プロット

＜起＞
引っ込み思案で吃音がある森沢タクト。小学５年生も終わりかけている今、転校することになった。新しい学校は田舎で、城跡と海とタクトが大嫌いなミカン畑に囲まれている。
吃音を気にするあまり話すことができないタクトは、困ったことがあってもなかなかクラスメイトたちに聞くことができない。
ある日、通学途中に国語のノートを忘れたことに気づいて学校前の文房具店に寄ると、ペンギンが低音ボイスで人間の言葉を話しながら、店主のおばあさんとミカンを食べていた。驚いたタクトは、ノートを買わずに店を飛び出した。
その様子を学校隣のお寺に最近やってきた、雑誌にも載るほどのイケおじ住職兼町内会長・通称｢和尚会長｣がドローンで覗いていた。

＜承＞
　国語の授業中、ノートがなくて困っていると、委員長の円城寺ミカが予備のノートをくれた。放課後、ミカにお礼を言うと、ミカから今朝、文房具店から飛び出してきたタクトを見かけたと言われる。ゆっくりと訳を話すと、ミカはペンギンを知っていた。二人の周りにリーダー格・青木ケイイチ、不思議好きの雨宮チドリ、論理派の中里ユウタが集まり、学校前の文房具店の倉庫にペンギンがいると教えられる。しかもそのペンギンはフリッパーで文字を書くことができ、手紙の代筆を依頼すると願いが叶うという。４人とも、生まれた時からペンギンがいるので、こういうものだと思っていて特に違和感はない。数々の秘密の手紙伝説を話しつつも、４人とも自分の身近に代筆を依頼した人はいないことに気づく。伝説が本当なのか確かめに行こうと、４人にムリヤリ連れていかれるようにしてタクトも文房具店へ向かった。
　一方、和尚会長はペンギンを怪しんでおり、あのペンギンには南極で行方不明になった手紙好きの探検家の呪いがかかっているから近づいてはいないと説法をして廻る。イケおじぶりに翻弄された主婦を中心に、噂が広まっていく。

＜転＞
　驚きつつも、ミカたちと放課後に文房具店へ通い、少しずつペンギンやおばあさんと馴染んでいくタクト。ペンギンと店主は雑学博士で、記憶力がよく、昔ペンギンが初めて叶えた願い事の話などをするうちに、吃音も減っていった。
　ある日、課外授業でミカン農家の手伝いに行く。そこで、ペンギンの呪いの噂を農家のおばさんから聞くタクトたち。農作業のお礼にミカンをもらったが、小さい頃に腐ったミカンを食べてお腹を壊し大変な目にあったタクトは、ミカン好きなペンギンに全部あげようと文房具店へ行く。そして、密かに自分の願い事を手紙に書いてもらおうとする。
　代筆してほしいことをペンギンに話したが、断られてしまう。ペンギンは自分がいかにミカンが好きかを語るばかりで、タクトの願い事は聞いてくれない。反発して、ぼくはミカンが嫌いと言おうとするが、吃音が出てしまい、「きききらい、みみみか」と言ってしまう。ちょうどそこへ、ミカたちが文房具店へやってきて、ミカは自分が嫌われていると勘違いをして飛び出してしまう。慌てて取りなそうとするタクトだが、さらにそこへ和尚会長と和尚に感化された主婦たちがドローンとともに乗り込んで来て、ペンギン退治の呪術をかけようとする。
　大混乱の中、ペンギンは一筆の手紙をしたためて、お前の願いはここに書いてある、和尚から私を助けてくれたらこの願いは叶うだろう、とタクトに言う。
　ケイイチとチドリの協力で、タクトは和尚からドローンと操縦用のスマホを奪うと、ドローンにペンギンを乗せ、誰も手の届かない高さまで飛ばした。そこで今度はユウタが、和尚がまだ修行僧だった頃ペンギンに会い、イケメンに見えるメイクとフェイスマッサージを教えてもらい、話術が上手くなるよう願い事をしたんだろうと叫んだ。ペンギンが初めて叶えた願いは和尚の願いだったこと、和尚のイケおじぶりは作り物らしいことに、ユウタはその分析力で気づいていた。
　タクトは、町内のみんなも、実は密かにペンギンに願いを叶えてもらっているのに、なぜ「みんなと違う」だけで退治しようとするのかと大人たちをにらむと、和尚がかけていた話術の力が消え、みんな我に返る。
　和尚は真っ赤になって怒りながら、タクトからスマホを奪おうとし、はずみで投げ出されたスマホはペンギンのフリッパーに届く。ペンギンはスマホを操作して、学校裏にある城跡まで飛び、みんなもそれに付いて行く。

＜結＞
　城跡の隅では、普段気の強いミカがうずくまって泣いていた。タクトは、ミカが嫌いと聞こえた真相を一生懸命話し、仲直りする。
　ドローンから降りたペンギンが、さっきの願い事を書いた手紙をタクトに渡す。それを読んだタクトは、ぼくは人に言えないような願い事はしないと、それを音読する。「この町の人たちとたくさん話して、本当のともだちになりたい」
　それを聞いたミカたちは、そんなことペンギンにお願いしなくても叶ってるのに、と笑顔を見せた。