん、手紙……。「相撲やるなら、廻しだけあればいいだろ?バーカ!」酷い……。
そうだ……。いつだったか、あっちゃんが制服をなくして、ジャージだけで稽古場に現れたことがあった……。水で濡らしちゃったなんて言ってて……あっちゃんらしくないなあ、なんて僕は気にも止めなかったけど……。
あれは……。
キヒッ……キヒヒ匕匕……。
つ、冷たいっ……。
ほらほら、相撲取りなら、裸で水ぶっかけられるぐらい、耐えられるでしょ!
可愛がりよ!可愛がり!
ち、違うっ……!相撲はそんなんじゃない! 心技体を鍛えるっていうのは……!
何言ってんのさ! TVでもネットのニュースでも、強くなんにはこのぐらい必要だって言ってたわよ!
女のくせに相撲なんて! 力が強ければいいって、あんただって思ってんでしょーが! 野蛮人!
ううっ……誤解だよ! 例え一部の人がそう思っても、本当は違う! 僕が好きな相撲は……。
(花火が好きな、相撲は……)
あっ、あっちゃん……!?
そうか……あっちゃんは、こんな風に、どんな事を言われたって、今の僕のよう「違う、違う!」って言って耐えて……。なのに僕はそんなあっちゃんの頑張りに気づきもしないで……。
身体が傷ついていたのも……一人で稽古をしていたなんて言葉を鵜呑みにして……最低だ……。
そうだねえ。最低だねえ!
君は……うさぎさんは……誰なの?
僕は土俵の下に眠る夢の精霊、とても言っておこうか。君が親友を思って踏み続けた四股の音に応えてやってきたんだよ。
夢……そうか……あっちゃんが死んでから、ずっと稽古、稽古に夢中になってて、それでとうとう疲れ果てて本当の夢の中、か。
君の後悔の声は土俵の下の僕に響き渡った! ゆえに君の願いを一つ叶えてあげよう……。君の魂と引き換えにね。
魂……。
そう、その代わりに何でも願いは叶う。例えば……親友と土俵の上で再会する事もね!
本当に!? あっちゃんとまた会える!?
ああ……会えるよ。(あの世で、な)
ほおら、そこにいるよ……。
花火……。
あっちゃん……!
さて、いいかい……? 魂を……。
うん、でももう一つだけお願い……。
あっちゃんと、相撲を取らせて!
そんな事か……。いいよ……。(最後の最後まで暴力、か。まったく生きている事に充足していた奴らは……)
やるよ!あっちゃん!

ええ、花火!


では行事は私がつとめよう……!(俺はそんな楽しみもなかったんだ。死出の相撲、せいぜい楽しみな)

はっけよーい! のこったあ!
まずつっかけ、かち上げで……何とか組み合う前にあっちゃんのまわしを……。
こらえられたっ……!やっぱり、うまいな……あっちゃんは……。
のこった……のこおったっ……。(ケケ……最後にたっぷり、組み合わせてやるよ)
やっぱり……違う。
あっちゃんに左廻しを取られたら、一瞬で上手投げが決まってた

これはただの夢! 土俵から消えろ!妖精!

どっせえーーーい!!


強烈な右仕立て投げ!豪快な炎を共に、あっちゃんが土俵の妖精に突っ込む!

灼熱の炎が土俵を包む、全ての過去とともに……。

そこまでです!!
決まりて、下手投げ。

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登場人物紹介

名前:心石花火(こころいし はなび)

性別:女性

設定:

魔人女子相撲に励む高校1年生の女の子。

1人称は「僕」。

魔人になる前から相撲が好きであり、親友の女の子と二人で競技人口が少ない女子相撲の稽古に日々励んでいた。

だがある日、相撲に対して偏見を抱く学校の連中に親友の女の子が目をつけられ酷いいじめに合い、自殺してしまう。

彼女は自殺する日まで彼女の様子がどこかおかしい事に気づきながらも、いじめにまでは気づけず、親友を死なせてしまったことから心に深い傷を負ってしまう。魔人能力にもこの時に目覚めた。

例え復讐を果たしても、親友は戻らない。彼女は今も過去を振り切れないまま、一人、土俵で四股を踏み続ける。


元々は明るくボーイッシュで、元気いっぱいに話す性格だった。

今も表向きは変わらないが、時折過去の経緯から暗い影が差す。


能力名:花火八十二手


相撲技を仕掛けた際、繰り出した箇所から炎を発生させることができる。

張り手時に掌から炎が出る、上手投げ時に相手が燃える、など。

炎の発生の仕方は花火の意志により割と自由。


戦う動機:過去を振り払うため


イラスト:きゃらふと様より作成


作者:スカーレット

無現 得夢(むげん えむ)

「私、無現  得夢が! あなたの魂、人生をいただきます!」

24歳 男性


能力名:ソウルワールド・オブ・ザ・ドリーム

夢の世界に相手の魂を閉じ込める能力。

閉じ込めた相手の魂を喰らう事で、相手の記憶や経験、思い出を体験することが目的。

 夢の世界では魂が実体化する。夢の世界に囚われても逃げまわることは可能。

「ただ狩るだけでは面白くない!遊びがなくてはねぇ!」

夢の世界を自由に操れる。夢の世界とは、すなわち、妄想力によって構成された世界である。 


設定:

 彼には何もなかった。両親は幼少期の頃から仕事で家におらず、ずっと一人だった。

 両親が事故で死んだ。親戚の叔父の家に預けられたが、まるでいないもののように扱われた。大人になってもどこにいっても馴染めなかった。現実で楽しいと思える事が何もなかった。

 そんな彼の唯一の楽しみは眠りの中でみる夢だけだ。


 そして、彼は不治の病になった。

 死期を悟ったとき、彼は人生を無意味なまま、終えることに対して恐怖を抱いた。 

「もっと色々な出来事を経験したい。夢の世界のように自由に 」

 夢の世界に逃避するようになった彼は、自身が夢の世界に人間の魂を閉じ込める力を持っていることに気づく。


  魂を初めて喰らったとき、その人間の世界がみえた。人生を経験した。想いを感じた。彼は他者の人生という名の刺激の虜になったのだ。

 現実では不治の病でも魂を喰らうことで治すことができた。


「こんなこと、やめるべきだって? ――否、否、否ァ! 他者の魂は私にすべてを与えてくれるのだ! やめることなどッ!できるはずがないッ!」


 ――今日も刺激を求めて、彼は魂を喰らう。


戦う動機:魂を喰らうため。

アイコン:三日月アルペジオ様

作成者:榎本レン

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