第5話(2)

エピソード文字数 2,013文字

「狂島さんの仇は、わたしが取りますっ。はぁぁっ!」

 今度の仕掛人は、火鉈春子さん。彼女は火で出来た鉈を作り出し、ブーメランのように投げつける。

「ほぉ、炎で創造か。おもしれぇな」
「この武器からは、誰も逃れられませんっ。わたしの炎を受けてっっ!」

 彼女は苗字にあるように、火の鉈を生み出し操れる一族。そのためソレは器用に柱を避け、高速で回転してフュルに襲い掛かる。
 のだが――

「フュルさんの次は、私の出番ね。魔剣『エンド・ディメンション』の力を思い知りなさいっ!」

 シズナは全てが黒色の剣を振り、仲間へと飛ぶ鉈を一刀両断。軽々処理をすると攻勢に転じ、彼女が生み出した黒炎が火鉈さんを包んだ。

「ぁはっ!? ぁ、かは……」
「春子ちゃん!? こっ、この子に何をしたんだっ!」
「この炎は、普通に触る分には無害なの。ただ――吸い込み体内に入ると、灼熱の毒となって熱と痛みが襲い掛かるのよ」

 シズナは恍惚の表情で技を紹介し、苦悶を楽しんでる芝居をする。
 この人は本来Sらしいからか、こういうのがよく似合う。これがスカウトの目に留まって女優デビューして、僕から離れてくれると嬉しいな。

「くっ、なんて火なんだ……! 春子ちゃんっ、僕の剣ですぐ消すからね!」

 彼の得物は『消去の魔剣』と呼ばれる、魔法魔術を打ち消す力がある一振り。そのため全力で振り下ろしたのですが、この術の使い手は化け物ですからねぇ。当然打ち消せません。

「ぁぁっ、ぁぁぁ! 喉が、肺が、焼ける……っ。痛い……!」
「はっはっは、良い光景だな。その女はいい声で鳴いてくれるぜ」

 こういうの、例え演技でも見たくないな。ジワジワ痛めつけるの、ホント極悪非道だよね……。

「た、大変です王器様っ! このままではっ、春子さんが死んでしまいます!」
「はっ、春子ちゃんギブアップだ! ギブアップを宣言して外に出るんだ!」
「ぎ、ぎぶ――かはぁっ! こえ、が、で、ない……」

 嫌な気分になってたけど、ちょっぴり和んだ。火鉈さん火鉈さん、声が出ないって声が出てますよー。

「……ギブアップを宣言できなかったら、春子さんは命を落としてしまいます……。どうすればいいのでしょうか……!」
「…………っ、困ったな……。僕達がギブアップと言っても、させられないし……!」

 魅条さんによると彼はルールを覚えるのが苦手で、代理ギブアップはOKなのに周章狼狽する。
 このままでは、大事な従者が死んでしまう――。俺らはこうやって動揺させ、精神に負荷をかけてゆくのだ!

「ぁ、がは……。おう、き、さま…………たす、けて……」

 負荷かけ係さんが苦しそうに喉を押さえ、蚊の鳴くような『声』を出す。
 だ、だれかっ。早くあの子のミスを指摘しないと、声出てる? になっちゃうぞっ。

(……これで、二度目だ……。そろそろ、不自然だと思わないかな……?)
「春子ちゃん! ……さっきより、声が小さくなっている……っ!!

 神蔵さんは得物の切っ先を地面に叩きつけ、歯噛みをしていた。
 全く思っていないのは好都合だけども、この人おかしいよ。アンタ、その台詞をよーく振り返ってみて。

「ま、参った……。どうしたらっ、どうしたらいいんだ……!」
「おう、き、さまぁ……っ。た、す、けて……」
「春子、ちゃん……。僕は、どうすればいい……っ」

 改めて、この状況を確認してみるといいよ。

「おうき、さま……。いた、い……っ」
「剣では、消せない。代理ギブアップも、できない。春子ちゃんは、声が出せない……。手の打ちようがないよ……っっ」

 神蔵さんは眉間に皺を作り、とてつもなく悩んでいる。
 コントみたいだけど、コントではない。神蔵ワールド、面白いな。

「春子ちゃんが……っ。春子ちゃんが……っっ。僕は、どうしたらいいんだ……っっっ?」
「お、おき……さま……。ぁ、ぅ、ぁ……」
「別の、方法は……。他に何かないのか……?」
「おうき、さ、ま……。は、はやく、たすけ――ぁぐっ。ぁが、ぁうっ!」

 バタバタバタ
 限界! ホントに気絶しちゃう! のサインが出た。
 こんなに気付かないのは想定外っ。かなりヤバそうだから魅条さん教えてあげて!

「っ! おっ、王器様思い出しました!」
「魅里ちゃん!? なにをだいっ?」
「代理ギブアップは許可される、とルールブックに載ってました! これは間違いありません超特急で申告しましょう!」
「お手柄だよ魅里ちゃん! 審判さんっっ、火鉈春子をリタイヤさせます!」
《チームメイトの、宣言を確認DA! 転送するZEっ》

 限界でホントに気絶しちゃいかけた火鉈さんが、密かにホッとして戦場から消えた。
 ふぅー、お疲れ様でした。あとは好物の塩昆布でも摘まんで、外にあるモニターで観戦していてくださいね。
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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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