第8話

文字数 762文字

 月日は流れ、季節は秋。
太一とは振り出しに戻った。
 実は明日は文化祭。
教室で明日の準備をしていた。
すると
「杏ちゃん!」
名前を呼ばれた。
「……楓ちゃん?」
「ちょっと来て!」
「え!?」
 楓ちゃんに引っ張られて連れて行かれたのは明日、軽音楽部がライブする為に設立した簡易ステージがある場所だった。
ステージ上を見ると何故か太一が立っていた。
すると太一はマイクを握った。
『杏』
「私?」
『中二の時はごめん』
「え?」
 今更掘り返さないでほしかった。
『約束はまだ思い出せないけど……』
「なんでそんな事わざわざ言うの!?」
 怒りがふつふつと湧いてきた。
『許してくれなくていい、でも聞いてくれ』
「何を……」
『好きだ』
「……え?」
 今、好きって言った?
「……でも楓ちゃんの告白OKしたんでしょ?」
『断ったよ』
「でも、顔、真っ赤にして泣いてたって……」
『あの時、お前への恋心に気付いたから』
「じ、じゃあ……」
『好きだ、兄妹じゃなくて恋人になってくれ』
 私は急いでステージに登った。そして
「杏?」
「…………」
「あん……!?」
 思いっ切り太一に頭突きをした。
「あんず?」
「…………ゥ」
「え?」
「バカヤロー!」
 私は太一に馬乗りになり太一の腹を叩きまくった。
「バカバカバカ! 紛らわしいんだよ!」
「ごめん」
「もっと早く言ってくれたら!」
「ごめん」
「ごめんしか言えないのか!」
「ブヒブヒ」
「そうじゃない!」
 泣きまくった。悲しかったんじゃない。嬉しかったのだ。
嬉し涙なんて何年ぶりだろう。
暫くして落ち着いてきた頃
「杏」
「スビッ……なに」
「それで、返事は」
「何年想ってたと思ってるんだ!」
「……じゃあ」
「こちらこそよろしく、おねがいします」

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