第3話  樹と由瑞Ⅲ

文字数 491文字

暫くそうやっていたが、樹は
「もう、大丈夫です。もう平気」
そう言って顔を出した。

その顔が余りにもすごかったので、由瑞は驚いた。
「・・目が腫れまくり・・鼻も真っ赤。・・それ前が見えるの?」
樹は答える。
「何とか」

席に戻った樹は恥ずかしそうに笑った。
「・・もう馬鹿みたいで・・・・済みません。折角一緒に来てくれたのに。不愉快な思いをさせて済みませんでした。子供みたいに。でも今度こそ大丈夫。御免なさいね」
「すごい鼻詰まりの声」
由瑞は思わず噴き出した
「もう!笑いたければ笑いなさいよ!」
怒っても鼻詰まりだから迫力がない。
樹も笑う。


 由瑞は笑いながら樹を見る。
「ごめん。ごめん。いや、ちょっと俺も腹を立てていたんだけれど・・・君のその声、聞いたら思わず笑った。・・さて、もう十分泣いたよね。まだ足らない?」
「もう、流石に・・」
樹は笑う。
「じゃあ、ここでこうしていて」
そう言うと、手を伸ばして樹の肩を自分の肩に引き寄せた。
「スマホをしても良いし、何もしなくてもいい。眠ってもいい。でもこうやって俺に寄り添っていて欲しい」
由瑞はそう言って樹を見た。
樹は頷いた。
そして由瑞に凭れると静かに目を閉じた。
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