第20話研究の方向性が決まった

文字数 1,280文字

その後、7人で会議を進めて行き、今後の研究実験での目指す方向性について議論を深めていったのである。
その結果、次のような内容となった。
①今回の成分分析では余りにも多くの成分が検出されたので、今までに研究の対象となっていなかった3種類の新型化合物を優先的に実験研究して行く。
②目標としては命に関わるような難病に対しての完治薬を作り出す。
③その中でも特に患者数の多い進行癌や末期癌に対して、3種類の新型化合物を用いて早急に研究を進めて行き、動物実験に於いて、その効果及び安全性を確認する。
④その後、直ちに臨床試験を行い、そして一刻も早く製品化出来るようにと努力をして、困っている患者さんたちの命を救うことを目指す。

以上の内容で基本方針がまとまった。
次にその3種類の新型化合物をどのようにして実験研究して行くのかの、具体的な意見を出し合うこととなった。
そしてその中で出てきた案が次のような内容であった。
①ガン幹細胞を植え付けた3匹のマウスの静脈に3種類の新型化合物を各々に注入して、その効果を検証する。
②3種類の新型化合物を全て混ぜ合わせ、同様にマウスに注入して、その効果を検証してみる。
③現在一般的に幅広く使用されている抗癌剤に、新型化合物を混入させ、その相乗効果を検証する。
④免疫チェックポイント阻害薬であるオプジーボに新型化合物を混入させ、その相乗効果を検証してみる。
⑤西洋医学とは違う観点からみて、不思議なマリモが八ヶ岳の山中から発見されたことを考慮し、自然由来である冬虫夏草や朝鮮人参などの生薬と合成して、その薬効を確かめてみる。

以上の案が出てきた。
しかしその後、雨宮リーダーから1つの問題点が提起されたのであった。
それとは、今回抽出された3種類の新型化合物それぞれが、微量であるが故に実験するにしても回数に限度が有るとの事であった。
もしその限られた実験の中で成果を出すことが出来なかった場合には、もう1つ保管庫の中へと残っている不思議なマリモも解体しなくてはならなくなってしまうのだと言う。
そしてまた、その後の実験研究でもまだ結果を残すことが出来なかった場合には、世界中の化学者たちが技術の進歩により、この先5年くらいの間には同じ化合物を人工的に作り出すことが出来るのだと言っている言葉を信じて待つのか、若しくは八ヶ岳の山中に1つだけ残してきた不思議なマリモを改めて取りに行くことになってくる。
そのどちらかの選択肢しか残らなくなってしまうのだと言う。
その話を聞いていた俺は、また八ヶ岳に取りに行くのだけは避けたいと思った。
それと言うのも、いつかは鳳凰が、またあの巣へと戻って来るのだと俺は信じているからだ。
次回の火山の噴火と共に、またあの巣へと戻って来たとき、自身が以前に住んでいた頃の匂いや痕跡が残っていなかったとすると、鳳凰がどれほど嘆き哀しむのであろうかと思ったからである。
そう考えると俺は辛くなり、もうこれ以上は不思議なマリモを八ヶ岳から持ち帰らないで済むことを願うのであった。
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