第2話

文字数 1,678文字

ミュータントウォーズ・新人類戦記第一章第2回


■日本国 山梨県郊外。

山梨県の山奥に広大な邸が在した。
自然の要害に囲まれたこの家に誰が住んでいるのか近在の者は知らなかっ
た。
 ただ、時折、甲府の方からヘリコプターが飛んで来て、スーツに身をかためた・男達が訪
れているようだった。
 この日はその中に外人がまじっていた。
 「翁、おひさしぶりです」
 「久しぶりじゃの。モリス君。あの事件以来じゃな」
 「まったくあの際にはお世話になりました」
 「今日もまた何か問題がかこったようじゃ座」
 「残念ながらそうなのです。また翁の力をお借りしなければなりません」
 その外人は写真を渡げ、事の次第を要領よく述べ始めた
 翁と呼ばれた老人は80歳くらいだろう今、
この男は日本の黒幕の巨額といわれていた。
彼はしばらく考えていたようだが、やがてゆっくりと目を開き、答えた。
「よろしい。ひきうけよう。しかし貴国政府はこのお返しに何を約束してくれるかな」
「それは大統領のお心次第です」
 外人は長い廊下を玄関へ向う。小さな声が後から発せられた。
「金融問題解決だな、モリス君」
それは翁の声かどうかわからなかったが、直ちに本国へ打電されるはずであった。
 翁は秘書の一人を呼び出し、命令を下した。
「サムライノクニ機関の島の所長を呼ぴだせ。そして東郷竜を我の
もとへ連れてくるように言いなさい」


■日本、北海道、「サムライノクニ」施設

 北海道の最北端、つまり日本の鏝北端は宗谷岬と普通考えられ。ているが、実は一つの島
が北に存在していた。樺太の岬と宗谷岬の中間、宗谷海峡のど真中にこの島はあった。
 終戦後、人工的に作られたこの島の事はごく一部の政府上層部のものしか知らない。北方
への防備と共に、監獄として使用されていた。日本国内の刑法で裁ききれない犯罪者の群れ
がこの島に生嘸しているのだ。
冷風が吹きすさぶ、この地はまさに北の端であった。
東郷竜は独房の中で黙想している。彼は政府直属のアクションサービスJの一員であった。
過去に受けた精神的外傷トラウマのために突発的な犯罪を犯す危険性が内在し
ている男なのだ。
 年に数度、仕事のためにこの島を離れるのだが、すぐこの島に連れもどされてくる。
 独房のドアがあいた。重々しい音が石だたみの廊下に響いていた。所長じきじきのむで
ましだ。
「竜、また、翁がおよぴだぞ」、
竜はにこりともサず、独房を出た。
飛行服に着換える。竜専用のジェット機ハリヤーがこの島孤は用意されているのだ。
 やがて、島の飛行場から、竜の噪縦するジェット機が山梨へと向かった。

近くを操業中の漁船に一人の男が立ち、島の方を望遠鏡でながめていた。
飛行機が飛び立ったのを見て、男は操舵室へ潜りこみ、無線機でいずかへ連絡をとり始めた。
情報は世界の情報部へ。
「竜、君に頼まなければならない。君のその力を必要とする事態がおこったのだ」
 竜は無言である。
 「行先はベトチムだ。土地鑑もあるだろう。あの男に会えるかもしれんぞ。相手はアメリ
カ軍が作りあげた殺人機械だ。君もかって関係したことのあるプロジェクトの所産だ」
 翁の顔からも表情を読みとることができな
「わかった。仕事はやろう。お返しに何ヵ月くれるんだ」
「6ヶ月自由に動け」
 竜は定期的に神経が異常々たかぷりが存在し、その感情を一度に激発させなければ生き
てはいけないのだ。殺人行為を何カ月かに一度行なわなければストレスが解消しないのだ。
 日本のアクションサービスの一員として養われているが、その行動パターンのゆえに
  活を長く続けることはできないのだ。
翁の庇護のもとに彼は生存がゆるされている。その背景には「サムライノクニ」組織が
あった。古の日本の歴史に関与した目にはできぬ組織だ。
「それでベトナムヘ渡る方法は」
「それはこちらで準備する。君は我々の手先になる前に新聞記者の経験があったな」
「そうだ。それ以後もフリーライターという名刺で動いている」
また、ひとつの要因が、人類史場になげこまれる。

ミュータントウォーズ・新人類戦記第一章(1980年作品)第1回
冷戦時代の話です)
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