第1話

文字数 1,094文字

スコットランドはいつも雨。
ここエジンバラの空は今日もどんよりしている。
クリスティーンは家政婦のおばさんが運転する車の窓を見ながら
ため息をつく。
この「ため息」は、退屈な日常から出てきたものだ。
彼女がなぜ退屈な日常を送っているかというば、
友達が少ないからだ。
「どうして私は友達が少ないのだろう」

クリスティーンはこの下校のあとは特に
友達と遊ぶ予定もなく、
静かに家で過ごさざるを得ない。

また本を読むか、ネットサーフィンをするかだ。

そうこう心の中で文句を言う間に車は家まで着いてしまった。

ドアを開けて、玄関をみると誰かがいるのにクリスティーンは気づいた。
「誰かしら、同じくらいの歳の子?」
玄関には赤ずきんちゃんのようなクリスティーンより少し背の高い女の子が
立っている。
その赤毛の女の子は、クリスティーンを見つけると
目を輝かせてやってきた。
「あなたがクリスティーン?」
「そ、そうですけど...どうかしましたか?」
ちょっとクリスティーンはその女の子の勢いにたじろぐ。

「私はメアリー!メアリー・マクレガーよ!あなたの噂を友達のアンナに聞いて
ここにきたの!何でも解決してくれる探偵さんって聞いてるわ!」

クリスティーンは、同級生の陽気なアンナによって
最近探偵ごっこを無償ですることが増えていて、
今日もそのプロボノ案件というやつだ。
「あいつ、またか…」
と思いつつ、クリスティーンは同時にまんざらでもない心境である。

「わ、私で良ければ、お手伝いはしますよ」
それを聞くとメアリーは
「本当に!いやあ、助かったよ!」
と両手をあげて喜ぶ。

「やれやれ仕方ない」と内面では素直ではないクリスティーンは
依頼を引き受けることにした。

「それで何かお困りごとでもあるの?」

メアリーは大きくうなずいた。
「私のお姉ちゃんなんだけど…もうだいぶ昔にお嫁さんに行ってしまったんだけど、
元気にしてるかなと思って…」
クリスティーンは首を傾げた。
「何か逢いにいけないわけでも?」
またメアリーはうなずいた。
「どうも離婚したみたいで…それから音信不通なの。嫁いだ先の住所ってとこにも行ったけど、そこには家すら立ってなくて…」
「離婚したのと、メアリーさんが逢いに行ったのはいつの話ですか?」
「私がお姉ちゃんの離婚を聞いたのは先月で、逢いにいったのはつい先週よ」
「なるほど…お姉さんにお子さんは?」
「たしか女の子が一人いたはず…」
「お姉さんはあなたと何歳離れている?」
「12歳かな」
「あらお若い」
「いいう、私の家族はだいたいそのくらいでみんな結婚してるわ」
「…」
昨今晩婚化が進むイタリア人の悪い常識で口にしてしまったと思い、
クリスティーンは顔を赤らめた。
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