第30話 一から十までのこと
文字数 1,384文字
カタコトコトカタ、家を出立する時刻も都合も、耳に挟んだ煙草も忘れ工作に勤しんでいると正午ちょうどに玄関ベルが鳴った。腹も空いて昼食をどうしようか脳裏に掠めていたものだからついでにスナックを買いに行こう、腹の音かかえ財布を握って切りよく玄関ドアを開ける。
すると例の少女が「ちゃっかちゃん」引っ倒した傘立てに乗っかって背伸びして玄関ベルを再度押そうとしている。うん、要件はなんだろう、一個足りなくて困っていた、組み立て方も暗中でどうしようか、探してそれも面倒くさくなった最後の部品を掌に乗せている。
「ちゃっかちゃんは数を数えられる?一から十まで言える?」
「言えるよ。一から十までは説明できないけど知らないけれど、君の持ってきたそれが十七個目なんだ」
鼻をすすると、気にもしなかった木片のアルファベットの横にペンキで溝を埋められた数字が指差された。
(3E・・・)
晴れ渡った風景には逆さまに靄の見えないもので、少なくとも改ざんすべくこれまでのパラダイム、仮説1を裏付ける仮説2は俄わか定か、航空機の座席のキャンセルの電話に丁度キャンセル待ちをしていた人物が喜んだそうだ。ふむ、いつもしてやったりの仕返しが彼女の夢の中で痛烈に僕の後頭部にしたたか打ち付けられた。
仮説2
彼女の自作の椅子は日用の家具ではなかった可能性が認められる。字を読めない幼児でさえ紐解ける直接下の構成素の分析なら僕宛ではなく好奇心旺盛な読者宛の相も帯びてくる。
仮説とは呼べない多目的な思考に縋る反物証的証拠品のチューイングガムは、咀嚼するに順規的に味気を無くしていくので、口先からの膨らまなさに着眼をそのコーパスへと移項する。パズルとルーペと午後定四時を以って其れら提案条項以外に(目的)を、目的性へと探索する。
設問は既知に由来してラビラント経過を朔上すること依り、最低限かつ必要(宙核)を諮問する。つまり答えから問題を逆算して過程を答案とする。これではもう仮説ではない宙吊りの仮説性の強要である。
工程には彼女の期待過分の将来への展望が見えたし、メソポタミア文明の星座群命名に己のノスタルジアを溶かして誤魔化そうとする、重なり合う数時間の夫婦生活が更に懐かしくも覚えた。そこに事実かならず存在したものか不安ないし真っ先に僕の方が疑惑を持つだろう。
「ママが呼んでるから。かえるね。ピアノならう、行くの、むつかし。ポコ・ア・ポコからはじめればだいじょうぶ少しずつ、模様でいいからよく見なさいって、ね、ママが呼んでるの、あんたんてん、あんたんてん、おかちいね、おかちいフフっ、バイバイ」
bye,bye。
物事の順番に従えば彼女の音資に見合う両親の教育土壌の構築と、子どもながらのつるバラの簡略化された夢、音楽教師の妥当給金と発表会の親耳、蛙の子は蛙に化ける両生類的ダーウィニスム、誰れそ彼れ狭間を行き来する幼年のシャーマニー体験に里親心のホメオパシーを持参する。
彼女は何にでも成れるし何処へでも行ける。使うことのなかった航空券でも栞に挟めば良かったが、気のない返事と気の利かない親切が意の得だったので、水族館の水槽隔てたイルカセラピーに入場料を払うでも関の山であった。「アイス買ってくるー」天才少女(ヴンダーキント)は一目散に飛び出していったので、木片の積んで在るベランダに今日は雨に濡れないようだった。
すると例の少女が「ちゃっかちゃん」引っ倒した傘立てに乗っかって背伸びして玄関ベルを再度押そうとしている。うん、要件はなんだろう、一個足りなくて困っていた、組み立て方も暗中でどうしようか、探してそれも面倒くさくなった最後の部品を掌に乗せている。
「ちゃっかちゃんは数を数えられる?一から十まで言える?」
「言えるよ。一から十までは説明できないけど知らないけれど、君の持ってきたそれが十七個目なんだ」
鼻をすすると、気にもしなかった木片のアルファベットの横にペンキで溝を埋められた数字が指差された。
(3E・・・)
晴れ渡った風景には逆さまに靄の見えないもので、少なくとも改ざんすべくこれまでのパラダイム、仮説1を裏付ける仮説2は俄わか定か、航空機の座席のキャンセルの電話に丁度キャンセル待ちをしていた人物が喜んだそうだ。ふむ、いつもしてやったりの仕返しが彼女の夢の中で痛烈に僕の後頭部にしたたか打ち付けられた。
仮説2
彼女の自作の椅子は日用の家具ではなかった可能性が認められる。字を読めない幼児でさえ紐解ける直接下の構成素の分析なら僕宛ではなく好奇心旺盛な読者宛の相も帯びてくる。
仮説とは呼べない多目的な思考に縋る反物証的証拠品のチューイングガムは、咀嚼するに順規的に味気を無くしていくので、口先からの膨らまなさに着眼をそのコーパスへと移項する。パズルとルーペと午後定四時を以って其れら提案条項以外に(目的)を、目的性へと探索する。
設問は既知に由来してラビラント経過を朔上すること依り、最低限かつ必要(宙核)を諮問する。つまり答えから問題を逆算して過程を答案とする。これではもう仮説ではない宙吊りの仮説性の強要である。
工程には彼女の期待過分の将来への展望が見えたし、メソポタミア文明の星座群命名に己のノスタルジアを溶かして誤魔化そうとする、重なり合う数時間の夫婦生活が更に懐かしくも覚えた。そこに事実かならず存在したものか不安ないし真っ先に僕の方が疑惑を持つだろう。
「ママが呼んでるから。かえるね。ピアノならう、行くの、むつかし。ポコ・ア・ポコからはじめればだいじょうぶ少しずつ、模様でいいからよく見なさいって、ね、ママが呼んでるの、あんたんてん、あんたんてん、おかちいね、おかちいフフっ、バイバイ」
bye,bye。
物事の順番に従えば彼女の音資に見合う両親の教育土壌の構築と、子どもながらのつるバラの簡略化された夢、音楽教師の妥当給金と発表会の親耳、蛙の子は蛙に化ける両生類的ダーウィニスム、誰れそ彼れ狭間を行き来する幼年のシャーマニー体験に里親心のホメオパシーを持参する。
彼女は何にでも成れるし何処へでも行ける。使うことのなかった航空券でも栞に挟めば良かったが、気のない返事と気の利かない親切が意の得だったので、水族館の水槽隔てたイルカセラピーに入場料を払うでも関の山であった。「アイス買ってくるー」天才少女(ヴンダーキント)は一目散に飛び出していったので、木片の積んで在るベランダに今日は雨に濡れないようだった。