山小屋へと急ぐカレンたち。前方で突然爆発音がとどろき、カレンを乗せたSUVが跳ね上がる。
(2号車のドライバーから)1号車、やられました! 地雷です。
次の瞬間、カレンたちの真後ろで爆発音が響き、また、車両が跳ねる。マスムラが後ろを振り向く。6号車が側面から道路から飛び出し、樹々の間にめり込んでいた。
ロケット弾だ! 右手、川向うの林からきた。また来るぞ!
先頭と後尾をつぶされた。動きが取れない。クルマを降りて闘う。
放電型人間兵器2018シリーズ4名は、車から降りて、視認した人間に無差別放電。特殊部隊員は、4名を援護。
20181サイードです。20184スナイダー軍曹は6号車で被弾。連絡が取れません。残り3名の
2018シリーズは車両から降り、無差別に放電攻撃します。
(2号車に乘っている特殊部隊長から)車両を降りて、2018シリーズを援護します。
カレンは足元から自動小銃を取り上げ、姿勢を低くして助手席から飛び出す。ドライバー、チャン技術軍曹、マスムラも、それぞれ自動小銃を手に車を離れる。
敵は、川の向こう岸だ。視界に入った人間に、放電しまくれ!
2号車、3号車、4号車が、立て続けにロケット弾を食らって吹き飛ぶ。
スナイダー軍曹を除く3名の2018シリーズは無傷で、対岸の林に向けて放電を続ける。
敵はロケットランチャーを複数所有。発見して撃破せよ。
コンチキショー、クソッタレ、こんな所で死んでたまるか!
チャン技術軍曹が、対岸に向かって自動小銃を乱射する。
チャン軍曹、落ち着け。弾をばらまいてはダメだ。よく狙って撃て。
突然、カレンたちの背後からタカタカと軽快な発射音がした。チャン技術軍曹が後方から突き飛ばされたように倒れる。うつむけになった身体の下からどす黒い血が流れだす。
対岸に向けて射撃していた慧子は、後方の林を振り向く。後ろの林から黒ずくめの衣装に目出し帽姿の男がAK47を手に飛び出してくる。慧子が自動小銃を向けるより早く、男が横に弾き飛ばされた。慧子のすぐ後ろからサイード大尉が電光を浴びせたのだ。
と言いながら、サイード大尉が、また一人左手の林から飛び出してきた襲撃者に放電して吹き飛ばす。
右手、川の対岸の林からはロケット弾が飛んできて、特殊部隊員3名を吹き飛ばす。
(サレハ少尉)サイード大尉、左手の林から、どんどん出てきます。クルマを盾にしましょう。
ダメだ。クルマに戻ったら、ロケット弾の格好の餌食だ。
全員、左手の林に突入し、接近戦を行う。川向こうの敵は仲間を誤射するのを恐れてロケット弾を撃てなくなる。
カレンの指示で、追跡部隊は銃を撃ちまくりながら林に突入する。
カレンが林の下草につっぷす。背中の上をマスムラが放った銃弾が飛び過ぎ、前方で悲鳴が上がる。
伏せているカレンの目に、前方で林の奥に向けて放電しているアブドゥラ軍曹がの姿が映る。軍曹の右手から黒装束の男が近づく。
カレンは、アブドゥラ軍曹の右手に飛び出してきた敵の腹に銃弾を浴びせる。敵は、後ろに飛んで木の幹にぶつかるが、銃はまだ保持している。
軍曹が木の幹にもたれている敵に放電しようと身体を向ける。その時、腹に響くライフルの銃声が響く。軍曹の頭から花火が上がる。慧子には、そう見えた。
軍曹の身体がぐらっと揺れて倒れる。頭部に大口径の銃弾を浴びて血液と脳漿が飛び散るのが、慧子には花火に見えたのだ。
スナイパー、スナイパー、木の上だ! 木の上を見ろ。敵のスナイパーを見つけて始末するんだ!
(狙撃手)木が密集していて、敵スナイパーの姿が……
言いかけた狙撃手が頭を吹き飛ばされて倒れる。腹に響く銃声が続き、カレンの視界の中でサレハ少尉の後頭部に花火が上がる。
背伸びして樹上に視線を走らせるサイード大尉の頭を銃弾が貫いた。
(特殊部隊員)隊長、上からはスナイパー、下からは、次々敵が出てきます。どうしますか?
隊員の悲痛な叫びに、隊長から応答はない。林の中は、敵味方入り乱れての乱戦となっている。
私が囮になる。スナイパーの位置を突き止めて撃ち殺して!
カレンは立ち上がり、林の奥に向かって駆け出す。突然、右肩に鋭い痛みを感じた。
どうせ、弾がかすっただけだ。 今は、かすり傷にこだわっているときじゃない。
ところが、森の中をジグザグに走っていると、視界がぼやけ、脚がもつれてきた。
右肩に手を触れると、金属製の棒のようなものが突き立っている。
急に目の前が暗くなり、カレンは意識を失い下草の上に倒れた。